僕の問いかけに、ミューリエは答えなかった。
目を逸らさず、
固唾を呑んでじっと返事を待ってみても、
それは変わらなかった。
お互いに沈黙したまま、
その場には重苦しい空気が漂う。
それからしばらくして、
ミューリエが小さくを息をついてから
おもむろに口を開く。
ミューリエ、どうしてさっ?
僕の問いかけに、ミューリエは答えなかった。
目を逸らさず、
固唾を呑んでじっと返事を待ってみても、
それは変わらなかった。
お互いに沈黙したまま、
その場には重苦しい空気が漂う。
それからしばらくして、
ミューリエが小さくを息をついてから
おもむろに口を開く。
残念だ。
少しはアレスの力と心に
期待していたのだがな……。
僕の力と心?
おっと、口が滑ったか……。
今の言葉は忘れろ。
ミューリエはクスッと照れくさそうに笑った。
そのあと、
彼女の表情は凛としていてちょっぴりクールな、
僕のよく知っているものへと戻る。
せめてもの情けだ。
日没までは剣の稽古をつけてやる。
死ぬ気でかかってこい。
それで少しでも何かを吸収しろ。
さぁ、
時間はあとわずかしかないぞ?
今のミューリエは、
なんだか吹っ切れているかのような気配が
伝わってくる。
一方でどことなく強がっているような、
それでいて少しだけ寂しそうな感じが
しないでもない。
それに対する僕の返事は、
もちろん決まっている。
一緒に旅を続けてくれないのは
残念だけど、
ミューリエ自身が決めたのなら
仕方がないね……。
…………
――って、
ちょっと前までの僕なら
言っていただろうね。
っ?
だけど、今の僕は違う。
そう簡単に
引き下がるわけにはいかない。
何っ?
お願いだ、ミューリエ!
僕にはまだ、
キミの力がどうしても必要なんだ!
一緒に旅を続けてほしい!
っ!
なんと言われても、
ダメなものはダメだっ!
僕だって『はいそうですか』って、
素直に引き下がってたまるかっ!
……殺すぞっ?
殺されても僕は死なないっ!
絶対、一緒に旅をするんだ!
何、訳の分からないことを……。
何が何でも僕は退かない!
退けないっ!
…………。
やれやれ……。
ふふ、その強情さ、
アイツにそっくりだ。
ミューリエは僕の顔を真っ直ぐ見つめていた。
その瞳は優しく揺らめいていて、
何かを懐かしんでいるかのようにも感じられる。
アイツ?
古い友だ……。
ならば今一度、チャンスをやろう。
明日までにお前の力だけで、
タックというヤツのところまで
辿り着いてみせろ。
できぬのなら、今度こそ諦めろ。
そんな……。
ま、おそらくは無理だろう。
万に一つの奇跡でも
起こさない限りはな……。
ハッキリ言っておくが、
今のままのお前では
その可能性すらもゼロに等しい。
相変わらず、ミューリエは手厳しい。
キツイことでもハッキリと言う。
――でも、それでこそミューリエだ!
だが――
っ?
お前はその『奇跡』を
起こしてくれそうな気がするのだ。
やはりまだ心のどこかで、
アレスへの期待を
捨てきれんのだろうな。
ミューリエ……。
自分の中に秘められた可能性、
限られた時間の中で磨いてみせろ!
勇者、アレス!
うんっ!
僕は強い決意を胸に、
運命をかけた稽古へと挑む!
次回へ続く!