Ⅳ ヴァルプルギスの夜①
4月30日、ヴァルプルギスの夜――。
私は拳銃を懐に忍ばせ、私は家を出た。
護身用だが、何かの役に立つかもしれないという、一縷の希望を持っていたのだ。
色を失いつつある三日月が寂しげな光を投げかける深夜、私たちはあのうら寂しい墓場で落ち合うと、まっすぐにあの館へと足を向けた。
最終的な荒廃を告げる幕は、ここに切って落とされたのである。
一見して、館には何も変化がないようだった。
しかしながら、実際に部屋へ足を踏み入れてみると、二人の印象はがらりと変化した。
窓は割られ、壁や床には大きな獣の仕業としか思えない、壮絶な爪痕が残されていた。