Ⅱ 闇に潜むもの①

ウィルバーの様子がおかしいと最初に気付いたのは、三ヶ月ほど前のことだった。
周知の通り、私は新人の会計士として、ウィルバーがグループリーダーを務める事務所へ入った。
私はウィルバーが嫌いだった。
横柄な男だからだ。
顧客からの督促は、すべて私を含めた新人に押しつける。
感謝をされれば、逆に自分の手柄として管理部門へ報告する。
私だけでなく、グループの誰もが、ウィルバーを嫌っていた。
だが、私はウィルバーに気に入られてしまった。
もともと温厚で人当たりが良いといわれる性格だから、無理もないかもしれない。
私はウィルバーと一緒に昼食を取り、職場や町についての、とりとめもない噂話をする仲になった。

墓場の隣りにある無人の館を、探索してみないか?

ハンバーガーを頬張りながら、唐突にウィルバーは提案した。

どうしてそんなことを?あの館は廃墟となっていて、近づく者はいないというのに

ウィルバーが話を出したのは、町外れにある、苔で覆われた石造りの館のことであった。

夜中にあの館の前を通った人間が、館の中に光り輝く物体を見たのだと噂している。どうだ、気になるだろう?

深夜、誰もいない館で発光する物体ですか……ううん、あまり近づきたくはないですね

突然に降ってわいた話に、当然のことながら、私は乗り気ではない。

そういうな。まあ私の道楽だと思って、ついて来てくれないだろうか?

え?不法侵入のお誘いですか。困りましたね……

そういわず、頼むよ。今度の日曜の夜なんかどうだ。君は独り者なのだから、時間はたっぷりあるだろう?

ウィルバーは大きく笑いながら、私の肩を叩いた。
拒むのは許さないという圧力を、言葉の端々に感じて逆らえない。

こうして私たち二人はその週末の日曜日に、廃墟の館を探検することになった。

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