Ⅰ ある手記①

夢見るような陶酔感と鮮やかな覚醒が、私の精神を支配していた。
『引き金を、引け。引くのだ』
私の頭に棲みついた悪霊は、たしかにそう囁いたのだ。
そして当然ながら、その声に逆らう術など、私は持ち合わせていなかった――。

私とウィルバーの間に起こったことについて、世間で騒がれるようなことは何もない。

私がウィルバーを殺した?いいや、それはまったくもって勘違いも甚だしい。

だから私は、あの事件の顛末をここに書き記しておこうと思う。

――なぜそんなことを?

この手記を手にしたあなたは、疑問に感じるかもしれない。

もしそうであるならば、私がこれから記す文章を、最後まで読み進めてほしい。

私はここで、すべての真実を、白日の下へ晒すつもりだ。

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