彼女の目的は魔王を倒し、平和な世界を取り戻すこと。
 ……なのだが、困っている人を見過ごせないタイプらしく、

勇者

しらべる

勇者

しらべる

勇者

しらべる

 頑固にも『しらべる』コマンドを連打するのである。

 そういうわけで、長い旅になった。
 元々『力』が高かった俺は幾多の戦闘を経験したことで、一角の戦士に成長していた。
 今では名実共に勇者の仲間として、行く先々で歓迎される。

村人F

まあ……

 どんなに活躍しても、広まる名は『セーニョ村のF』なのだが。

 勇者との関係はどうなのかって?
 もちろんトラブルは多い。
 何しろ男と女の二人旅だ。

 水浴びしているところを、

勇者

……!?

村人F

やあ! 今日はいい天気だな!

 覗いてしまったり――

 宿の露天風呂で、

勇者

……! ……!

村人F

やあ! 今日はいい天気だな!

 ばったり出くわしてしまったり――

 後で顔を真っ赤にした勇者に、

勇者

しらべる

 睨まれても、俺は身振り手振りで謝ることしかできない。

村人F

ああ、どうして弁解の言葉を喋れないのだろう

 つい神様を恨んでしまう俺だった。

 しかし、彼女とて本気で怒っているわけではないらしい。

 朝になれば、

勇者

…………

 昨日の出来事などなかったかのように柔らかい微笑を向けてくれる。

 ……他人は俺を『勇者のお仲間さん』と呼ぶ。
 確かにいざ戦いとなれば、勇者は俺を頼ってくれる。
 ただの村人Fな俺にとっては光栄至極だ。

 それでも、時折気になってしまうのである。

村人F

彼女は俺のことをどう思っているのだろう

 旅は長い。
 当然、勇者を女の子として意識するし、悶々と悩んだりもする。

 今日も彼女は、俺を――

勇者

しらべる

 ……のだった。

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