地獄本部の建物へ辿り着いた
アリスとシャムは、
なぜか門番に中へと案内された。
落ち着いた雰囲気の和室へ通され、
そこで待つように指示される。
地獄本部の建物へ辿り着いた
アリスとシャムは、
なぜか門番に中へと案内された。
落ち着いた雰囲気の和室へ通され、
そこで待つように指示される。
どういうことなんだろうね?
さぁ?
ま、なるようにしか
ならないか……。
アリスは小さく息をつくと、
出されたお茶とお菓子を口に入れる。
静岡産の最上級煎茶と
埼玉銘菓のうますぎる饅頭である。
あっ、
このお茶とお菓子、美味しっ♪
気をつけて。
ワナかもしれない。
怪しげな薬が入っているかも……。
んぐっ!?
シャムの言葉を聞いて驚いたアリスは、
飲み込もうとしていたものが
気道へと入りそうになってしまった。
げほっ、げほっ!
喉の奥に……絡みついて……
気持ち悪っ……。
アリスは激しくむせ、
口元からよだれを垂らした。
目元には涙の粒も浮かんでいる。
さらにちょっと息苦しそうにしている仕草や
頬が赤らんでいるところなど、
その場面だけ見たら、結構エロっぽい。
むっつりスケベ!
でも想像力が豊なのは、いいこと。
その時、ドアをノックする音が部屋に響いた。
決してキツネが隠れていたわけではないし、
2人のどちらかが咳をしたわけでもない。
もちろん、
畳の下から水が湧いているわけでもない。
分かってるって……、
返事がなかったからなのか、
再びノックの音がする。
入ってまーす!
いやいやいや、
そうじゃないでしょ……
トイレじゃないんだから……。
どうぞー!
――アリスが返事をした直後、ドアが開く。
――っ!?
なっ、なんなのよ、
あんたはーっ?
彼はどうやら部屋を間違えたらしく、
謝りながらドアを閉めて去っていった。
ま、誰にでも間違いとか勘違いって
あるよね……。
あの人、足がないのに
どうやって歩いてきたのかな?
舞空術?
どーでもいいよ、そんなこと……。
アリス、ツッコミ疲れ?
スッポンまむしドリンク飲む?
亜鉛やマカ、ニンニクも配合だよ!
……シャムが飲めば?
アリス、ノリ悪い……。
またノックだ……。
元・大阪府知事じゃないよ?
若い世代は知らないって……。
ネタが分からない人は『ノック 府知事』で
ググってみてね♪
どうぞー
――シャムが返事をすると、
静かにドアが開く。
…………。
プリン男の姿を見たアリスは、
ニコニコしながら無言で立ち上がり――
――ドアを力任せに思いっきり強く閉めた。
誰かがいるとぶつかって危険だし、
指を挟んだら大変なので、
良い子のみんなはマネしないでね?
ドアは静かに閉めましょう!
二度と来んなっ、バカっ!!
アリスは声を尖らせ、怒りをあらわにした。
どうやら情緒不安定のようだ。
もしかしたら女の子特有のあの日が――
アンタもマジ、黙れっ!
アリス、怖い……。
またノック……。
シャムが出て!
今までのパターンだと、
3回目の今度は
本命のはずだから!
御意っ!
シャムはドアの前まで歩いていき、
静かにノブを回す。
そして廊下に立っていたのは――
ぜーはーぜーはー。
――ケルベロスだった。
もはや観音様に並ぶ、
準レギュラー的な存在だ。
でも悲しいかな、
それも地獄脱出作戦編が終わるまで。
所詮はモブキャラの1人に過ぎないのである。
うるせーよ!
放っておけよ!
何かご用?
よくも毎回毎回、
俺様を酷い目に
遭わせてくれたなっ?
今回こそ、決着を――
――と言いたいところだが、
あんたらが
『あの御方』の知り合いじゃ、
そうもいかねぇ。
ちっ、最初から言えよ。
そのことを知ってたら、
逆らわなかったのによ。
あの御方?
あぁ、そうだ。
俺はその御方の命令で、
伝言を伝えに来たのさ。
パシリってヤツだよ。
どういうことなの?
とにかく風呂に入って待て、
汗臭ぇんだよ――だそうだ。
んじゃ、俺は帰るぞ。
ちょっと――
アリスの静止を聞くこともなく、
ケルベロスはふて腐れながら去っていった。
どういうコトだろ?
まさかお風呂に入ったあと、
誰かに変な行為を
されるんじゃ……。
変な行為って何?
ご想像にお任せしまーす。
今回のアリス、
ホントにノリ悪い……。
シャムは怖くないの?
大丈夫。
だってこの作品は
良い子でも楽しめる、
健全な作品だから。
ったく!
うだうだ言ってねーで、
さっさと風呂に入れ!
あたしの出番が
どんどん遅れるんだよ!
ドアの向こうから怒気混じりの声が響いた。
そしてついに我慢できなくなったのか、
ドアを蹴破って声の主が部屋に入ってくる。
えっ!?
あ……。
顔を見た瞬間、
アリスとシャムは大きく息を呑んだ。
マジで臭ぇから、
風呂に入れってだけだよ!
何もしねーよ!!
なんと部屋に入ってきたのはキララだった。
久しぶりの登場である。
本来、このあとはお風呂のシーンとなり、
アリスとシャムの
キャッキャウフフなシーンを入れて
男性読者へのサービスをするはずだった。
そのため、キララの登場は
もう少しあとの予定だったのだが、
とうとう彼女は我慢の限界を超えて
出てきてしまったようだ。
――もうっ、キララったら、
せっかちなんだからぁ♪
黙ってろ、作者!
殺すぞ?
あ……あぁ……。
キララーっ!
アリスはキララのところへ駆け寄り、
思いっきり抱きしめた。
瞳には涙を浮かべながら、大喜びしている。
よほど嬉しいのか、離そうとする気配はない。
お、おい、アリス……。
抱きつくなよ。
汗臭ぇよ……。
キララのツンデレ。
本当は嬉しいくせに!
シャム!
ふざけたことを言――
わーいっ!
シャムはキララの言葉を遮り、
アリスの後ろから抱きついた。
そして一緒になって再会を喜び合う。
友情ってえぇものやね……。
お前ら……ったく、もう。
揃って汗臭ぇよ。
だって嬉しかったんだもんっ!
ツッコミがわたししかいないから、
つらくってさぁっ!
1人じゃ
もう限界だったんだよぉ!!
キララのツッコミを見た時、
どれだけ嬉しかったことか……。
…………。
痛っ!
キララのチョップを頭頂に食らい、
涙目になるアリス。
でもすぐに再び満面の笑みを浮かべる。
やっぱり、
こうしてツッコんでもらえると、
嬉しいなっ!
それにしても、
どうしてキララがここへ?
あー、
お前らを迎えに来たんだよ。
そろそろ許してやろうかなーって
思ってさ。
ったく、
勝手にこんなところにまで
来やがって。
さては観音の入れ知恵だな?
迎えにって、どういうこと?
お前ら、
地獄姫に会って
現世へ帰してもらおうと
考えてたんだろ?
そうだけど。
地獄姫ってのはな、
あたしのことだ。
えぇええええぇーっ!?
別に話す必要もないから、
隠してたけどな。
あたしは現世の様子を閻魔様に
報告する仕事をしてるんだ。
観音様と似たような立場?
ちょっと違うけど、
イメージとしちゃそんなもんか。
…………。
過去の話を振り返ってみると、
色々と思い当たる伏線はあるよね?
年齢不詳という設定とか、
地獄に招待するとか。
――そう、
キララこそが地獄本部の幹部をしている
地獄姫だったのである。
よっしゃ、現世へ帰るか!
――おーい、下っ端悪魔!
火の車を用意しろ!
へーい、ただいまー!
こうして3人は小悪魔の用意した火の車に乗り、
現世へと帰り着いたのだった。
ただし、普通の人間であるアリスとシャムは、
世界の境界を越える際、
地獄で見聞きした全ての出来事を
忘れてしまった。
彼女たちの記憶を奪ったのは、
ほかならぬキララ。
人間に世界間を行き来させる際の
絶対条件だからである。
3人はいつの間にか
学校のゴミ捨て場に佇んでいた。
アリスとシャムはキョトンとしている。
――あれ?
なんでわたし、
こんなところにいるんだろ?
それに何をしてたんだっけ?
2人を見て、
キララはわずかに口元をゆるめた。
ただ、その瞳はいつになく優しく穏やかだ。
さぁな?
そんなことより、お前ら臭ぇよ。
だって、ここゴミ捨て場。
きっと臭いが移った。仕方ない。
キララだって、
ちょっとだけ汗臭いよ?
バカっ!
それはお前らが強く抱きつい――
キララはそこまで言ったところで
言葉を呑んだ。
そしてふと頭の中には
再会した時に喜んでいたアリスとシャムの
姿が浮かんでくる。
やれやれ……。
キララは微苦笑をして、
ふうっと大きく息をつきつつ
小さく肩を落とした。
――ま、いっか。
んじゃ、
3人で銭湯にでも行くか?
いいねぇ、それっ!
御意っ!
3人はゴミ捨て場を出ると、
近所の銭湯へ向かった。
横並びで歩くそのお互いの距離は、
どことなくいつもより
縮まっているようにも見えた。
おしまいっ!
次回は3人の銭湯でのお話。
男性読者向けサービス回というヤツだ!
深夜アニメでも2~4話くらいに
女の子キャラが
温泉に入ったりプールへ行ったりする回が
よくあるでしょ?
場合によっては本編終了後に、
オマケ回で入るパターンもあるけど。
それと同じだっ!
――ただし、
ストリエ シュールコメディー劇場は
良い子でも楽しめる健全な作品なので、
過度な期待はしないでネ?