見事にケルベロスを手玉に取った
アリスとシャム。
その後も紆余曲折があったものの、
地獄姫がいるという地獄本部の前まで
無事に辿り着いたのだった。
地獄本部の外見は日本の城とそっくり。
手前には深い堀があり、
門に向かって木製の橋が1つだけ
架けられている。
アリスとシャムは堀の手前から、
その建物を眺めた。
見事にケルベロスを手玉に取った
アリスとシャム。
その後も紆余曲折があったものの、
地獄姫がいるという地獄本部の前まで
無事に辿り着いたのだった。
地獄本部の外見は日本の城とそっくり。
手前には深い堀があり、
門に向かって木製の橋が1つだけ
架けられている。
アリスとシャムは堀の手前から、
その建物を眺めた。
ここが地獄本部かぁ!
やっと着いた!
地図によると、
ここに第2の試練が
あるはずなんだけど……。
あ……また立て札……。
シャムは前方を指差した。
確かに橋の横には木製の立て札がある。
どうせまた
モデルルームの案内でしょ……。
でも、もし重要なことが
書いてあったら大変。
後悔先に立たず。
先に立っているのは
立て札だけど。
ダジャレは余計だって……。
まぁ、読んでおいて損はないか。
アリスは立て札の前まで進み、
書いてある内容を読む。
えっと……なになに……。
←【順路】
本日新装オープン!
パチンコ・スロット『ギャンブル地獄』本店
高交換率・高還元!
新台大量導入!!!
地獄街道沿い、300km先!
大型駐車場完備
(馬車、牛車、火車・火の車もOK)
やっぱり試練と関係ないことが
書いてあった……。
寄っていく?
行かないってばっ!
その時、アリスたちの後ろに
1人の男がやってくる。
うわぁ、楽しそう!
遊んでいこうっと!!
そこに現れたのは、
以前、電車の中で起きた
痴漢騒動の時に証言をした
ギャンブル依存症でヘタレなDV男だった。
――詳しくは過去のお話を読んでねっ♪
この人、見覚えがある。
そうなんだ……。
その節はお世話になりました。
やぁ、あの時はどうも。
どうしてあなたがここへ?
実はあのあと、
帰宅したらDVをしていた彼女に
刺されちゃってね……。
我慢の限度を超えたらしいんだ。
それでこうして見事に
地獄送りになったというわけさ。
無理心中だから、
彼女もこっちに来てるんだ。
紹介するよ!
――おーい、あっちゃーん!
DV男が叫びが辺りにこだました。
すると――
なっ、なんなのっ!?
轟音とともに地面全体が揺れた。
それはその後も規則正しく繰り返され、
やがて山のように巨大な『それ』は姿を現す。
は~ひふ~へほ~!
耳をつんざくような、王者の雄叫び!
身長3776メートル、体重●トンを誇る
巨人族のあっちゃんが進撃してきたのだった。
彼女のあっちゃんですっ♪
ギリギリッ!!!
色々な意味でギリギリっ!
お似合いのカップル。
うらやましい……。
あら?
この子、分かってるじゃな~い♪
正直な子は好きよー。
それよりもダーリン、
早くその立て札に書かれている店に
行きましょうよ。
分かった。
また閉店まで打ちまくろう!
そういうわけだから、
キミたち、またねっ!
あっちゃんは自分の肩にDV男を乗せると、
再び轟音を響かせて去っていった。
幸せそうだった。
地獄にも希望はあるってことかも。
もうどうでもよくなってきた……。
あっ!
アリス、立て札がもう1つあるよ?
パチンコ店の立て札に重なるようにして、
もうひとつの立て札が立っているのを
シャムは発見した。
今度こそ、
マトモなんでしょうね?
アリスはパチンコ店の立て札をずらし、
隠されていた立て札を読む。
えっとぉ……。
この先、地獄本部。
ただし、このはし渡るべからず!
超危険っ!!!
っ!?
注意書きだね。
渡っちゃいけないんだって。
気付いて良かった。
でも、堀を越えるには
この橋を渡るしかなさそう……。
確かに見回してみても、
地獄本部へと繋がる橋は、ほかにない。
堀の深さは数十メートル、
向こう側までの距離も十メートル以上はある。
普通の人間に越えられるような感じではない。
だが、アリスはすぐにピンときたようで、
得意げな顔をしている。
ははーん。
わたし、
このトンチ話を知ってるよ。
有名だもんねっ!
大丈夫!
橋を渡りましょ!!
っ? どういうこと?
要するに、
橋の真ん中を歩けばいいのよ!
『橋』じゃなくて『端』を
渡るべからずって解釈するの!
そっかぁーっ!
……じゃ、念のため、
アリスが先に渡って。
えっ?
もしその解釈が間違っていたら
嫌だから。
本当に橋が危険なのかも
しれないし。
言い出しっぺのアリスが
先に渡るのは当然。
シャムはニコニコしながらアリスを見つめた。
そうやって無言のプレッシャーを与える。
もはや後に退けなくなったアリスは、
頬を膨らませながら叫ぶ。
わ、分かったわよっ!
で、でもぉ……
なるべくなら
遠慮したいかもぉ……。
あははははっ!
威勢が良かったのは最初だけ。
最後は笑って誤魔化そうとする体たらく。
――アリスは意気地なしだった!
うっさい!
リスク回避を望んで何が悪いっ!!
アリスは逆ギレした。
良い子のみんなは
こういう大人にならないよう、
気をつけようねっ!
良い子のみんな、
悪意のある地の文を書く大人にも
ならないようにしてねっ♪
…………。
それにしても困ったね……。
試しに渡ってくれそうな人、
誰かいないかな?
そんなに都合良くは――
とうとう見つけたぞぉ!
貴様らぁ~!!
不意に2人の後ろから、
怨念と敵意の混じったような声が上がった。
激しく息も切らしている。
あ……。
わぁ!
振り返った2人の前に立っていたのは――
よくも散々、
コケにしてくれたなぁあああぁっ!
――ケルベロスだった。
すごーい!
投げた石を持ってきてる~!
ケルベロスの口にはアリスの投げた小石が
きちんと咥えられていた。
意外に律儀な性格のようだ。
遠くに投げすぎだっ!
この小石を探すのに、
どれだけ苦労したと思うっ?
強肩女めっ!
あんたも狂犬だけどね……。
こらぁっ!
それ、今から
言おうと思っていたのに!
先に言うとは、ますます許せんっ!
っていうか、
怒るポイントがズレてない?
まず弄ばれたことに
怒らないと……。
まーいーや。
ちょうど良かった。
ケロちゃん、
提案があるんだけど……。
ケロちゃん言うんやないー!
某魔法少女作品の
キャラやないんやからっ!
決着をつける場所は、
地獄本部の敷地内にしようよ。
どうかな?
なんだとっ?
……ふむ、よかろうっ!
では、ケルベロス様。
お先にどうぞ。
アリスは片膝を付き、
深々と頭を下げながら手で橋を指し示した。
ほぉ?
殊勝な心がけだな。
だが、今さら許してはやらんぞ?
ケルベロスは
橋の中央をやや早足で歩いていった。
そのまま特に何も変化が起こらず、
中間地点まで到達する。
やっぱり真ん中を歩くので
正解だったのかな?
……待って。
何か変な音がする。
――その時だった。
突如、橋に大きなヒビが入り、
大きな音を立てて崩落した。
のわぁあああああぁっ!
ケルベロスは断末魔の叫びを上げながら、
奈落の底へと消えていった。
その様子は、
ヒゲの配管工・M氏によって
炎の海に落とされる亀の大王を彷彿とさせる。
うわぁっ!
ケルベロスのおかげで、
わたしたちはセーフ……。
あなたの犠牲は忘れないから。
あははははははっ!
シャムってさ、意外に――
っ?
まーいーや。
なんでもない。
それよりもさ、
この橋が使えないとなると、
どうやって地獄本部へ
行けばいいのかな?
簡単。あの人に頼めばいい。
あの人って誰?
まさか観音様っ?
違う。
観音様は会議で忙しい。
そういえば、そんな話をしてたね。
それじゃ、誰なの?
見れば分かる。
だから今から呼び出す。
シャムは地面に魔方陣を描き始めた。
中央には六芒星、
その周りを囲うように2つの円。
さらに数字や記号を描き加えていく。
その怪しげな雰囲気は、
本当に悪魔を召喚できても
おかしくなさそうだ。
魔方陣、完成っ!
↑ ※イメージ図です。
こらーっ!
何、このイメージ図!
ホットケーキでしょ、これっ!
うるさいなぁ、ネタになるからいいじゃん。
それにこのエピソードを
最初に投稿した当時(2015年6月)は、
魔方陣の挿絵がなかったんだよ。
今は質の高い魔方陣の挿絵があるけどさぁ。
もう分かったよ……
許したげる……。
じゃ、呼び出す呪文を唱えるね。
エロエロエッサッサ、
エロエロエッサッサ!
我はもとめ、訴えてやるぅ~♪
もうツッコむの疲れた……。
轟く地鳴りと
魔方陣に巻き上がる煙。
やがてそれが最高潮に達する!
呼んだぁ~?
魔方陣の真ん中にあっちゃんが現れた。
きゃあぁあああああぁーっ!
化け物ぉ~!!
失礼な子ね。あんた嫌い!
あっちゃん、
わたしたち地獄本部へ行きたいの。
向こう側まで運んでもらえる?
しょうがないわね。
あなたは好きだから、
頼みを聞いてあげる。
そっちの金髪の子は嫌いだけど、
体はデカイくせに心は小さいとか
思われたくないから、
ついでに運んであげる。
ありがとうございまーす……。
あっちゃんはシャムとアリスを
手のひらに載せ、
地獄本部のある側へ渡してくれた。
さすが身長3776メートル、
その程度のことは朝飯前のようだ。
そのあと、
彼女はDV男のいるパチンコ店へ向かって
走り去っていった。
これで第2の試練も突破!
いよいよ地獄本部か。
地獄姫ってどんな人なんだろうね?
地獄本部を目の前にして、
期待に胸を躍らせるアリスとシャム。
物語は佳境へと入ったが、
残念ながら今回はここまでだ。
はてさて、次こそ地獄姫は登場するのか?
またしても出番のなかったキララの我慢は
いつまで続くのか?
――こうご期待っ!!
To be continued!