地獄姫に会うため、
アリスとシャムは地獄本部へと旅立った。
観音様からもらった地図を頼りに、
地獄を進んでいく。
地獄姫に会うため、
アリスとシャムは地獄本部へと旅立った。
観音様からもらった地図を頼りに、
地獄を進んでいく。
今のところは問題なく進めてるね?
でも観音様は
試練があるって言ってた。
油断は禁物……。
だね。
シャム、気を引き締めて行こっ!
御意っ!
そんな感じで
2人が会話をしながら歩いていると、
前方に木製の立て札が見えてくる。
周りはほかに何もない更地。
ただ、地図にはこの付近に
『第1の試練』という記述があり、
いかにもそれだといった感じだろうか。
試練に関係することなのかな?
何が書いてあるんだろ?
アリスは立て札の前で立ち止まり、
文字を読もうとした。
すると――
ちょっと待って。
なぜかシャムはすばやくアリスの正面に立ち、
アリスのあごを指でつまんで見上げさせた。
今、壁ドンに変わって流行りつつある
『あごクイ』というヤツである。
じぃ~~。
シャムは頬を赤らめ、
アリスを真っ直ぐに見つめる。
シャム!?
ど、どうしたのよ、いきなりっ?
わたし、
シャムとはそういう関係じゃ……。
早く立て札を読んで。
そのための あごクイ なんだから
は……?
身長の低いアリスが
立て札を読むには、
見上げる必要があるでしょ?
首とかあごが疲れると思って、
支えてあげてるの。
あごクイ って、
そういう時に
してあげるんじゃないの?
あのねぇ……
それ全然違う……。
っていうか、
わたしより背が高いシャムが
目の前に立ったら、
それこそ立て札が見えないよっ!
あ……それは盲点……。
じゃ、肩車しよっか?
そこまで背は低くないったら!
普通に読めるから、そこをどいて!
御意っ!
やれやれ……。
えーっと、なになに――
←【順路】
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わぁっ! モデルルームだって!!
見ていこっかぁ?
って、なんでやねんっ!
思わせぶりに、
関係ない立て札を設置するな~!!
見に行くなら付き合うよ?
シャム~……。
それよりも立て札が関係ないなら、
気にせず進んじゃお。
ちょっと待てぇ~い!!!
どこからか野太い大声がした。
アリスとシャムは慌てて周囲を見回すものの、
声の主らしき存在は確認できない。
誰っ?
ここを通りたくば、
我を倒してから行けぃ!
こらぁっ!
あのねぇ、
わたしは誰なのか聞いてるのよっ!
まずはそれに答えなさいよっ!!
言葉の意味が理解できないのっ?
バカなのっ?
う……うぐ……。
声の主は戸惑ったような、
それでいて涙ぐんでいるかのような感じを
醸し出しつつ、
息を詰まらせた。
ただ、アリスの言葉に負けじと、
すぐに反応を返す。
わ、我は地獄の番犬
『ケルベロス』だぁ!
ケルベロスって
あの有名なっ!?
いきなり大物登場……。
がははははっ!
さっそくビビっておるな?
若い女の肉は美味じゃ!
食らってやるっ!!
次の瞬間、
轟音とともに空間全体が大きく触れた。
そして地面が盛り上がっていき、
それは姿を現したっ!
っ!?
なんじゃこりゃあぁーっ!!!
ケルベロスの正体?
……びっくりした?
単なるジョークというやつだ。
がははははははははっ!
最近は怖がらせるだけではなく、
ユーモアも必要だからなっ!!
お前、下がってよいぞ。
ケルベロスの命令を受けると、
ダイス男はどこかへ去っていった。
ふふふ、お遊びはここまでだ……。
今度こそ、
我の真の姿を刮目せよっ!
再び轟音。以下、描写は省略。
ほら、何度も同じようなことを書くのは
メンドく――
じゃなくて、エコってヤツですよ、エコ。
はいはい……
相変わらずの手抜きね……。
ぼく、たぬえもんでぇすっ!
あ、たぬえもんは
しゃべれないので、
代わりに我が
セリフを言ってやったのだ。
わぁ~、たぬえも~ん!
なんか道具出してぇ~!!
………………。
たぬえもんはトックリの中から
ドアを取り出し、
その中へ入って消えた。
ふふふふふ……。
では3度目の正直といこうか。
これが我の真の姿だっ!
恐怖せよっ!!!!!
描写は全て省略――
いいよね、アリスちゃん?
もう勝手にして。
わたし1人で
ツッコミきれない……。
1人で多数を相手に
ツッコミ続けるの、
疲れるもんね。
気持ちよさを通り越して、
頭がおかしくなりそうになる……。
だからあんたたちは~っ!
そういう誤解を受けそうなことを
言うな~っ!!!
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健全な作品です。
――では、気を取り直していきましょう。
あれ? 何もいない。
アリス、そこ……。
シャムは視線を下へ向け、
アリスの足下を指差していた。
えっ!?
なんとそこにいたのはっ!
がはははははっ!
我こそはケルベロス!!
どうだ、怖いだろうっ?
……子犬だった。
………………。
きゃあ、こわーい!
そうだろう、そうだろう!
そっちの女など、
恐ろしくて声も出ないようだなっ!
わたしは呆れて
何も言えないだけ……。
ふふふ、ハッタリを言うな。
内心、怖くて仕方ないくせに。
っていうか、ぶっちゃけ
ダイス男やたぬえもんと比べると
インパクトが弱いというか……。
それに意外性がないよね。
お約束って感じだしぃ!
し、失敬なっ!
もはや、
貴様だけは絶対に許さんっ!
キバをむき、
今にも飛びかからんとしているケルベロス。
だが、アリスは涼しい顔をしながら、
おもむろにその場へしゃがんだ。
お手ッ!
きゃうんっ!
ケルベロスは思わず反応し、
お手をしてしまった。
ちなみにこういうのを
『条件反射』って言うんだよ?
ききき、貴様っ、
またしても
我を侮辱しおってぇ~!
お座りっ!
きゃい~ん♪
ケルベロスはお座りをすると、
尻尾を振って喜んでいた。
か~わいい!
わたしもやってみた~い!
ち、ちん●ん……
きゃっ、恥ずかしい♪
※ちん●んとは、犬の芸のことです。
なお、念のため
伏せ字にさせていただいております。
……はぁ。
やると思った……。
わんわんっ
ケルベロスはちん●んをした。
ハチ公もびっくりなくらい、忠実な犬である。
だが、これによりケルベロスの怒りは
頂点に達する。
いつ爆発してもおかしくない状態だ。
お~ま~え~らぁ~!!!
全身の毛を逆立てるケルベロス。
するとアリスは落ちている石ころを拾い、
イチローも脱帽するような強肩で
遠くへ放り投げた。
飛距離は軽く見積もっても
500メートル以上はあるだろう。
ほーら、取ってこーい!
わんわんわーん!
ケルベロスは石ころの飛んでいった方向へ
全力疾走していった。
その場には静けさが戻り、
アリスとシャムは顔を見合わせる。
じゃ、シャム。
そろそろ行こっか?
御意っ!
こうして知恵と勇気で
最初の試練を乗り越えたアリスとシャム。
次に待ち受けている試練はなんなのだろうか?
そして未だ謎に包まれた地獄姫は
どんな御方なのだろうか?
ちょっと待てぇ!
これで終わりかよっ!?
今回もわたしの出番がないって
どういうことだよっ?
またもや話の本編に出番がなかったキララ。
彼女の怒りは
いつまで爆発せずにいられるのか?
むしろ出番はあるのかっ?
――こうご期待っ!!!
To be continued!