09 古書店にて(骨董店side)
09 古書店にて(骨董店side)
ヴィクトリア!ヴィクトリアはいない!?
慌てた様子で、リディアとフレデリックはエンジェルストリート古書店へと入る。
どうしたんですか……?
訝しげな表情で店の奥から姿を現したのは、小間使いのポールだった。
ヴィクトリアにどうしても話があるんだ。
呼吸を整えてから、フレデリックは切り出す。
ああ、それなら……彼女はストリート二番街にある教会に行きました。
最近よく来店されている、古物商のエドウィン氏も一緒です。
恰幅の良い紳士なので、すぐに分かるかと思いますが。
エドウィン……それってもともとヴィクトリアの親戚にランプを売りつけた古物商じゃないの!
知っているのか!?リディア
ええ、もちろん。エドウィン氏の評判は正直あまり良くないの。人当たり良く見せかけて、裏ではあこぎな商売をしているらしいわ。
あこぎな商売!?
魔術関連の、怪しげな品を流しているって噂があるのよ。彼の周辺では失踪する人も多いらしいし。とにかく、ろくな人間じゃないわね
大げさな身振り手振りをして、リディアは言った。
ぷっ!リディアさん、きれいな顔してけっこうズケズケと物を言いますよね
横から口を出したのはポールだ。
よく分かっているな、少年
ちょっとフレデリック。茶化さないでちょうだい!そんなことより、教会へ急ぎましょう
そうだな。ポール、すぐにお前の店の女主人を連れ帰って来るから、おとなしく待っているんだぞ
はい。了解です。うちの女主人をどうかよろしく
ポールはにこやかな笑顔を作り、フレデリックとリディアを見送った。