08 突然届いた手紙(骨董店side)
フレデリックの部屋に電話がかかってきたのは、ぐっすりと眠っていた朝のことだった。
前日までニューヨークで行われた展覧会の取材を終えて、ようやく帰宅したのは深夜。
寝ぼけ眼で取った受話器の向こうから聞こえてきたのは、他でもない、リディアの声だった。
08 突然届いた手紙(骨董店side)
フレデリックの部屋に電話がかかってきたのは、ぐっすりと眠っていた朝のことだった。
前日までニューヨークで行われた展覧会の取材を終えて、ようやく帰宅したのは深夜。
寝ぼけ眼で取った受話器の向こうから聞こえてきたのは、他でもない、リディアの声だった。
なんだよ一体……ええっ!?ヴィクトリアからおかしな手紙が届いた?わかった!すぐに行く
リディアの言葉に、フレデリックはすっかり目が覚めてしまう。
すぐに身支度を整えると、ルルイエ骨董店に向かったのだった。
おはよう、フレデリック。出張取材は上手く行った!?
地方紙に掲載する写真を撮るため出張することは、リディアには伝えてあった。
ああ、もちろん。わが町出身の彫刻家の作品も、きっちり写真におさめて来たよ
それは良かった。ところで……いつもいつも、突然に呼び出してごめんなさい。
今朝届いた手紙っていうのは、これなの
手渡された手紙を開く。
クリーム色の便箋に、紺色の生真面目な文字が並ぶ。
それはヴィクトリアからリディア宛てに書かれたものだった。
親愛なるリディアへ
先日は相談に乗ってくれてありがとう。私なりに、あれから考えてみました。
ランプの見せてくれる世界は紛れもなく私自身が求めていたものです。
あの幻がなければ、私は絵本を描くことは出来なかった。
そして絵本は私の希望。
つまりあのランプの光の向こうに映る世界こそが、私の希望なのです。
だから私は決めました。あの光の向こう側へ行くことを。
冗談だと思いますか?いいえ、私は本気です。
あちらの世界への橋渡しをしてくれる人物と、最近知り合うことが出来たのです。
儀式の決行は今週の木曜日。
お別れを言う時間もなく、あわただしく決めてしまってごめんなさい。
ヴィクトリアより
読み終えて、フレデリックは小さく震えた。
リディア、これは……今日は何曜日だっけ?
木曜日。そう、今日よ。詳細は分からないけれど、ヴィクトリアは今日、ランプの向こうの世界へ旅立とうとしているの。
なんだって!今すぐ止めないと……手遅れになる!
二人は顔を見合わせた。
そして急いで身支度を整えると、フレデリックの運転する車でヴィクトリアの店へ向かったのだった。