と言うと!?

 興味津々というか……有り体に言えば、野次馬根性丸出しで、涼が訊く。

 よほど気になるらしい。

 なんだってそんなに俺のことが気になるのか謎だが。

話してもいいけど、交換条件だぞ? 俺が一つしゃべったら、おまえも隠してた事実を一つ話せよな

うんうん

 胡散臭い笑顔を大盤振る舞いして、涼は何度も頷く。
 放っておいたら、揉み手とかしそうだった。

必ず話すよ! だから……二重人格じゃないなら、さっきのアレはなに?

俺の過去世であり、その時の記憶、その時に持っていた能力だよ

えっ!?

 こいつでもぶったまげた顔をすることはあるんだなぁと、そう感心したくなるような、涼の驚愕の表情だった。

 俺は苦笑して、詳しく教えてやった。

つまり、割と誰も知らないし、信じることもないんだろうけど、人ってさ、何度も何度も転生してんだよ。別にラノベのお得意ネタでもなんでもなくて、本気の事実として。ただ、普通の人間は転生したと同時に、自分が前世でどんな人生を歩んだのか、たいがいは忘れてしまうだけ

 もちろん例外はある。それこそ、いくらでもある。
 俺の例を持ち出すまでもなく、外国にも過去世を思い出した人の話は多い。

過去、自分はこういう人生を歩んでいた

と思いだし、追跡調査すると、本当に本人の証言通りの事実が見つかる――そんなことは、割とよくあることなのだ。

 ただ、そこまで証拠が出ても、世間が認めないだけの話で。

 いや、外国ではかなり事情が違ってきたと聞く。日本くらいかもしれない、未だにそういう事実を欠片も認めないのは。

……そ、それが事実だとして

 涼は恐ろしく真剣な顔で俺を見た。

どうして君は、前世の記憶を忘れずにいるんだ?

別に前世だけじゃないね、思い出したのは。前の前とか、その前とか……かなり思い出せる過去がある。おそらく俺が知ってることを全部白状したら、根本から日本史が、いや世界史が覆るような事実だって知ってる。闇に葬られた歴史ってヤツ?

 身を乗り出そうとした涼を目で抑え、俺は淡々と続ける。

しかし、そのことは今は関係ないからばっさりカットして――

えぇええええ

 不満そうな涼の声を、俺はわざとらしく無視する。

俺が前世を思い出したのは、別に偶然じゃない。六年前に、妹と一緒に出会った、クロオってヤツのせいさ。何度か名前出しただろ? そいつが俺達のギフトを目覚めさせた。俺が過去世を思い出したのも、それがギフトの一部だからだ

 ためらったが、約束なのでずばっと告げた。

過去世の自分に戻り、その時の能力や技能をそのまま使える、というギフトのな。リンカネーションと俺は勝手に呼んでるけど

リンカネーション……輪廻転生のことかな

そう。そしてあのシンってヤツは、俺が何百年か前に外国で生活していた時に、生きていた人格なんだ。別に多重人格じゃない。あいつも俺そのもの

 なんとなく涼がじろじろ見るので、俺は両手を広げて言い訳しておく。

生まれた国や環境が違えば、人は割と違った性格にもなるし、普通の人生送ったりもするってことさ

 まあ、昔シンみたいな荒れた人格だったとしても、今は真面目なふつぅうううの高校生ですよとアピールしたわけである。

 さらに涼が口を開けたので、俺は素早く割り込んだ。
 順番は守ってもらわないとな。

はい、次は涼ちゃんの番だよ~


 わざとおどけて、にっこりと笑ってやった。
 もちろん、

言わないとわかってるよね?

という脅しも含んだ笑みである。まあ、こいつにはあまり脅しが通じそうもないんだけど、俺がいつも大人しいと思うのは、それこそ大間違いである。

 確かに俺は、かつてシンとして自分の人生を生きたこともあったのだ。

 ……金で殺しを請け負う戦士として。

あ、ああ……そうだね

 幸い、涼は今回は物わかりがよかった。

さすがに、僕も誠意を見せないとな

そうだよ、おまえには誠意が足らん

 俺は重々しく言ってやった。

いやぁ……ははは。
勤労意欲も足りなかったりしてー。

 誰も褒めてないのに、涼が余計なことまで言って、照れたように頭をかく。

まあ、君は話してもわかってくれそうだ。じゃあ、ぶちまけるけど、実は僕も――おそらく君が持っているであろう、ブレスレットを持っている

 涼はそう言うと、机の引き出しを開け、本当にブレスレットを取り出した。

 俺が慌ててポケットから脇坂のブレスレットを出したが……どう見ても同じものである。安っぽい銀色のもので、そこらの通販で買えそうなヤツだ。

で、君が襲われるのがわかって駆け付けられたのは、僕にも連絡が来たからだよ……君が探す連中のね。……そいつらが、ブレスレット所持らしき不審な男がマルイに現れ、今通りを歩いているって言うんで、これはまずいなと――ちょっ


 俺が胸ぐらを掴んで引き寄せると、さすがに涼の顔から血の気が引いた。

ぼ、暴力反対

なあ、腹を割って話そうじゃないか

 我ながら極悪で低い声が出た……あ、ヤバい、これはシンよりさらにまずいヤツが出てきそうだ。ここはなんとか我慢しないとな。

 俺は無理に衝動を抑え込み、自分を抑えつつ、ゆっくりと尋ねた。

今回は一度しか訊かないから、心して答えろよ。……おまえも、連中の仲間なのか?

第三章③リンカネーションはギフトの一部

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