04 ランプとの出会い(骨董店side)
ヴィクトリアは古ぼけたランプをリディアとフレデリックの前に差し出した。
それは水差しのような形をしていて、材質は黄金のように見える。
表面は多くの奇妙な模様で覆われていた。
それに混ざって、絵と文字の組み合わせで単語がいくつか記されている。
アラビア語でもサンスクリット語でもない、それよりずっと古い言語――いくぶん絵文字の性質を残した、文字と象形文字の両方からなる言語のように思えた。
04 ランプとの出会い(骨董店side)
ヴィクトリアは古ぼけたランプをリディアとフレデリックの前に差し出した。
それは水差しのような形をしていて、材質は黄金のように見える。
表面は多くの奇妙な模様で覆われていた。
それに混ざって、絵と文字の組み合わせで単語がいくつか記されている。
アラビア語でもサンスクリット語でもない、それよりずっと古い言語――いくぶん絵文字の性質を残した、文字と象形文字の両方からなる言語のように思えた。
このランプは親戚の骨董店の主人が亡くなって、私が引き取ることになったの。お人良しだと思った?とんでもない!そこのご主人はとんでもないコレクターでね。貴重な古書をたくさん所有していたの。彼の家族は遺品となった古書を格安で私に買い取らせる代わりに、骨董品の引き取りも依頼してきたの。最初は喜んだわ。だってリディア、あなたにも良い話だと思ったから。――でも、駄目。骨董品には、そんなに価値はなかった。見てみる?
言いながら、ヴィクトリアは店の奥につながるカーテンを開き、奥へリディアを促した。
なるほど……たしかに一見、高価そうな家具や食器ですが、ほとんどがレプリカや、安価な塗装が施されたものですね
その通り。でもね、一つだけ、本物を見つけたの。それが、これよ
手に抱えたランプを愛おしそうに撫でながら、ヴィクトリアは言う。
ランプ?今時どんな状況で使うんでしょう?……停電の時とか……?
フレデリックはおどけて言ったが、リディアは顎に手を当て、真剣な表情でランプを見つめている。
これは……なにやらいわくありげな外見をしていますね
そうなの。ルルイエ骨董店の女主人であるあなたなら、価値が分かるでしょう
価値が分からなくてすみません
フレデリックは横から口を挟み、謝罪した。けれどそれを無視して、リディアとヴィクトリアは会話を続ける。
ええ……これはおそらく、話に聞く<アルハザードのランプ>ですね?
リディア。やっぱりあなたも、そう思うかしら?
何です、その<アルハザードのランプ>というのは?
フレデリックはたまらず質問した。
伝説の古代種族アドによって造られ、アイレムで発掘された、魔力を持つランプのことよ。狂えるアラブ人アブドゥル・アルハザードが所持していたから、この名で呼ばれているの。火を灯すと、旧支配者たちが跋扈する異界の光景を垣間見ることが出来るわ。
この炎に魅入られた作家・ウォード・フィリップは<アルハザードのランプ>という物語の最後で、異界へと旅立つの
うーん……リディア、僕には君の言っていることがさっぱり分からないよ
あら、仕方ないわよ。私だってこの仕事をしていなかったら、きっと頭がおかしくなったんじゃないかと疑うわ
ヴィクトリアは、首を捻るフレデリックをフォローする。
それで、そのア、アルハザードのランプ?それを使うと、何が起こるっていうんでしょうか?
良い質問ね。そう、それが問題で、私が悩んでいる点でもあるわ
ヴィクトリアは深刻な表情で語り始めた。