03 依頼者との邂逅(骨董店side)

依頼主が経営する≪エンジェルストリート古書店>は、名前の通りエンジェル・ストリートの端に位置している。
ルルイエ骨董店から見ると、ちょうど対極の関係だ。

こんにちは、ダーレスさん。ルルイエ骨董店から来ました、リディア・カーターです。

お待ちしてました。僕は小間使いのポールです。どうかお見知りおきを!

赤茶色に錆付いた扉を開けて、フレデリックとリディアは中へ入った。
ポールと名乗る少年が駆け寄ってきて、荷物を持ち店の奥へと案内する。

あら、リディア!元気してたかしら?

はい、もちろんです。ダーレスさんもお元気でしたか?

ダーレスと呼ばれた女性は、人好きのする笑顔を見せる。
ストレートの金髪を肩へ流し深緑色のシックなワンピースを着た彼女は、まるで童話に登場する美女のようである。

あら、堅苦しい呼び方はしないで。同じストリートの経営者同士なんだから。私のことはヴィクトリアと呼んでちょうだい

では、ヴィクトリア!このたびは我がルルイエ骨董店への査定の依頼、ありがとうございます

いえいえ。何かあったときには、ぜひルルイエ骨董店へお願いしようって決めていたの。……ところで。そちらのお連れさんは……もしかして……

続きの言葉をリディアに耳打ちするが、フレデリックの耳には届かない。

そ……そんなことありません!

もう!若いって良いわねー!

顔を真っ赤にして俯くリディアの肩を、ヴィクトリアはポンポンと叩いた。
どうやら、ヴィクトリアは何か勘違いしているらしい。

あ、あのっ!

あら、威勢がいいじゃない、坊やったら

そうではなくてですね。僕はフレデリック。リディアの幼馴染で、普段はフリーの写真家をしているんですが、時間のある時にはルルイエ骨董店の手伝いもしているんです。なのでその……やましいことなんて、断じてありませんから!

急かされるように、フレデリックは自己紹介した。
ヴィクトリアの口角が、にっ、と上がる。

そんな一生懸命に否定しなくてもいいのよ。若い時は色々あるものだから。
こんなおばさんの私だって、夫が生きていた頃は……まあ色々あったもの

少し目を伏せながら、ヴィクトリアは言った。

ヤバい……亡くなった旦那さんのこととか、仕方ないとはいえ言わせちゃまずかったかな

フレデリックの背筋に、ひやりと冷たいものが流れる。

あら、そんなに困ったような顔をして。夫が亡くなったからもうだいぶ経つから、気遣いは無用よ

フレデリックの気持ちを表情から読み取ったらしい。
ヴィクトリアは軽い口調でいさめた。

そうそう、そろそろ本題に入りましょ

そうですね。あの、不思議なランプを手に入れたとか

そうなの。見て、これよ

ヴィクトリアはランプを差し出した。

03 依頼者との邂逅(骨董店side)

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