翌朝、僕らは平原の上で目を覚ました。
昨日は人生で初めての野宿だったのだ。
翌朝、僕らは平原の上で目を覚ました。
昨日は人生で初めての野宿だったのだ。
さーて、今日はこれからどうしようかしら。
ねえ、シュウちゃん?
……クソッ。昨日あれだけさんざんなじったのに、やっぱりついてくるつもりなのかよ
どうにかお母さんの目を盗んで、西野さんと一緒に逃げ出せないだろうか?
そう思って僕は西野さんの様子を伺った。
……って、アレ?
おはようございます。里子さん。今日はこれからどうしましょうか?
そうねー。ずっとこんな牧草地で油売ってるわけにもいかないものねえ
な、なんだか西野さん、僕よりもお母さんの方と親しくなってないか?
ふざけんなよッ! 同性同士でイチャイチャしたって需要なんかねえんだよ! しかもクラスメイトとお母さんの組み合わせって誰得だよ! 少なくとも僕は損だよ!
……と、言ってやりたかった。でも言えなかった。センシティブだから
ウォッホン。こういう時はね、まず町を探すのが定石なんだよ
え、そうなの?
そうなのかい? シュウちゃん
ここがどんな世界かはわからない。でもモンスターがいたのなら、生き物がいるってことだ。となると人がいて、町を営んでいる可能性があるってことなんだよ
へえー。なんだか今日の笹々木くん、冴えてる。凄い。もしかして頼りになる系?
いやあ、これくらい大したことないよ
……なんて表面ではクール気取っちゃったけど、実はめっちゃ嬉しい! 西野さんが僕を褒めてくれた! 頼られるって気分イイネ! 来たか? 早くも両想い、来ちゃったか!?
流石はわたしのシュウちゃん。冴えてるわねえ。小学生の頃のようにいい子いい子してあげるわ
……バリでテンション下がるな
ところで町まではどうやって行けばいいの?
えっ? そ、それは、その……
地図があるわけでもない。どっちを向いても山か地平線。建物っぽいものも皆無。何を頼りにすればいいわけ?
………………
……そ、そんなの、僕が読んできた本に書いてなかったぞ。異世界、どうなってるんだ?
ダイジョーブイよ。あたしに任せない!
お母さんは近くの低木から枝を二本ほど手折ってきた。
ま、まさか、それは……
そう! あたしはこれでよく無くしたものを見つけたりするのよ! 探しものはどこですかー、ってね。ウフフン♪
お母さんは枝を一本ずつ両手に持って歩き出した。
それは……
ダウジングだった。
そんなんで町の方角がわかるかよ! 非科学的だよ! 全然、現代的じゃないよ! オカルトやファンタジーの部類だよ! 誰がそんなの信用するってんだよ!!!
……って、叫ぼうと思った矢先のことだ
……ちょ、ちょっと。西野さん。どこに行くの?
里子さんについていくんだけど?
え? そんな木の枝を使った占いが本当に当たると思ってるの? クスッ
それよりも僕は町は逆方向だと思うんだよね。あっちの方に人々が集っているオーラのようなものを感じるんだよ
これは自然にお母さんと別行動を取れる絶好のチャンスだ!
ふうん。でも、わたしは里子さんと一緒に行こうかな
……えッ!? どうして!?
だって里子さんの方が頼り甲斐があるし
……ガーンだな
結局、僕はお母さんと行動を共にすることにした。
僕は重い足取りで二人のあとについていった。
ああ、クソ。ああ、クソ。あんな方法で見つかるわけないだろ。常識的に考えろっての
……ん?
パ ヤ ヤ ヤ ヤ ー ン
お母さんがほんのりと発光しているように見えた。
なんだ、アレ? まさか魔法? そんなわけないよな。まったく、僕もファンタジー小説の読み過ぎだなあ
そう思った数分後のことだった。
地平線の向こうに町が見えてきた。
……………
あっらー。ジャストのミートでバッチグーね。あたし、もしかしてダウジングの才能があるのかしら。オホホホ
……お、お母さん。も、もしかして、ま、ま、魔法を使ったわけ? 人のいる場所をサーチするやつとか
魔法瓶? 喉が渇いたのかい? あいにく水筒は持ってきてないわよ
なんでだよ! なんで異世界に来てお母さんが真っ先に魔力に覚醒してんだよ!? 主人公かよ!? ヒロインかよ!?
……と言ってやりたかったけど、もう以下略です。ハイ
……いや、待てよ。もしかしたら僕だってその気になればやれるかもしれないぞ
お母さんにできて、僕にできないという道理はない! やるぞ! やってやるぞ!!!
僕は精神を統一し、内側の力を一点に集中させた。
目覚めろ、僕の内なるパワー!
開花しろ、僕の可憐なフラワー!
降り注げ、僕の才能のシャワー!
セイヤッ!
……何も出ませんでした。デスヨネー
ちなみに西野さんはお母さんを賛辞してばかりで
僕の方には見向きもしてくれなかった。
ツッコミすらなかった。辛い。
里子さん、流石ですね! おかげで今日は野宿せずに済みそうですね。ありがとうございます!
それと、もしよかったら後でそのダウジングという技、ご鞭撻をお願いできませんか?
いいわよ~。上手く教えられるかわからないけど、ちょっとしたレシピのコツのようなものさえわかれば誰でもできることだから
お母さんはさっきのが魔法であることを
まったくわかっていないようだ。
……さっさと町に入ろうよ
町の外でずっと立ち話をしていても仕方がない。
いつモンスターが再び襲ってくるかもわからないのだ。
そうね。ごめんなさいね、シュウちゃん。喉が乾いていたんだものね。早く町でお水をもらいにいきましょう
うわー。子供っぽいなあ
だからそんなこと言ってないって!
僕らは町の中へと向かった……。
次回!
「昨夜はお楽しみでしたね!」