第02話:遠い道のり

世間の平和を守るため、
些細なことでも厳しくオシオキ!
ま、魔法少女シビア!
ただいま参上です!

リー!?

リー!?

人類総怠惰計画を推し進めようとする秘密結社リーニエントの戦闘員達の前に、ヒラヒラした衣装を見に纏った魔法少女が姿を現す。

秘密結社リーニエントの手先ですね?
あ、あなた達の悪行、
私が止めてみせます!

リー!!

リー!!


街の人々の仕事を邪魔して堕落させようとしていた戦闘員達は、一瞬戸惑うがすぐに敵だと判断して襲い掛かってくる。
しかし、魔法少女の力の前では彼らの力は大した障害にもならない程度のものでしかない。

げ、厳罰!
シ、シビリティ・アロー!!!

リー!?

俺達、まだ何もしてないのにー!?


必殺技で鎧袖一触にされ、遠くに吹き飛んでいく戦闘員達。
盛り上がりの欠片もない。

た、怠惰な人は淘汰される運命なのです!


最後にポーズを決めると、魔法少女シビアはまばらな拍手や歓声を上げる周囲の観客達に軽く手を振ってから姿を消した。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

表通りから路地裏に場所を移して、シビアは変身を解く。

ふぅ……

おつかれ、世知子

うん、ありがとう……


魔法少女の髪型や衣装から普通の女子高生の姿に戻った世知子を、シロベエが労う。
しかし、世知子の表情は晴れない。というより、あからさまに曇った。
これが、駄目だしのスタートだと理解しているからだ。

で、さっきの戦いについてだけど──

うん……

まず動きがないよね!
止まった状態で遠距離から
矢で一方的に攻撃とか。
折角のヒラヒラした衣装なんだから、
もっと動き回ってヒラヒラさせないと!

み、見えちゃうじゃない!?

見せちゃ駄目だよ?
見えそうで見えないように
動き回るんだ!

そんな無茶な……

無茶じゃない!
魔法少女の基本動作だよ!?


通常の魔法少女なら誰もが保有しているチラリズムスキルの最低水準である。

まぁいいや、次!
いきなり必殺技とか、
盛り上がりの欠片も無いよね!

魔法少女はピンチになってこそ!
敵の攻撃を喰らって
ちょっと衣装が破れたり、
そんな展開を皆待ってるんだ!

盛り上げ役の戦闘員にも
悪いと思わないのかい!?

一応真面目に戦ってる戦闘員達に失礼なナマモノだった。

私、真面目に戦ってるんだけど……。
そんなことを言ってたら、
負けちゃうじゃない

勿論、勝つのは大前提さ。
その上で如何に魅せる戦いをするか……
魔法少女の戦いには、
それが重要なんだよ!

それは……そうだけど……


無茶振りではあるが、人気=正義の魔法少女業界ではシロベエの言っていることは正しい。
魔法少女には魅せる戦いが求められるのだ。

最後に! 台詞に照れが残ってるよ!

う"……


これについては自覚があるのか、世知子は何も言えずに押し黙った。

照れて顔を赤くしながらおずおずと
ってのも手法の一つではあるけど、
君のキャラじゃないからね。

照れは禁物!
照れると逆に恥ずかしいよ!

分かってはいるんだけど……。
やっぱり恥ずかしいのよ

まったく……。
君はいつまで経っても慣れないね。
仕方ない、千本ノックだね

それは勘弁して!?

ダメダメ!
このままじゃいつまで経っても
底辺脱出出来ないからね!
荒療治だよ!

そんなぁ……

こうして世知子は「ヒミツの特訓」に臨むことになった。

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