第01話:世知辛い世界

え~と、今週の順位は……

……また下から数えた方が早い順位

世知子は貼り出された紙を見て、思わず呟いた。
彼女が見ているのは、魔法少女のランキング表だ。
世間で活動している数百人の魔法少女の人気が一目で分かってしまう、悪魔の紙である。

はぁ……

そう、彼女──厳島世知子は魔法少女と呼ばれる存在である。
煌びやかな衣装に変身して、魔法少女シビアとして悪の秘密結社と戦う正義の味方だ。
しかし、魔法少女と言うのは何も彼女一人だけではない。
世間には数百人もの魔法少女が、日々活動しているのだ。

やれやれ、また底辺かい、世知子?

…………………………

そんな世知子に話し掛けてきた白いナマモノ。
彼は世知子を魔法少女の道に誘ったマスコット&営業&プロデューサーのシロベエだ。
辛辣な言葉を投げ掛けられるが、世知子は言葉を返せない……彼の言葉が事実だったからだ。

君の評価が僕のお給料にも影響するんだよ?
もう少し頑張ってくれないと困るんだけどな

……ごめんなさい

ゴメンですんだら魔法少女は要らないんだよ

この不思議生物、川に投げ捨てちゃダメ?

言われても仕方ないと思いつつも、やはりイラッとする世知子だった。

何か言ったかい?

……別に

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

数百人もの魔法少女が無秩序に活動すれば、世間に対して逆に混乱を巻き起こす……それを怖れた有志によって立ち上げられた魔法少女統一協会。
そしてそんな彼らによって提唱され、既に広く受け入れられているランキングシステム。
それは、彼女達魔法少女に栄光と絶望を与える悪夢のシステムだった。
会員達が注目する魔法少女に目印として付ける「お気に入り」と、魔法少女の活動に対して付ける「評価ポイント」により、彼女達は日々その人気をランキングという形で見せ付けられるのだ。

それで、ポイントはどれくらいだったんだい?

……二ポイント

ちっとも増えてないじゃないか!

仕方ないじゃない

まったく……それじゃいつまで経っても上に行けないよ?
やっぱり、もっとお色気路線で行った方がいいんじゃないかな

それは嫌ッ!?

総選挙で二十位以内に入ってメジャー入り、か。
夢を持つのは勝手だけど、このままだと夢のまた夢だよ?

そして、もう一つ。
年に一度開催されるイベント「総選挙」によっても彼女達の明暗は大きく分かれる。
総選挙で上位に入ればマスコミが密着的に報じてアピールしてくれるのだ。
二十位以内の「メジャー」になれば、その後一年間のランキングは安泰と言える。
注目が人気となり、ランキング上位になってまた注目される、そんな好循環に入れるからだ。

分かってる。
それでも私は……

逆に、今の世知子のようにランキングの下位から脱出出来ない魔法少女は注目されない。
注目されなければ人気も出ず、人気が出なければ注目されないという悪循環だ。

それでも私は、いつか……。
いつかきっとメジャー入りするんだ!

第01話:世知辛い世界

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