どこか不安を隠し切れない様子でアクロは準備を進めていた。任務に必要なもの、不必要なものを分けていたせいで部屋は混沌としていた。
(魔獣討伐の任務は初めてだから緊張するよ……)
三十分前、剣技場で稽古を行っていたアクロは、がたっと勢い良く開いた扉の音と共に、突然自分を訪ねてきた人物に驚きを隠しきれなかった。お手製の狙撃用ゴーグルを額に巻いて現れたのは、剣技場では見慣れない、六番隊隊長カノンであった。
剣よし、砥石よし、携帯食料、水よし、援護用閃光弾とかは、きっとカノン隊長が積んでくれてるだろうから大丈夫……だよね。なるべく身軽で来いって言われたし
どこか不安を隠し切れない様子でアクロは準備を進めていた。任務に必要なもの、不必要なものを分けていたせいで部屋は混沌としていた。
(魔獣討伐の任務は初めてだから緊張するよ……)
三十分前、剣技場で稽古を行っていたアクロは、がたっと勢い良く開いた扉の音と共に、突然自分を訪ねてきた人物に驚きを隠しきれなかった。お手製の狙撃用ゴーグルを額に巻いて現れたのは、剣技場では見慣れない、六番隊隊長カノンであった。
稽古中失礼する。一番隊アクロ隊員に任務を依頼したい。稽古中との話を聞いたのでここに来た
えっ、はいっ! アクロ隊員ここにいます!
いきなり自分の名前が呼ばれたアクロは、ぎこちない敬礼と共に、焦って返事をした。その様子を見た他の隊員が何名か吹き出した。
カノンも口元に少し笑みを浮かべながら尋ねた。
稽古止められるか? 任務内容について話がしたい。
はいっ。今行きます
(は、恥ずかしい……。でも何で私なんだろう? 隊も違うし、まだ任務数も少ないのに)
日が暮れ始め、少し涼しさも感じる剣技場の外で、カノンは任務内容の書かれたレポートを渡しながら説明を始めた。
今回の任務は魔獣討伐。報告によると四足歩行型の大型魔獣。被害状況から推測するに、鋭利な爪、牙もしくはそれに類する武器を持っている。班編成は一番隊アクロ、三番隊セト、俺と同じ六番隊からルークを連れて行く。一時間後十九時には準備を整え、門前に停めてある戦闘車に乗り込んでくれ。質問はあるか?
淡々と語るカノンの説明を頭で必死に追いかけ、急いでレポートを確認してアクロは答える。
はい、いくつか質問があります。基本的な携帯道具の他に持っておくべきものはありますか?
後、班員に選んで頂いて光栄なのですが、魔獣討伐任務は初めてで、隊も違う私を何でなんでしょう?
アクロはカノンの顔色を伺いながら、カノンに問いかけた。
『時守りの騎士団』は、武器や戦闘スタイルによって隊が分かれている。アクロのいる一番隊は刀剣部隊、部隊長は総隊長でもあるログが務める。カノンが部隊長を務める六番隊は、中遠距離攻撃を得意とする銃砲撃部隊である。
合わせて答えよう。基本的な道具以外はいらん。なるべく身軽で来い。機動力のある前衛。そういった条件で探してて、お前の噂を聞いた。討伐経験が無いならこの機会に勉強してくれ
そう言ってアクロはカノンの肩を軽く叩くと、隊舎の方へ去っていった。カノンの羽織っている上着が風に揺れる。その背中は自信に満ち溢れとても大きなものに見えた。
は、はいっ! よろしくお願いします!
アクロは、嬉しさから少し赤らんだ頬を浮かべ、しばらくカノンの後ろ姿を見送った。少しして準備をしなくてはならないことを思い出し、焦って隊舎に走っていった。
(こんな私でも頼りにしてくれてるって事だよね)
アクロはつい先ほどの出来事を思い出しながら、準備を進めていた。
って。もう時間だ! 行かなくっちゃ!
慌てて荷物をまとめ鞄を閉め、部屋を後にしたアクロは、タッタッタッと軽やかな足取りで門まで駆けていった。アクロにとって初となる魔獣討伐任務が幕を開けた。