幻覚を見ると言われる山を登る勇者たち一行は、多数の魔物と戦闘をしていた。
幻覚を見ると言われる山を登る勇者たち一行は、多数の魔物と戦闘をしていた。
おらあ!
……。
がんばれー。
えいやっ。
一行が頑張って戦っている中、ただ後ろで突っ立って見ている、役立たずの姫は、当然のように戦っていなかった。
魔法使い様だって戦ってないでしょう!
私はなにも知らない。
姫は前出てこないでくれ。邪魔だから。
もうちょっと言葉を選んでください!
……まだ来る。
まだまだ倒してやるぜー!
!?
剣闘士、どうした。
いや、当てたはずなのに手ごたえがない。
……。
うわっ、騎士危ない危ない!
……!
……すまない。
あたしに切りかかるなんて。姫みたくおかしくならないでよ。
私はおかしくなってません!
騎士様これって…。
ああ、幻覚ってやつみたいだ。
みんな何か変なところがあるはずだ!なんとかそれで耐えてくれ!
変なところと言われても…。
わからん!とりあえずぶっ倒す!
相手の数多く、分析できるほどの時間が取れないため勇者たちは苦戦を強いられていた。
魔法使い様!なんか打開できるものはないですか!このままだとやられちゃいます!
またあたしなのー。小間使いみたいに頼らないでよー。
なんでもいいですから!
うーん…遠めの薬は今切れちゃってるからなあ。誰かが飲んじゃったから。
飲ませたのはあなたでしょう!
これかなー。
なんか液体以外の物が見えるんですけど。
姫パース。
なんでまた私が飲むことになってるんですか!なんですかこの薬!
あたしが飲んだらもしもの時どうしようもないでしょー。
もしもの時がある時点でおかしいでしょう!
おらあ!
……!
騎士!剣闘士!お前らで切りあうな!
早くしないとみんな危ないよー。
ああもう!なんで私が!
姫はビンの蓋を開けると中のキノコごと薬を飲みほした。
なんだ!
新手か!
……切る!
あーあー、ストップストップ。
突然現れた魔物を倒そうと剣を構える剣闘士と騎士を魔法使いが止める。
……なんで止める。
前見たやつと同じだな。速攻でやってやれるぞ。
あれは姫だから倒さなくていいの。
……。
……。
魔法使いのセリフに言葉を失う二人、そこに一時的に退避してきた勇者がやってきた。
魔法使い、また姫になんか飲ませたな。
正解!
姫はなんでそんなキモイ姿になってんだ。
さっき飲ませたのは魔物化の薬。まあ、ほんとになっちゃうわけじゃなくて、化けてるだけだけど。
これでどうやって戦うんだ?
この魔物の特徴で胞子をまき散らすってのがあるんだよ。
その胞子に幻覚作用があった気がするから幻覚の上書きをしちゃおうかと思ってね。
姫ー。飛んで跳ねてー。
文句はあとで聞くから、さっさとやってー。何言ってるかわかんないし。
ドスンドスンドスン!
うわー、気持ち悪。
……。
とても気持ちの悪い姿になった姫が、とても気持ち悪く飛び跳ねると、気持ち悪い胞子が舞い散り、周囲の魔物の数が減っていった。
私はなにも知らない。
お、ほんとに魔物が減った。
これでもう問題ないな!
勇者は魔物を掃討し、剣を収めた。
なんてもの飲ませるんですか!
とても気持ち悪い姿から元に戻った気持ち悪かった姫は、気持ち悪かったくせに喚いていた。
気持ち悪いを言いすぎです!
うるさいなー、元に戻るからいいじゃん。
元に戻るのは当たり前でしょう!
あんな姿になって…もうお嫁にいけません。
勇者様も勇者様です!
オレなんか悪いことしたか?
危ない時は守ってくれると言ってくれたのに。なんで私があんな姿に…。
オレだって前出て戦ってたんだから。それに姫が自分で飲んだんだろ。
そうですけど…。
敵は後ろにもいたんですよ。
そんな目で見ないでほしいなー。助かったんだし。
うぅ…なんで私ばっかりこんな目に。
よーし、じゃあ姫も元に戻ったことだし先に進むぞー。
謎の幻覚も無事突破した勇者たち一行は、なおも危険な山を登っていくのであった。
(まさかこの効果音を使ってもらえるとは…)