束の間の休暇を終えた勇者たち一行は、山道を歩いていた。
束の間の休暇を終えた勇者たち一行は、山道を歩いていた。
結構道が荒いな。転ばないよう気を付けろよ。
はーい。
慣れない山道ということもあり、いつもより進むペースは遅くなっていた。
山なんて初めてだなー。なんかわくわくするな!
先頭をきって進んでいく剣闘士は楽しそうに荒れた道を進んでいった。
意外だな。自然の中で自由に生きてそうなイメージだったんだが。
わたしはずっと闘技場で戦ってたからな。
わたしができる唯一の仕事だったからな。楽しくはなかったけど。
へー。町にあるのは知ってたけど、どんなとこなの?
猛獣と剣闘士を戦わせて、それを金持ちが見てるだけのとこだ。
戦ってるうちに動物の動きとか、考えてることがわかってきたけど、結局打ち解けることはできなかったな。
だから森で狼と話そうとしてたんだ。
あいつらが話せることは知らなかったけどな。
あと時々、人と戦うこともあったけどあれは嫌だったなあ。
結構過酷な生活してたんだな。
ま、旅に同行するなら引退してもいいって言われたからよかったけどな。
じゃあ、旅のはじめ眠そうにしてたのって。
あー、引退試合とか言われて前日に20連戦させられたんだ。二度とやりたくないな。
そんな理由があったんだねー。
どうしたんですか?
剣闘士の意外な過去が明らかになったところで、空気の読めない姫が声をかけた。
姫、随分疲れてるな。
山は始めてなので。
同じ初めてでも姫は微塵も楽しもうとせず、嫌々上ってるようだった。
私じゃなくて剣闘士様が変わってるんだと思いますけどね。
私はなにも知らない。
……。
すっ、と騎士は姫に手を差し出した。
なんですか?
……手を引く。
ありがとうございます。
相変わらず仲間に迷惑しかかけない姫である。
そういや、魔法使いはどうして旅に同行したんだ?
剣闘士の話を聞いて気になったのか勇者は尋ねた。
もちろん、報酬がよかったからだよ。
金が必要なのか?
師匠と一緒にお店やってたからね。
だけどお店の稼ぎが悪くなってきてさー。
魔王討伐の報酬をもらって、勇者一行の名誉でお店も大繁盛しそうだしね。
随分、俗物的な考え方ですね。
お金持ちには一生分からないだろうねー。
まあ、でも最初の仕事が王を操ることだとは思わなかったけどね。
そのせいで私はここにいるんですけどね。
昔のことをいつまでも根に持つ、マムシのようにしつこい姫はどうでもいいことを呟いた。
どうでもよくないです!
私はなにも知らない。
騎士様は勇者様に誘われたんでしたっけ?
コミュニケーションを取るのが苦手な姫は、無理やり話題に割って入った。
そんなことないですよ!
私はなにも知らない。
え?騎士とは町の外で初めて会ったぞ?
え?でもこの前そのようなことを聞いたんですが。
……国王から聞いた。
……世界を救うために勇者が旅立つと。
……私はそれを助けるために剣を取った。
騎士様ってお城の方だったんですか。
それはオレも初めて知ったな。
姫は会ったことないのか?
……私は警備。
警備の方々は町や城周辺にいることが多いので会うことが少ないんです。
いろいろあるんだな。
勇者はなんで旅に出たんだ!?
オレか?
オレは王に頼まれてな。
なんかオレの祖先が世界の闇を払ったとからしくて、たくさんいる末裔の中からオレも選ばれたらしい。
やっぱり勇者様はさすがですね。
じゃあその剣も代々受け継がれてきたものなの?
いや、これは支給品だ。
え?末裔なんじゃないの?
もういつの話かも分からないしな。
ほかの末裔が持ってる可能性もあるけど。
でも、オレはもともとは用心棒として働いてた人間だけど、皆より実戦経験はなさそうだ。
そういやまだ戦ってるところ見たことないな。
ま、オレはオレの仕事をするまでだ。
魔王を倒して、世界を救うためにな!
……!
騎士は突然姫の手を引き、皆の後ろに回した。
わっ、急になんですか騎士様。
魔物だね。
おっしゃー!任せろ!
数が多い、気を付けろ!
それぞれの過去が明らかになった時、突然多数の魔物が現れた。
危険な山を進む勇者たち一行の旅は続く。