美香

 なんか風邪っぽいから今日は休むー

ケンスケ

 とか本人は言っていたが、どうも僕は違うような気がする。
 幼馴染の勘という奴だ

 単純にサボりたかっただけかもしれないし、

 ひょっとしたらゲームの発売日なのかもしれないし、

 実際に風邪を引いたのかもしれない。

 もしかしたら、玻璃さんと話をする時間を与えてくれたのかもしれない。

 ダーツ……
 不敵の均衡
 ジャイロジャストジャスパー。

 白い女。

 ケープという人物について……。

 ……そんな粋な計らいを美香がするとは思えないが、果たしてどうなのだろうか。

 いずれにしても、僕はこの時間を有効活用するとしよう。

ケンスケ

 とか思っているうちに昼休みを迎えてしまった

 話を切り出すタイミングって難しいよね!

 人の少ない中庭で、一人弁当を食べつつ僕は途方に暮れる。

玻璃

 香田君、一人でお弁当?

ケンスケ

 うわあああああああ! あ! ああ!?
 は!? 玻璃さん!?

玻璃

 ……驚きすぎ

 心臓が胸を突き破って池ポチャしそうな僕の横に、ちょこんと玻璃さんは腰を下ろす。

玻璃

 香田君、元気なさそうだったから、来た。
 美香ちゃんもお休みだし

ケンスケ

 ぼぼぼ僕はいつでも元気もりもり?

玻璃

 なぜ疑問形……

 いかんいかん、落ち着かなくては。

 落ち着け。

 確か美香が素数を数えると落ち着けるとか言っていたな。

 そ、素数って何だっけ?

 1? 2? 3?

 1=0?

玻璃

 ……香田君と美香ちゃんて付き合ってるの?

ケンスケ

 アッペンヘェ!?

 その唐突な一言に僕はもう驚きすぎてお尻を浮かせながら変な声をあげた。

玻璃

 …………

 そんな僕を玻璃さんはジッと見つめる。

 えぇと……なんだって?

 僕と美香が付き合ってるって?

 ……そういう発想はどこから出てくるんだ。

ケンスケ

 美香とは……ただの幼馴染だよ

玻璃

 ……ふぅん

 聞いてきた割には薄い反応だった。

 一体何なんだ……。

ケンスケ

 …………

玻璃

 …………

ケンスケ

 でたー!
 変な沈黙!
 これホント苦手!

 いやいや、これは話を切り出すチャンスではないか?

 というか、この場を逃したらもう聞く機会が無くなってしまう気がする。

 ならば……

ケンスケ

 玻璃さんって……ダーツ上手だよね

玻璃

 ん……。
 ダーツは、得意。

ケンスケ

 玻璃さんが持ってるダーツ、見せてもらっていい?

玻璃

 ……いいけど

 言って、玻璃さんはポケットからダーツの矢を取り出した。

 いつも持ち歩いているのか……。

 それはともかく。

 そのダーツはやはり、昨日見たメールに添付されていた写真のものと、同じであった。

ケンスケ

 ……これ、どこで買ったんだ?

玻璃

 ……買ったわけじゃ、ない

ケンスケ

 ってことは……もらい物?

玻璃

 ……秘密

ケンスケ

 なにそれ超怪しい!

 なんだ秘密って。

 しかしそう言われてしまったら、もうどうしようもないではないか。

 これはどうしたものか……。

玻璃

 今日、香田君の家、行ってもいい?

ケンスケ

 ドゥッハーマァ!?

 またもや唐突な言葉に僕は素っ頓狂な声をあげる。

玻璃

 ダメ?

ケンスケ

 い、いや、ダメじゃないけど……

玻璃

 香田君と話したいこと、ある。
 なんなら……ダーツのことも、教えてあげる

ケンスケ

 ……!

 僕と話したいこととは……なんだろうか。

 いや、それよりも、玻璃さんが僕の家に来るというのは、好都合かもしれない。

 親父のパソコンを開いて玻璃さんに直接見せる、というやり方も出来るだろう。

 そして家には、縫姫ちゃんも居る。

 もしかしたら、玻璃さんと縫姫ちゃんを会わせて全て繋がり丸く解決! とかいう展開もあるかもしれない。

ケンスケ

 わかった。
 ぜひ来てくれ

玻璃

 うん。
 じゃ、また放課後

 言って、玻璃さんは静かにその場を去って行った。

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