ケンスケ

 ……なんだこれは……

美香

 ケン君、なんかこのメール、ヤバくない?

 コウダナオキというのは……言うまでもなく、僕の親父だ。

 しかしケープとは、一体誰なのだろう。

 僕と美香が見たメールは、全てこのケープと親父のやり取りだった。

 いや、それよりも気になるのが、一月十日のメールだ。

 開かれた画像ファイル。

 そこには、僕と美香が先日見たものと全く同じものが映されていた。

 それはずばり、玻璃さんの、ダーツ。

 ジャイロジャストジャスパー。
 不敵の均衡。
 

ケンスケ

 単純に考えると、ケープという人物の正体は……玻璃さんってことか?

 ……いや、それはどうだろう。

 このメールは六年前……つまり僕たちが小学生だったときのものだ。

 文面的に、ケープという人物が小学生だとは思えない。

 ならばケープとは……。
 玻璃さんとの関係とは……。

 そして、最後のメール。

 これは僕が開いた最後のメールであり、そしてこのパソコンに保存されている最後のメール。

 白い彼女。

 それは、噂の白い女のことなのか?

 バラバラにした、とはどういう意味なのか……。

 様々な疑問が、謎が、僕の脳内をぐるぐると廻る。

ケンスケ

 美香の言うとおり、何かヤバい感じがしてきた……

 メールを開けてしまって、本当に良かったのだろうか……?

 パンドラボックスだったのか……?

ケンスケ

 すぅーーーー、
 はぁーーーー

ケンスケ

 ……美香、今日のところは一旦帰るよ

美香

 う、うん……わかった

 僕はパソコンの電源を切って片づける。

 考える時間、整理する時間が必要だ。

 縫姫ちゃんに直接問いただすのも、少し待った方がいいのかもしれない。

 玻璃さんのこともある。

 うぅん、だめだ、やっぱり家に帰ってから考えよう。

ケンスケ

 じゃ、また明日な

美香

 ……ケン君。
 え……っと、私から、玻璃ちゃんに聞いてみようか?
 あのダーツ……『不敵の均衡』を、どこで手に入れたのか……とか

ケンスケ

 …………

 僕は少しだけ考えてから、口を開ける。

ケンスケ

 いや、大丈夫。
 美香はいつも通りにいろよ

 美香に、気を使って欲しくは、無いから。

美香

 そう……。
 なにか、私にできることあったら、今日みたいに来てくれていいから、ね

ケンスケ

 なんだよ、珍しく優しい言葉だな。
 熱でもあんのか?

美香

 あほ

 言って、美香は僕に背を向けた。

ケンスケ

 ……ありがとうな

 美香の小さな背中にそう言って、僕は美香の家を後にした。

 そして次の日、美香は学校を休んだ。

その6-7 パンドラボックス

facebook twitter
pagetop