魔物に滅ぼされてしまった村を離れ、勇者たち一行は荒野を歩いていた。

勇者

見渡す限りずーっと荒地だな。

剣闘士

こういうときはダウジングがいいって聞いたことあるぜ!

勇者

ダウジング?

剣闘士

おう!今ちょっとやってみるから見ててくれよな。

そういうと剣闘士は腰から剣の入った鞘を外し、地面の上に立てた。

勇者

お前それもしかして…

剣闘士

おらあ!

剣闘士が手を離すと物理法則にしたがって剣は倒れた。

剣闘士

あっちだな。

魔法使い

なーにバカなことやってんの?

魔法使いは呆れたように勇者と剣闘士に話しかけた。

剣闘士

バカじゃない!ダウジングだ!こうすればお宝が見つかるんだぞ!

勇者

オレが探してるのは道とか村なんだけどな

騎士

……勇者。

勇者

ん?なんだ騎士。

騎士

……山。

勇者

山?

騎士

……行く先が決まってないのなら山はどうだろうか。

勇者

山ってあの遠くに見えてるあの山か?

騎士

……そう。

勇者

見えてるからわかりやすいとは思うが、遠すぎるな。ここからじゃ何日かかるかわからない。

騎士

……そう。

目的地を決められず途方に暮れる一行。

勇者

どうするかなあ。

勇者様ぁ。はぁ…はぁ…。

そこに老人のように疲れ果てた姫が追い付いてきた。

勇者

姫、お前もなんか考えがあるのか?

違います…前も言いましたが置いていかないでください。

あと、のどが渇いてきたんです。水か何かありませんか?

勇者

のどが渇いてるのか。じゃあ、えーと…あった、ほいっ。

勇者は地面に落ちているなにかを姫に投げた。

わっ、投げないでください。

なんですかこれ。

勇者

見ての通り石ころだ。

なんでのどが渇いてる人に石を渡すんですか!

勇者

いやいや、こう石を口の中に入れるんだ。

勇者

こうやって口の中で転がしておけば唾液が出てくるから、ある程度はのどの渇きがまぎれるぞ。

へー、そんな用途があったんですね。

じゃなくて、水とかはないんですか!

勇者

そんなのオレたちだってとっくになくなってるよ。

うぅ…そんなぁ。

勇者

だから石ころ舐めとけ。

飴みたいに言わないでください!

ああ、水が飲みたい。(コロコロ)

贅沢な姫は誰一人文句を言わず歩いてる中、グチグチと文句を言った。

普通、石を舐めるより水を飲みたいと思うでしょう!

私はなにも知らない。

魔法使い

姫、のど渇いたの?

はい、そうですけど。

魔法使い

じゃあ、これをどうぞ。

また変な薬を飲ませようとしてるんじゃないですか!

魔法使いの好意的な言葉も、裏を考えて否定する冷酷な姫は、魔法使いの差し出したビンを押し返した。

前のことを考えれば当たり前の行動でしょう!

私はなにも知らない。

魔法使い

大丈夫、大丈夫。前のとは違って副作用はないから。

ほんとですか?

魔法使い

それに、これを飲めば目的地を決められると思うから一石二鳥。

……。

わかりました。

魔法使い

じゃあ、はいどうぞ。

渡されたビンを姫は酒をあおるように飲み干した。

ん?

~~~~~~~っ!!!!

からっ!辛いです!なんですかこれ!

魔法使い

副作用はないけど味が最悪になってるんだよ。

飲む前に言ってください!

うううううう、辛いです…辛いです…。

勇者

魔法使い、この薬の効果はなんだ?

魔法使い

ああ、これはねー

魔法使い

姫、ちょっと目を閉じてみて。

うううう…え?は、はい、わかりました。

こうですか?

魔法使い

そうそう、なんか感じない?

とっても口の中が辛いです…あれ?

なんか感じます。これは…気配?

近くに4つの気配を感じますね。

魔法使い

ぱんぱかぱーん。だーいせーこー!

万歳しながら回り始める魔法使い。

勇者

どういうことだ?

魔法使い

これは人知の薬。人の気配を敏感に感じ取れるようになるんだよ。

魔法使い

さっき言った4つって言うのはあたしたちの気配だね。

勇者

なるほどな。でも、これでどうやって目的地決めるんだ?

魔法使い

姫、遠くのほうは気配はない?

えーっと…あ、あります。

9、10…結構感じますね。村かなんかでしょうか。

魔法使い

てこと。

勇者

やるなあ、魔法使い!

勇者

姫、それはどっちの方角だ?

あっちですね。

勇者

ん?山がある方か。

騎士

……。

勇者

悪かったよ騎士。睨まないでくれ。

勇者

よーし、じゃあとりあえずそっちの方角に進むぞ。

剣闘士

…おらあ!

勇者

いつまでダウジングしてるんだ…行くぞ。

魔法使い様はすごいですね。こんなにいろいろな薬が作れて。

魔法使い

そうでもないよ。全部何かしら副作用みたいなのがでちゃうからね。

魔法使い

その度に姫に迷惑をかけると思うと心が痛むからねー。

なんで私が飲むことが前提になってるんですか!

魔法使い

ところで姫、口の中はどう?

え?口の中ですか?

辛いのはだいぶ収まりました。まだちょっとありますけど。

なんでそんなこと聞くんですか?

魔法使い

いや、そろそろかな、と思って。

え?何がですか?

あれ?なんか口の中が…。

にがっ!苦いです!なんですかこれ!

魔法使い

味が最悪だって言ったでしょー。

魔法使い

飲んだ直後は強烈な辛さが口中いっぱいに広がり、治まったころにほのかな苦みが口の辛さを紛らわしてくれるんだよ。

なんで少しおいしそうに表現するんですか!

ほのかななんてものじゃないですよ…。こんなに苦いもの初めてですよ。

魔法使いが姫の初めてをもらった瞬間だった。

変な言い方しないでください!

ううう…口の中がひどいことに…

勇者

この草でも噛むか?少しは苦みがまぎれるぞ。

ぜっっったいに!嫌です!!

姫が初めて役立ち、目的地も決まったところで勇者たち一行の旅は続くのだった。

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