狼の助言を受け、無事に森を抜けた勇者たち一行は一つの村に到着した。

勇者

なんというか、ずいぶん荒れてるな。

私がこの村が見えていた時はこんなになっていなかったんですが。

魔法使い

これじゃあ宿とかに泊まるのは無理そうだね。

勇者

今までもずっと野宿だっただろ。かろうじて屋根がある家もあるから、そこを使わせてもらおう。

剣闘士

メシだ!飯がなきゃ寝れねえ!

今夜の宿も決まり、食材探しに散り散りに分かれていった。

しかし、いったい何があったんでしょう。

食材探しを真剣にしていない姫は、ぶつぶつと独り言を呟きながら廃墟となった家々を見回している。

真面目にやってます!

私はなにも知らない。

騎士

……魔物。

え?

ふと見ると、廃墟の付近で瓦礫を調べている騎士がいた。

魔物とはどういう意味ですか?

騎士

……魔物が村を襲った。

この村を!?

少し考えればたどり着きそうな答えに大げさに驚く姫。

ほんとに知らなかったんですよ!

私もなにも知らない。

それじゃあ、生存者の捜索とかはしなくていいんですか?

騎士

……難しい。

難しい?

勇者

ここまでひどいと見つけられても救助が難しい。人手も治療のための道具も少ない。

話を聞いていたらしき勇者が現れて追加で説明をした。

なるほど。

騎士

……残党処理が優先。

まだこの村に魔物がいるんですか?

騎士

……可能性は高い。

勇者

よし、じゃあ飯と一緒に魔物も探すか。

そんなものついでにしないでください!

騎士

……了解。

勇者の命を受け、騎士は食材と魔物の捜索を始めた。

あ、待ってください。私も行きます。

騎士

……。

……。

気まずいです…。

あ、あの騎士様はどうして勇者様と旅を?

騎士

……。

ご、ごめんなさい、あまり聞かないほうがいい話題でしたか。

騎士

……平和。

え?

騎士

……勇者が俺が世界を平和にすると言った。

騎士

……だから私も平和のために剣をとった。

勇者様らしいですね。

騎士

……。

騎士

……!

騎士は何かの気配を察し、剣を手に取る。

すると遠くから足音と叫び声が聞こえてきた。

剣闘士

おらー!待てー!

剣闘士様の声!

騎士

……。

足音は次第に大きくなり、その主が騎士と姫の前に姿を現した。

ぎゃあああああああああああああ!!!!!

剣闘士

おお、姫に騎士。

剣闘士

見てくれ!でっけえ走るキノコを見つけたんだ!こいつは食べ応えがあるぞ!

どう見ても魔物じゃないですか!そんなもの食べようとしないでください!

騎士

……魔物は倒す。

剣闘士

おっしゃー騎士!一発で決めるぞ!

騎士の素早い斬撃、剣闘士の強力な斬撃が当たり、魔物は切り刻まれた。

す、すごい…。

剣闘士

おしゃー!勝ったー!

騎士

……。

子供のような姫の感想を背に、二人は剣を収めた。

勇者

おいおい、なんかすごい音が聞こえたんだが。

魔法使い

うわっ、気持ち悪い魔物。

戦闘の音を聞いて勇者と魔法使いも集まった。

剣闘士

勇者に魔法使いも!夕飯確保したぜ!

勇者

残念だが魔物は食べられない。魔力を有しているから人間が食べるとまずいんだ。

剣闘士

まずくても食えりゃいい!

勇者

いや、味のまずいじゃなくて…

魔法使い

魔力を人間が摂取すると体が動かなくなるとか、魔物になるとかいろいろ言われているんだよ。

魔法使い

まだ確かなことはわかってないけど、いいことが起こらないことは間違いないと思うよ。

剣闘士

なんだよー。頑張り損かよー。

勇者

それに死んだ魔物は、時間がたてば魔力が霧散して消えるからな。仮に食えてもたぶん腹に入った気もしないだろ。

……。

勇者

どうした姫?

いえ…初めて皆さんが勇者たちらしいなと思っただけです。

勇者

何言ってんだよ、初めからそうだろ。

そうですね。

今まであまり目立たなかった二人の戦闘を目の前にし、嫉妬のあまり苦し紛れの反抗心を出そうとする姫である。

そんなつもりじゃありません!

勇者

とりあえず、あっちでキノコをいくつかとってきたから焼いて食うか。

魔法使い

え、キノコ?

勇者

嫌いか?

いえ、普通さっきのを見た後に勧んで食べたいものではないかと…。

剣闘士

わたしは大歓迎だ!

騎士

……私も。

魔法使い

仕方ないから食べるよ…。

剣闘士

姫の分はわたしが食べてやるからな!

私も食べます!

かくして、初めての魔物との戦闘も無事勝利し、姫の役立たずさにも磨きがかかりながら、勇者たち一行の旅は続くのであった。

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