ミヤ

下まで来たはいいけれど……
滝沢 多岐が来ないわね。

ミヤ

まだかかってるのかしら、
それとも……

タキ

お、遅かったじゃねえか。

ミヤ

タキ

体育館とプールの方も見てきたぞ。
なんか体育館の方だけ赤いのが
ぐにゃって……

タキ

って、お前だったのかよ。
あそこでコケてインク触ったろ、
よく見たら服にちょっとついてる。

ミヤ

いえ……どうやら、インクが
乾ききる前にあの上へ寝かされたようなの。
文字は読めなくなるし、災難だわ……

ミヤ

ともかくも、まずはお疲れ様。
仕事が早いのね。

タキ

はは、そんなことねえよ。
足はええだけが取り柄だなっていつも
言われてばっかだわ。

タキ

写真は結構撮ってきだし、どっかで見っか。
ケーブルとPCは職員室だよな?

ミヤ

ええ、おそらく。
そういうことには詳しくないから、
あなたにお任せするわ。

タキ

今時高校入って携帯も満足に
扱えないとか、この先苦労するぜ?
今のうち慣れとかないとー。

ミヤ

そう言うなら、あなたが
教えてくれたらいいわ。

タキ

ち、しょうがねえな……

ミヤ

ふふ、ありがとう。
じゃあ、職員室に行きましょう。

タキ

で、これをセットして……と。

タキ

ほら、これで大きく映る。
遠くから写したのもあるから、どんな
感じかよくわかるだろ?

ミヤ

へ、へえ……
すごいのねえ……

タキ

すごいっつうか、これが普通なんだよ。
どんだけこん中にいたんだよお前。

ミヤ

さあ……忘れてしまったわ。
でも、あなたが来るたびに
外はどんどん時が流れて、
取り残されているというのは
わかるわね。

ミヤ

変よね、同じ今日のはずなのに。

タキ

……もしかしたらさ、お前
勘違いしてんじゃねえの?

ミヤ

勘違い?

タキ

そうだよ。
なんつーかさ、上手く言えないけど……
ループしてるんだったら、外の
時間が進むのはおかしいじゃねえか。

タキ

毎日来るはずのあたしが、お前の
話だと全然違う奴みたいなのも
おかしい。

タキ

そもそも、繰り返してるんだったら
時間が巻き戻るんだから新しい謎なんか
置かれようもないし、来るあたしは
一緒のはずだろ。

ミヤ

そう言われてみればそうね……

タキ

これはさ、ひょっとしたらよ、
ループじゃなくて……平行世界って
やつなんじゃないか?

タキ

学校だけがこう、あってさ。
隔離されてて、ここに色んな世界の
あたしらが集められる。

タキ

だから性格も生き方も違うあたしらなんだ。
世界もそれぞれ、技術が発展してたり
してなかったりする。

ミヤ

そういう考えはとても
しっくりくるわね……

タキ

最初っから決めつけるから
分かんなくなんだよ。
だからさ、今までのこと全部
おさらいしようぜ。

タキ

はじめに、あたしは2024年から来た。
携帯にもそう表示されてる。

2024年
6月10日(月)
10:02

ミヤ

2024年……

ミヤ

……私は、2012年の高宮 雅よ。

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