この電話、だれのなんだって聞いてみたんだけど、お答えできませんって。どこで買ったのかを調べてみても、途中で情報が追えなくなってる。

相手はよっぽど俺に知られたくないみたいなんだよね。なんでだろう

 やるなあアイリーと思いつつ、俺は肩をすくめる。

品評会の開催サイドにも訊いてみたんだ。

秘密だってよ……自分で言うのもなんだけど、この俺が聞いてみて、それでも秘密ってことは、かなり上層部も絡んできてる。

超秘密事項ってことだ。

俺は、そうなると燃えてくるタイプだからな。こそこそ嗅ぎ回るのはやめた

 ロジャーは言って、にやりと笑った。

物理的、古典的方法であいつを探す。

こいつがぴったりはまるやつが、俺の探しているやつだ。

どう?

案外、一番の近道かもね

 だよな、とロジャーは白い歯を見せる。

そうときまれば、さっそく行くわ。

マキトもついてくるか?

うん、もちろん。どこから探すんだ?

手当たり次第だと厳しいからな……とりあえず、品評会関係者をあたってみるか

 いい線いってる、ロジャー!
 もしかしたらあっさりと解決するかもしれないと思い、俺の気持ちは軽くなった。

 が、しかし、そんなに簡単にはいかないのが現実だった。

いや、これ現実かどうかわからないゲームの世界なんだけれど、とにかく、うまくいかないからこそ、現実であり、ゲームなのだろう。



 簡単に言うと、アイリーさんが部屋から頑なに出てこない。

 何人もの女性関係者を調べたが、もちろん適応者はいなかった。

 その途中でアイリーの部屋にも寄ったが、疲れきってしまって出たくないと、門前払いされてしまった。

 少しだけだからとロジャーが頼んだが、いやだいやだの一点張りだ。

アイリーなんじゃねえの?

 昼御飯を食べるために部屋に戻り、スープを飲みながら、ロジャーが半ばなげやりに言った。

 唐突な正解発言に、思わず俺はむせる。

なんであいつ出てこないんだよ。そんなに俺に会いたくねえのかな。むかつく……って、むせまくりだな、大丈夫かよ

大丈夫大丈夫……

 ああ、そういうことか。俺は口のはしをぬぐいながら、本当に疲れてるんじゃないかな、と言ってみる。

そうかもな……でも、でてきてくれるだけでいいのに

体調悪いんだろ。げっそりしている状態で、顔を合わせるのがはずかしいのかもよ

け、そういう仲でも……ねえのかどうかはわかんねえけど、なんかむかつく

 いらいらとしているロジャーは、はあ、とためいきをついた。

……ごめんな。どうもアイリーのことになると……なあ、ばかなこと言っていいか?

 返事の代わりに、俺は肩をすくめてみせる。その反応が気に入ったのか、ロジャーははは、と小さく笑って、それより小さな声で、ぽつりと言った。

お前のこと呼んだ理由、俺、結婚しろとか言われて、まずは友達がほしいって親にごねた話、しただろ? 

でも、実はさ、結婚したい相手はいるんだ……小さい頃から、なんでかわかんねえけど、わりと本気で、結婚するならアイリーがいいなって、俺思ったんだよ。

でも、親父が結婚をすすめてくるんなら、一緒に大企業のお姫様みたいな女の子がついてくると思って……おまえ、むせすぎだぞ、大丈夫かよ?

 げほげほ。そりゃあむせるだろう。俺はうなずきながらも、なかなか止まらないむせと戦っていた。

 いやだって、とんでもないこと言うんだもん、この王子様。

2 赤色の君は未来の英雄(16)

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