久米瑠子(くめるこ)

あわー!

うわっ、なにしてんの!

久米瑠子(くめるこ)

ごめんなしゃいごめんなさい!

店長

久米さん、ここは僕がやっておくからさがっていいよ

久米瑠子(くめるこ)

すみません…

中村多喜男(なかむらたきお)

あの子、確か注文の時の子だ

中村多喜男(なかむらたきお)

ほんとにそそっかしい子なんだな

中村多喜男(なかむらたきお)

あれ?こっちにくる

久米瑠子(くめるこ)

はぁ…

中村多喜男(なかむらたきお)

なんで僕の前で止まったんだ?

久米瑠子(くめるこ)

なんで私はこんなに何もできないんでしょう

中村多喜男(なかむらたきお)

独り言を言っているのか?

久米瑠子(くめるこ)

洗い物すればお皿を割って、料理をすれば炭ができて、料理を運べばぶちまけて、掃除をすれば床が水浸し

中村多喜男(なかむらたきお)

いくらなんでもそれはひどいような…

久米瑠子(くめるこ)

この仕事、もうやめたほうがいいのかな

久米瑠子(くめるこ)

ううん、店長だってこんな私をいまだに雇ってくれてるんだ

久米瑠子(くめるこ)

ちゃんとお仕事できるよう頑張るぞ!

久米瑠子(くめるこ)

よーし!お客様には笑顔で対応!……あれ?

中村多喜男(なかむらたきお)

……

久米瑠子(くめるこ)

………

久米瑠子(くめるこ)

……

久米瑠子(くめるこ)

久米瑠子(くめるこ)

ううわわわああああああああ

中村多喜男(なかむらたきお)

ええ!?どうして泣くんですか!?

久米瑠子(くめるこ)

しゅみません!すみません

久米瑠子(くめるこ)

お客様の目の前でぐちぐちと言い訳をするなんて店員としてあるまじき所業です

久米瑠子(くめるこ)

まことに申し訳ありましぇんでした!せんでした!

中村多喜男(なかむらたきお)

落ち着いてください

久米瑠子(くめるこ)

あわわわわわ、今度こそクビだ、この件で私はこのお店やめるんだあ

中村多喜男(なかむらたきお)

落ち着いてって

久米瑠子(くめるこ)

は、はい!

中村多喜男(なかむらたきお)

そんなに慌てないでください

中村多喜男(なかむらたきお)

お店に報告するつもりはないですし、ぼく自身も別に嫌な気分になったりしてませんから

久米瑠子(くめるこ)

やっぱり全部聞かれていたんですね

中村多喜男(なかむらたきお)

目の前でしたからね

久米瑠子(くめるこ)

ううぅ

中村多喜男(なかむらたきお)

でも、別にそこまで悲観的になることないと思いますよ

久米瑠子(くめるこ)

え?

中村多喜男(なかむらたきお)

ほら、見てみてください

あのおねえちゃんドジだけどかわいかったね

そうね、びっくりしたけどちょっと和んだわね

久米瑠子(くめるこ)

……

中村多喜男(なかむらたきお)

あんな風に思ってくれてる人もいるんです

中村多喜男(なかむらたきお)

あなたの頑張りを見てくれてる人だってちゃんといるんですから、そんなに落ち込まないでください。

久米瑠子(くめるこ)

……

久米瑠子(くめるこ)

うううぅ

中村多喜男(なかむらたきお)

なんでまた泣くんですか!?

久米瑠子(くめるこ)

取り乱してしまいすみません

中村多喜男(なかむらたきお)

いえ、大丈夫ですよ

久米瑠子(くめるこ)

あんなこと言われたのは初めてだったもので、つい感極まって…

久米瑠子(くめるこ)

うう

中村多喜男(なかむらたきお)

だから泣かないでくださいって

久米瑠子(くめるこ)

ごめんなさい

中村多喜男(なかむらたきお)

もっと気楽にやっていいんじゃないですか?

久米瑠子(くめるこ)

え?

中村多喜男(なかむらたきお)

もちろん、失敗しないようにするのは大事ですけど。
それでも気を張りすぎてもうまくいきませんからね。

中村多喜男(なかむらたきお)

もっと気楽に笑顔でやればいいじゃないですか

久米瑠子(くめるこ)

……

久米瑠子(くめるこ)

はい!そうですね!

工藤玲(くどうれい)

おかえりなさい

工藤玲(くどうれい)

ずいぶん遅かったのね

中村多喜男(なかむらたきお)

すみません

高橋るい(たかはしるい)

どうしたの、そんな顔して

中村多喜男(なかむらたきお)

え?

高橋るい(たかはしるい)

なんかいいことしたなーって顔してるから

中村多喜男(なかむらたきお)

ははは、どうなんでしょうね

工藤玲(くどうれい)

そろそろ出ましょうか

高橋るい(たかはしるい)

そうね

久米瑠子(くめるこ)

お会計×××円になりましゅ…なります

久米瑠子(くめるこ)

ありがとうございました、またおこしください

中村多喜男(なかむらたきお)

ん?

久米瑠子(くめるこ)

またおこしください

中村多喜男(なかむらたきお)

中村多喜男(なかむらたきお)

……

中村多喜男(なかむらたきお)

またきます

工藤玲(くどうれい)

それじゃ、多喜男君
今日はありがとね

中村多喜男(なかむらたきお)

はい、こちらこそありがとうございました

高橋るい(たかはしるい)

中村君

中村多喜男(なかむらたきお)

はい?

高橋るい(たかはしるい)

一応、私の番号とアドレスも教えておくわね
ここであったのも何かの縁かもしれないし

中村多喜男(なかむらたきお)

あ、ありがとうございます

高橋るい(たかはしるい)

それじゃあね

中村多喜男(なかむらたきお)

今日はいろんなことがあったな…

中村多喜男(なかむらたきお)

工藤さんに高橋さん、それにあの店員さん

中村多喜男(なかむらたきお)

あの変な子もいたな

中村多喜男(なかむらたきお)

しかしこれだけいろんな人に会うって言うのはもしかしてほんとに…

女神ちゃん

そう!モテ期の時間がきてるのです!

中村多喜男(なかむらたきお)

……

女神ちゃん

またリアクション低いですねぇ

女神ちゃん

いつもみたいに

女神ちゃん

どおおおええええええ!どうしてここにかわいい女神ちゃんがあああああ!

女神ちゃん

くらいしてくれないと張り合いがないです

中村多喜男(なかむらたきお)

一回もそんなこと言ったことないよ

中村多喜男(なかむらたきお)

あと勝手に人の家に入ってこないでよ

女神ちゃん

まあ細かいことはさておき

中村多喜男(なかむらたきお)

もういいや

女神ちゃん

ようやく自覚しましたね、お兄さん

中村多喜男(なかむらたきお)

さすがに一日にこれだけの人に会うのはおかしいよ。なんかしたの?

女神ちゃん

私はなんにもしてません

女神ちゃん

お兄さんからあふれ出るモテモテフェロモンで、道行く女性は街頭に集まる蛾のように吸い寄せられるのです

中村多喜男(なかむらたきお)

たとえがひどすぎる…

女神ちゃん

ともかく出会いは成功しました。次は親睦を深めていくべきです

女神ちゃん

いくらモテ期と言えど、一日二日で人を恋に落とせるようなものではありません

女神ちゃん

地道な交流が大きな恋を結ぶのです

女神ちゃん

幸い、社畜二人は連絡先がわかってますし、メイドはお店に行けば会えますしね

中村多喜男(なかむらたきお)

OLさんと店員さんだけどね

中村多喜男(なかむらたきお)

なんで君はそんなにたとえが悪いの

女神ちゃん

女神ちゃんです

中村多喜男(なかむらたきお)

え?

女神ちゃん

君ではなく女神ちゃんとお呼びください

中村多喜男(なかむらたきお)

……女神ちゃんさん

女神ちゃん

殴りますよ?

中村多喜男(なかむらたきお)

……女神ちゃん

女神ちゃん

声が小さい!

中村多喜男(なかむらたきお)

ああもう!女神ちゃん!

女神ちゃん

よろしいです

女神ちゃん

これからもあなたの恋を助けるため十全を尽くします

女神ちゃん

というわけで、しばらくここに住まわせてもらうのでこれからよろしくお願いします

中村多喜男(なかむらたきお)

ええええええええ!

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