お泊りも終わり、日常生活に戻った私。龍川さんは学校では相変わらずのお嬢様ぶり。どうしたらあそこまで徹底していられるんだろうか……不思議な物だなぁ。

そして週末。お父さんとお母さんが久しぶりに家に居る。

いやー実夏が友達作るなんていうもんだからビックリしちゃってさぁ。ついつい有給とっちゃったよ。

私もよ。どうしよ、どうしよってその日は仕事がはかどらなかったわぁ。

…おい、待ちなさい。
嫌な予感がする。

あのさ、なんて言って休みを取ったのよ。

恐る恐る聞く私。

娘に初めて友達ができたので絶対にお祝いするのです!それで有給使ってなにが悪いのですか!!

娘に初めて友達ができたから絶対にお祝いするんだ!それで休んで何が悪い!!

聞いた直後にテーブルに額をゴンッって打ち付けるほど脱力する私。もう少し、社会人らしい言い訳とかないのかな。

そ、それはあまりにも…

と咎めようとしたら遮られ

お父さんの会社にな……

『うちの奥さんが捨て猫を拾ったので早退します』

なんていう奴が居るくらいだから大丈夫だって。

そんな奴いるのか?

それ……

作者の事です!

そうそう、だって私たちはね、有給を使った事が皆無なのよ?これくらいはバチが当たらないわ。

そうだそうだ!!母さんも父さんもこの十数年は有給取ってないんだから問題無い!いや、誰にも文句は言わせない!!

ケロッとしながら答える両親。

そ、そういうものかね。

私はこれ以上聞くまいと思った。

さーて、久々に一家団欒プラス実夏ちゃんの”祝・初めてのお友達”パーティにしましょ。お母さん頑張るからね。

あ、俺も手伝うよ。主役を待たせちゃいかないし、その”お友達”の話をお母さんと一緒に聞きたいじゃないか。

あら、お父さん。気が利くわね。フフ。それじゃあ、お願いしようかしら。

この馬鹿親達には勝てない……

もう、どうにでもして。

私はリビングでテレビを見ながら待ち、宴が準備ができるのを待つことにした。

久々に親子3人で囲む食卓。

今日は本当に特別の日だからね。明日から父さん達はまた仕事に戻るから。

そうね、久々の親子水入らずでの食事もいいわね。

確かに……何年振りだろう。

うん、ま、まあ……そうだね。

何か、緊張するなぁ。

そう言えば、例の”お・と・も・だ・ち”を教えて欲しいわね。

そうだそうだ、父さんも聞きたいぞ。

こんな両親だったかなぁ。

慣れない空気に戸惑いながらも龍川さんのことを話し始めた。

そうか、同じクラスの子なんだな。

良かったわね。お話しするのも楽しみなんじゃないの?

い、いや…学校ではお話しないんだけれどね。

と、心に思いながらも話を続けた。

彼女、秋葉原に住んでいるんだけれどね。まさか雑居ビルに住んでいるとは思わなかったんだ。なんでもお爺さんがその下でお店もやっているみたいでね。

と話した途端

……

微妙に空気が変わるのを見逃さなかった。両親の動きが僅かに止まる瞬間。そして表情も笑っていても目が笑っていない瞬間。

……そうか、なかなか変わった所に住んでいるんだな。

そうね……でも面白い子じゃない。

……

この後をどう切り返せばよいのかが解らずに戸惑う私。なんだろう、今の二人の様子は。今までに感じたことが無い…

まっ、何にせよ実夏ちゃんの始めての友達のお祝いさ。

そうよ。母さん達、とても嬉しいんだからね。

すでに元の様子に戻っていた。まあ、いいか。

そうそう。今日はいっぱい喋っていっぱい一緒に過ごそうね。

私は先ほどの事を忘れようとするかのように気丈に振舞った。






夜遅くまで親子3人の楽しい会話は続いた。









夜遅く。私はまだ眠れないでいた。今日の日記をPCに綴っている。

久々に父さんと母さんと一緒に居られて楽しかった~

楽しかった余韻はまだ心を震わせていた。

ふと、あの時の両親の曇った表情を思い出した。

しかし、なんで急にあんな表情になったんだろう

龍川さんのことを喋っているときにふいに見せた両親の表情。

気になる…とっても気になるんだけれどなぁ

しばらく考えたけれど時間ばかり過ぎていく。

まあ、いっか。また今度にでも聞いてみよっと

気持ちを切り替えて日記の続きを書いていく。すると



 ♪ホンワカパンパン
    ホンワカパンパーン♪


このメール着信音は…龍川さんだ。メールを開いて見る。

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From:怜子
To:実夏ちゃん

やっほー!ご両親と楽しめた?
明日は学校終わったらうちに来ない?
また色々とお話しよっ!
んじゃねー
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まさかサーバーマニアな達川さんが学校ではお嬢様のフリをしているだなんて…誰も知るわけ無いか

と思うと顔が引きつってくる。

明日か。またお泊りできるかどうかお母さんに聞かないとね。

と、ぼんやり考えながら壁時計に目をやると

あ、もうこんな時間なの?急いで日記書いて寝なくちゃ!

今日のことを思い出し。一気に日記を書き上げた。

書けた書けた!暗号化して保存っと。

さーて、明日のために寝て起きますか。











照明を落としてベッドに横たわる。

明日の朝まではお母さん達いるよね?

今日の余韻を残しつつ眠りに入っていく。













さらに夜遅く。

ダイニングテーブルで実夏の両親が座っていた。

まさか、あの子に友達ができるなんてね。驚き。

そうだな、子供とはいえ成長しているもんだな。

ごく普通の会話に聞こえる。

でも……まさかあの龍川さんのところとは…ね。

これも何かの運命とでもいうんだろうか。

あの子は何も知らない。そう、何も。

俺達だけが忘れなければよかったと思ったのにな。

なにか感慨深げに会話をしている。

あの子、あれを知ったら…私たちの…

そんなことは無いさ……どんな事があったにしても俺達の子さ。

そうね。

母親は涙がこぼれている。父親は何か遠くを見つめながら話している。

どんな事だろうと私たちが育てた子だ。今までどおりで居てくれると俺は信じるよ。

でも……不安ね。私たちの仕事も知らないわけだし、龍川さんのほうからいずれわかってくるんじゃないかしら。

その時はその時…さ。

そう…ね…

信じよう、私たちの娘なんだから。

この後も二人は娘の昔話に花を咲かせていた。
















明るい日差しがカーテンの隙間から差し込む。

ん?眩しいなぁ。朝……あさぁ……

……

お母さんとお父さんが出て行く前にお泊りのこと聞かなきゃ!

慌てて起きてリビングへと向かう。

時既に遅し。二人はすでに会社に向かったようだ。

うちの両親は何時に寝て、何時に起きているんだ?

ダイニングテーブルのほうに目をやると朝食と置手紙があった。

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実夏ちゃんへ

仕事に行きます。朝食食べてね。

あと、連絡は以下の時間でよろしく。

Tel:12:00~13:00
19:00~21:00

Mail:9:00~21:00

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どこのサポセンだよ!!

と突っ込むが肝心なことを直接聞けないことに落胆する。

まあ、あとで電話して聞いてみよっと

自室に戻って着替えることにした。

今日は確か体育があるんだよなぁ。面倒だなぁ

外出しないインドア系女子としてはダルいだけなんだよね。

着替え終えて、ダイニングにて朝食をとる。

放課後は龍川さんところかぁ。一旦、家に帰ってからお泊りセット持って行こうっと!

朝食を終え、学校へ行く支度をし、学校に向かった。

F-3 うちの両親は色々とオカシイ

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