秋葉原!!

そこは私が外出するときに向かう場所でありあらゆる物がほとんど手に入る。といった印象を持った街。

いつも行くお店はPCパーツやらジャンクを扱っているお店やら、電子部品を取り扱っているお店がほとんど。

いわゆる2次元やら同人とかは興味が無いので全く寄らない。

地図を見ると結構馴染みのお店が載っているなぁ。

で、目的地は…

あれ?これ何かの間違いだよね。だって思いっきり雑居ビルだよ、ここ。

うん、雑居ビルだ。

ここの最上階ということは、たしかその下の階は良く行くお店なんだよね。

レアなPCパーツを取り扱っているからね。

まあ、ここで考えても仕方が無いので目的地に向かうとしますか。

ここを曲がった先には確かツクモンがあって、そこを真っ直ぐいくとあきばふぉーがあるんだよね~

いよっ!!実夏ちゃん。今日は制服でお買い物なの!

あ、「あきばふぉー」の遠藤さんだ……

……。(ぺこり)

相変わらず無口だねぇ~。あとでうちにも寄ってよ!コアなマザボが入ったからさ!

(ぺこり)

無理に笑顔で会釈だけして目的地にと進めていく。

春月電気を通り過ぎて、このビルだ。









……

……

ここ、だよね?

目的地のビルに到着。真っ先にエレベーターに入り、最上階のボタンを押したら

きゃっ!!

??なに、これ…??

しばらくしてスピーカーからトタトタという音が聞こえたと思ったら

は~い、龍川で~す!

あれ?龍川さん?

こんな口調でしたっけ?

あ、あの…


といっている途中で

あ!八箇さんね!今開けるから!

って遮られた途端、エレベーターのドアが閉まった。

そしてエレベーターは上へ上へと上がっていく。

最上階まで上がると

きゃっ!

と、またインターフォンが鳴り扉が開いた。

……

音、でかいよ。

エレベーターから出てきなよ~

5秒で扉が閉まっちゃうからね~

やばっ!!

と慌てて大人しくエレベーターから出た。エレベーターのほうに振り向いたと同時にドアが閉まり、勢い良く1階にまで下りていった。

フロア内の様子はというと、普通の人が見たら引くような風景であろうが、私から見たら好奇心でいっぱいになるような光景であった。

山済みになっているPC、4×4で構成された16台のモニター、ラックに設置されている無数のブレードサーバー。

~♪

興奮して思わずクルリンと回転してしまった。それを目の前で見ていたようで龍川さんは

いらっしゃ~い!どう?家の家?

うわ……見られていたか……

え??あの…これが家なのですか?


答えに悩んでいたが横に置いてあるブレードサーバ群のラックを見て

え、え、えーと…立派なお家ですね。

と答えてしまった。いやいやまてまて。


何を言っているんだ私は。

しかしPCとモニターだらけの部屋を見る限り、乙女の部屋とはとても思えない。

それに龍川さんのジャージ姿とは……
イメージとかけ離れているなぁ。

てっきりお屋敷みたいなところが自宅かと思ったのだけれど……

ちょっと変わったところでしょ。驚いた?

ちょっとどころではないんだが。普通、サーバーだらけの場所に人が住んでいるとは思わないよ。

あ、あの。普通とはかけ離れて、いると思いますが……私は好きです。

だからさっきから何を言っているんだ私。

そう!嬉しいよ。やったー!

とその場でピョンピョン跳ねる龍川さん。

か、可愛い……。

八箇さんならわかってくれるかなーって思ったんだよねー

はい?どうして私のことを?

あの、なんで私を呼んだのですか?

あー、もう、タメ語でいいってば。あのね、昨日このIPアドレスにアクセスしてない?

と彼女が指さした先にあるモニターに映し出された数字の羅列を見た。

その瞬間にゾクッと寒気がした。

確かにアクセスした。というより中のデータが見たくてこじ開けようとして断念したIPアドレスだよ。

図星……みたいね。それ、うちのサーバー。厳重だから入れなかったでしょ?

いやいやいや、なんでそれだけで私が特定できているの?

必死にアクセスしてくるもんだから逆を辿って調べたの。

えっ?

もしやと思ったけれど八箇さんだったとはね。

そこまでする?普通。しないってば。

誰も知らない私を見られた!!

八箇さん、ハッカーだったんだ。意外、意外。

いや、あの、そうじゃなくて…

大丈夫だって。この界隈では八箇さんのこと、有名だからすぐにわかったんだよ。

あ、そうか。

ここに住んでいるということは秋葉原ではかなり色々な人と通じているということですか。

あきばふぉーの遠藤ちゃんからさっきメール来たからね。

あのおじさん店員
スパイかよ!!

立ち話もなんだから奥に入ろう。座って話せるし。

あ…そうらね。


もう日本語すらまともに喋れないほど驚きいっぱいの私の手を引っ張り奥に案内した。

ここまでに20分くらいの時間が経過していた。











奥に案内されると普通の女の子のへやである。

ピンクのカーテンに白を基調としたベッド。パステル調のクッションにちょっと濃い木目調の机と椅子。

雑居ビルにこんなの入れて住んでいいのだろうか?

疑問に思う私に関係なく彼女は話しかけてきた。

奥は普通なんだよ。そりゃ、私だって女の子だもん。

ほぉ~!

……てっきり機械に囲まれて事務用ソファーで寝ているとでも思った。

そんなことないよ~。

アレを見た後でのこの普通な部屋は無いわ~

かわいい部屋だね♪

あはは。そうだよね。こんな部屋が奥にあるなんて誰も思わないだろうからね。

龍川さんってお嬢様じゃなかったの?

ん、ああ、あれね。普段はそうしなさいって爺ちゃんが言うもんだからさ。演技よ、演技。

演技って…思いっきりギャップがあるんですけれど。

まあ、そうだよね。私は幼少の頃からこういう生活だったからさ。

え?そうなの?

うん、爺ちゃんと二人暮らしって爺ちゃんはお店で寝泊りしているんだけれどね。

そうなんだ。

八箇さんは?

私も、幼少の頃からかな。でも、龍川さんみたいにここまではできないけれどね。

だいぶ普通に喋れるようになってきたね。

??!本当だ。ありえない。

ありえないなんてことはありえないんだよ。

プッ、それってなんかの漫画の台詞みたいだよ。

なにおー!











……気が付いたら意気投合していた。お互いに知識と経験をぶつけ合って色々なことを話していた。気が付いたら外は暗くなっている。

お家の人とか心配しないの?

うん、家は共働きで帰ってくるのは週末ぐらいだからね。

じゃあさ!今日はうちに泊まっていかない?もっとお喋りしようよ!

ええ?い、い、い、いいの?

そりゃ驚くよ。いきなり話しかけられて、お家に呼ばれて、お泊りになるなんて…

構わんよ~。泊まっていきなって。


悩んだ私は泊まることに決めて、お母さんに電話することにした。

プルルル…プル…

もしもし?実夏?どうしたの?

あ、あのね。落ち着いて聞いてね。今日はね。友達のところでお泊りすることになったから…

ブフッ!!

直後にブッと吹いたような音とガッシャーンという椅子が倒れる音。

もしもし?お母さん?も…

実夏!冗談言っちゃ駄目だよ。お母さん、寿命が縮んじゃうじゃないの。クスクス。

ありゃ、信じないよなぁ。

生まれてからこの年までこんな言葉使ったことないし、お母さんも聞いたこと無いだろうからな。

すると隣で様子を見ていた龍川さんが

もしもーし、友達の龍川怜子といいまーす!

と電話越しの母さんに大きな声で言った。それを聞いた母さんは

嘘…本当に…実夏に友達だばんで…

驚き直後に涙ぐみながら喋るお母さん。

はーい、お泊り許してもらえますでしょぉか!

あ、あのね。おかあさん。そういうことなんで、そこんところよろしく。

しばらくの沈黙の後

いいわよ。たっぷりと楽しんでいきなさい。迷惑を掛けないようにね。

と答えるお母さん。……と思ったら

お父さんにも連絡しないと…週末はパーティだからね。よかったらお友達も呼びなさいね。いいわね。

ちょ、大げさなお母さん!おか

ブツッ  ツーツー

おい、母。何を大げさにしとるんじゃい。娘が女友達の家に泊まるだけのことで。

よかったねー!

と能天気に話す龍川さん。

家に帰ったら……どうなるんだ。

とにかくお母さんから外泊の許可を貰ったことで龍川さん家(?)に泊めてもらうことになったわけだ。

初めての友達でしかもお泊りだなんて……

と感慨深げにしていると

ところで、”お友達”って言ってましたが、いつからだっけ?

と聞いてきた。

え?友達じゃないの?

と青ざめる私。それを満足げに見た龍川さんが

ふふっ。さっき私だって”お友達”っていったじゃん。ちゃんと聞いてた?

い、意地悪ぅ…。私を苛めて楽しいのかっ!

ごめん、ごめん。私も”友達”としては初めてだからつい、ね?

”友達”として?どういう意味なのだろうか?

…まあ、友達ができたんだからいいか。

せっかくだからうちの子供たちを紹介していこうじゃないか。

子供達?

あ、だから、サーバーとかPCとか。

え…あ、ああ。うん!見る見る!






まずはうちの自慢のブレードサーバーだね。

しゅ、しゅごーい!

…発言がなんかアレなんですが…

あ、ついつい一人で居るときの癖が…あは。

可愛げがあるじゃないか、このこの。






と、夜遅くまでマニアックな宴が続いたのでした。




















朝。窓からさす光がピンク色のカーテンを通して顔にあたる。それに気が付き私は目が覚めた。

ううーんっ……ひゃれ?うちじゃない?

見慣れぬ景色。……じゃないよ、龍川さん家(?)だった。あれからパジャマを借りてシャワーを浴びてベッドで寝たんだっけ。

とりあえず着替えてサーバールームに向かう。

おはよーっ!眠れたかな?朝食できているよっ


この家(?)は…給湯室でご飯を作るし、2つあるトイレを1つ潰してシャワールームに改造するところが大胆だよ。しかも朝食はトーストにベーコンエッグでサラダ付き。本当にここで暮らしているんだなぁ。

……デスクトップPCの上に朝食が置かれている。

あ、そこに椅子があるから座って食べてね。


よくよく見たらマウスパットがランチョンマットですか…つくづく代用品がPC関係…

でさ、私は先に学校に向かうからね。後から出て大丈夫だから。

え?だって鍵とかは?

大丈夫!この家はエレベーターのコマンド入力しないと入れないから!じゃあ、学校でね!!

どこの秘密基地かよっ!!

とツッコミたいのを我慢して龍川さんを見送り、黙々と支度をした。

……忘れ物が無いようにしないと。

F-2 「灯台下暗し」とはこの事かよ

facebook twitter
pagetop