神は、いる。


エルフの中でも数多の神が存在した。



























ある者たちは自然を神とした。


森羅万象とはまさに神等万象であり、自然が全てを生み出してきたと考えた。


この者たちは自然を愛し、他の種族が「エルフは自然を愛する」とのイメージを持つようになったきっかけになっているとも言われている。







またある者たちは、森羅万象を生み出したさらに上位の存在がいるとした。


森羅万象が無から生まれるはずがない。


遠いどこかから来た"有"が無の中で数々の"有"を作っていき、気の遠くなるような時間を経て、自分たちという存在が生まれた……




その、原初たる有こそが神だ、と。























詮無きことを言えば、


前者には「自然は神であるからして少しも傷つけるべきではない」という派閥、「自然は神であり、身を削り民を護る者であるから傷つけても享受すべき」という派閥があったり、


後者には「原初の有は光である」という派閥、「いや無を覆っていたのは闇である。闇が働きかけて無を変容させた」という派閥があったりした。


もちろん、これら以外に神を定めたものもいる。




要はどの説にも何一つ根拠はなく、信じているものこそがそれぞれの神という、よくある話だった。


























……




神はいるだろうなというくらいは、エルフーー黒井も何となく信じている。


だから、

アー、オ時間、イイデショカ




明らかに"宣教師"然とした、その突然の訪問客が来た時も宗教勧誘だと一発で分かった。





あ、ハイ




どうせ暇なので、ちょっとは話を聞こうと思った黒井の存在は、宣教師にとっては運が良かったのかもしれない。




だが一方で不運なことに、宣教師はそこまで日本語がうまくなかった。


だから、黒井には次の言葉はそうとしか聞こえなかった。







アナタハ、

カニヲ、シンジマスカ







蟹を。

これは斬新な宗教

イエス、カニデス

……あー

信じるわ

スバラシイ

デハ、カニノ素晴ラシイ話ヲ少シオ聞キクダサイ

漁法かしら……

カニハ、ソノ手デ、迷エル人々ヲ救イマス

待って

違うと思うわ

ホワッツ?

きっと手じゃなくて足だと思うの

足?

コレハ斬新ナ発想……

アー、モシカシタラ

足デモ救ワレルカモシレマセン

そう、八つの足で

待ッテ

違ウト思イマス

うち二つはハサミ

怖イ!

そう、その足を人々がもぎ取って食べる事で

空腹が満たされるのが救いだと思うの

OH! MY GOOOOOOD!

デビルノ思想!

ワタシ、帰リマス!カニノ救イ、アナタ受ケラレナイ!







バタン!!







……




さようなら、カニ教……















閉められたドアにカギをかけ、




のろのろとノートPCの前に戻って





黒井は先ほどまで見ていたスレッドを更新した。







……

きたーーーーー!!!神!!神降臨!!!























神は、いる。


エルフの中でも数多の神が存在した。



それは信じているものが神になるというフレキシブルなもので、





今日のこのエルフーー黒井にとってはお目当ての絵を出してきた>>765こそが神であった。




信じている、その先はきっと希望

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