ソファーの上で横になり、テレビを見ながらポテチをむさぼる男。
この男こそが魔王である。
あーテレビおもしれ
ポテチうま
ソファーの上で横になり、テレビを見ながらポテチをむさぼる男。
この男こそが魔王である。
あーうるせ
ちょっとくらい無視してもいいよな
魔王はチャイムを無視し、テレビのバラエティー番組を見続けていたのだが、三分ほどしたところで魔王の部屋の扉が勢いよく開かれる。
ちょっと魔王様!
勇者来てますよ、持ち場に着いてください!
あ、やっぱ行かなきゃダメ?
ダメですよ! 死にますよ!
仕方ねえなあ
よっこらしょっと
魔王はかっこいいマントを羽織ると、大魔王の間へと向かう。
ハハハハハ! 勇者よ、よくぞここまでたどり着いた!
お前が魔王……なんと禍々しい気だ!
勇者よ、お前が望むのであれば我の部下にしてやってもよいぞ?
俺は勇者だ! 悪は絶対に許さない!
仲間になんてなるものか!
そうか……ならば死ね!
魔王、覚悟しろ!
うおおおおおおおお!
ぐ、我の負けか
だがしかし、世に人がいる限り、魔王は何度でもよみがえるであろう……
そのことを忘れるな……がくっ
やったぜ!
はーいありがとうございましたー
こちらが魔王討伐認定証となります
光の神殿にいる係の者に見せると記念品がもらえますので、そちらもどうぞ
これで俺も魔王を倒した勇者だぜ!
いえーい!
勇者はスキップしながら帰路についた。
なあ
なんでしょう?
どうしてこんなことになってしまったんだろうか……
どうしてでしょうねぇ……
魔王討伐。勇者ランドで10年間売上トップを誇る大人気アトラクションだ。
人気の秘訣はそのこだわり。
魔王の城から魔王にいたるまで、なんと本物!
君も魔王を倒して勇者になろう!
それは今から遡ること20年前のこと。
魔王、覚悟しろ!
フハハハハ! 我は最強の魔王なり!
貴様ら人間のようなゴミには負けぬわ!
死ねい!
ぐわああああああああああああ!
勇者は消し炭となった。
ふっ造作もない
グハハハハ!
さっすが魔王様! 世界最強!
当然のことよ! 我こそが最強!
フハハハハハハハハ!
当時、魔王はそのあまりの強さから自分が世界最強であると微塵も疑わなかった。
最強の我に敵う奴などいない、そう思い調子に乗っていた。
ぐはははは
魔王様、どうやら人間が城の外をうろうろしているようですよ
どうしますか?
なーに、この最強の魔王様がいる城の観光にでも来たのだろう
勝手にさせておけ!
ゴミどももようやく魔王様の素晴らしさがわかったようですね
ふふふ
ははははは!
~数日後~
どうやらあの人間、まだお城の観光をしているようですよ
よほど気に入った様子
そこまで気に入ったなら城で飼ってやろうか!
ふはは!
その時だった。魔王の城が光を放つ!
な、なんだ?
魔王様の新たなるお力では?
なるほど!
そのまま城は光に包まれ、魔王の視界が晴れると、目の前には一人の男がたたずんでいた。
よう魔王、元気してるか?
俺は勇者だ
おや、あなたはこのところ熱心にお城を見ていた方ではありませんか
勇者? そうか、ついには勇者も我にひれ伏すか
お前ら……まさか俺が何をしていたのか気付いてなかったのか
俺は陣を書いていたのだ
今日よりお前らは俺のものだ
何を戯言を……死ね!
魔王は魔弾を放つが、勇者はそれを避けようともせず、涼しい顔でそれを受けた。
調子に乗ってると殺すぞ
勇者が魔王をにらみつけると、魔王は呼吸が出来なくなる。
ぐっ……なんだ! 貴様なにをした!
だから城の周りに魔法陣を書き、大魔法を発動させたのだ
俺に逆らえば死ぬ
以上だ
き、さま……ぐ、が……
魔王様!
し、したがう……従う、から……
よろしい
勇者がそう言うと、魔王は呼吸が出来るようになる。
さて、俺は金が好きだ
今日からこの辺一帯をテーマパークとする
もちろん作業するのはこの城のゴミどもだ
これが見取り図だ、では頼んだぞ
なっ、貴様……
わかったな?
勇者は魔王をにらみつけた。すると魔王の口が勝手に動き出す。
わかりました、勇者様!
よろしい
勇者は去った。
魔王様、何故あのようなことを……
我が言ったのではない、言わされたのだ……
く、くそ、やるしかないのか
身体が勝手に
あ、あれあれ
私の身体も勝手に
そして現在へ……。
あーテレビおもしろ
ポテチおいし
ま、また? 今日もう100回目だよ!?
魔王様! 勇者来ましたよ!
今行く!
魔王はマントを羽織り駆け出す。
本当に、どうしてこんなことになってしまったのか……
あの勇者、いつか絶対殺す……
魔王さまー
あーはいはい、わかってるって!
魔王のお仕事は今日も終わらない。