妖精は心の綺麗な人間にしか見ることが出来ないぞ!
私の名前はフェリア
唯一無二の妖精さん!
今日はここ、カリメア大陸のワオイア王国にあるお城に遊びに来ています!
妖精は心の綺麗な人間にしか見ることが出来ないぞ!
おや? あそこにいるのは……
はぁ~あ お城の警備は暇だぜ
どうも退屈そうですね
一体どうしたのでしょうか
ほんと毎日暇で暇で仕方がないぜ
なんかおこらねえもんかなあ
どうやら暇を潰したいようですね
ここは優しい妖精さんの私が助けて差し上げましょう
そこで使うのがこれ、妖精マジック!
妖精マジックは地獄の魔王様も裸足で逃げ出す超地獄マジック!
異世界にだって飛べちゃうんだから!
妖精はこの魔法でこちらの世界に遊びに来たぞ!
妖精マジック発動!
この子は私のペットのケロちゃん
体長8メートルのちょっぴり大きな子なんだ
私の言うことなら何でも聞くように調教してあるよ!
ケロちゃん、今日は好きに暴れていいよ~
な、なんだこいつは!
俺が暇だって言ったからなのか?
暇とは言ったがこんな化け物はいらねえよ!
う、うわ こっちに来るな!
来るなあああああああああ!
人助けは気持ちがいいね!
兵士さんのお悩みは解決できたのでもうちょっと奥に行ってみましょう!
ここは王様のお部屋だね
今日はなんだか騒がしいみたい
た、大変です!
そのように慌てて、一体どうしたというのだ
城内に、三つの頭を持つ巨大な犬らしき化け物が!
一時避難を!
な、なんだと? 見張りはどうしておったのだ
それが、どうやら突然現れたらしく……
とにかく今はここで話している場合ではございません
王の身に何かあっては……
どこかに行くみたいですね
ついていってみましょう!
王様は秘密の抜け道を使い、避難するぞ!
その化け物は討伐できそうなのか?
ええ、我が騎士団は精鋭揃いですので
しかし一体どうしてあんな魔獣が……
もしかすると最近復活した魔王の仕業かもしれぬな
復活はしたものの、おとなしいからと様子見しておったが、いきなり我が首を狙ってくるとは……
あの魔獣を処理し次第、討伐隊を結成いたしましょう
いや……勇者を呼ぶ
ゆ、勇者! あの伝説の!
ああ、この抜け道の先の神殿は、本来は勇者を召喚するためのものなのだ
あの建物がそのようなものだったとは……
王様は抜け道を出て教会にたどり着くぞ!
魔法陣だぞ!
では早速始める
団長よ、剣を貸せ
ご命令とあらば……しかし一体何を?
なに、少々私の血が必要なだけだ
刃物を持ち合わせておらんかったのでな
王様が魔法陣に血を垂らし、呪文を唱えると魔法陣が光るぞ!
おおっ、これが
頼むぞ……
一方その頃、TOKYOシティにあるAKIBAでは
でゅふふ、今日も良い同人誌が手に入ったでござる
早く家に帰るでござる
おやおや? そこにいるのは山田殿ではありませぬか!
おお! 斉藤殿、奇遇ですな!
お主は今日もエロゲーですかな?
ぬほほ、よくわかっておりますのう
今日買ったのはこれ、『オタクの俺が召喚勇者2 ~異世界らぶらぶハーレム~』でござるよ!
あの『オタクの俺が召喚勇者 ~姫も魔王も俺の嫁~』の続編でござる!
今日が発売日でござったか
感想よろしく頼むでござるよ
全く、山田殿は堅実派ですなあ
発売日にプレーし、掲示板で語り合うのもいいものでござるよ
でゅふふ、こればかりは性格ですからな
その時、山田と斉藤の足元から光が溢れる!
な、なんですかなこれは!
これはまさかあああああああああ
異世界召喚の光だああああああああああ
なんですと! 我々が主人公ですかな!
異世界の美少女が待っているでござるよおおおおおおおおおおおお
そしてキモオタたちは地球から消えた。
ここは……やはり異世界召喚!
つまり拙者たちが主人公でござるな! 主人公は主人公らしくいかなくては!
なるほど! さすが斉藤殿でござるな!
こ、ここは一体……?
僕はどうしてこんなところに
な、なんだぁ?
一体なにが起こったってんだ?
お、おお! 来てくれたか、異世界の勇者よ!
こ、こんなのが勇者なのか
勇者? 僕が?
僕は日本に住む普通の男子高校生ですよ!
勇者だぁ? ゲームじゃあるまいしよぉ
一体女の子はどこでござるか?
おかしいでござるな
こういう召喚の儀式には姫がいるのが定番中の定番
まあ、すぐに理解してもらえるとは思っていないが、君たちは紛れもなく、神に選ばれた勇者なのだ
私の頼みを聞いてはくれぬか
君たちの力が必要なのだ
そ、そこまで頼まれては引き受けないわけにはいかないですね
なんだかよくわからないが、俺の力が必要なら貸してやるぜ
おお! やはりそなたたちこそ勇者よ!
その後化け物はなんとかなったと連絡が入り、お城に戻った!
ケロちゃんはお家に戻しておきました!
さて、勇者よ
頼みというのは他でもない、魔王を倒してほしいのだ
魔王! やはりテンプレですな
そして魔王が女の子なのもテンプレ
しかし困りましたなあ
拙者たちは二人、魔王が一人では……
たしかに……
おや、困っているようですね
どうやら魔王が一人では物足りないご様子
実際はどうなのでしょうか? 確かめに行ってみましょう
そこで使うのがこれ、妖精アイ!
妖精アイは地獄の千里眼おじいさんも裸足で逃げ出す超地獄千里眼!
どんなに遠くのものでも見通せちゃうんだから!
妖精アイ発動!
ふはははは! 我こそは魔王!
力を溜めていたがそろそろよかろう!
人間どもを根絶やしにしてやる!
ふーむ、魔王は女の子ではないし、二人でもないようですね
しかしこれではつまらないですね
そこで使うのがこれ、妖精クリエイト!
妖精クリエイトは地獄の粘土も裸足で逃げ出す超地獄創造!
世界だって作り出せちゃうんだから!
妖精クリエイト発動!
ふはははは!
ふはははは!
ふはは……な、なんだ?
我が増えたぞ!
一体どういう……まあよいではないか!
魔王が二人でパワーも二倍! 最強が更に最強となったのだ!
それもそうだな!
ぬははは……ん?
なんだこれは!
さすがに意味がわからんぞ!
もしや神の仕業か?
やってくれるな……
我が分裂したことに焦ったか
どうやら力は落ちていないようだし、これが精一杯の抵抗のようだな
ならば多少の容姿の変化は問題なかろう!
ぬはははは!
さて、これであのクズどもも満足できるようになりましたね
しかしこのままではクズどもにはわかりません
そこで使うのがこれ、妖精テレパシー!
妖精テレパシーは地獄のさとりも裸足で逃げ出す超地獄以心伝心!
言葉を伝えるどころか相手を操ることだって出来ちゃうんだから!
妖精テレパシー発動!
ぐ、がが……
王よ、どうかなされましたか
んーごほんごほん
えー我は魔王なり
我は二人いるし女の子だ
なっ! 魔王だと!
さ、斉藤どの、聞こえたでござるか?
それはもうはっきりと、女の子で、しかも二人いると聞こえたでござるよ
ずいぶんと都合の良い展開ですなあ
さすが主人公! これが主人公補正!
勇者どもよ、かかってくるがいい
ふはははは!
ぐ……私はいったい?
王よ、お体に異常はありませんか
魔王の乗っ取られていたようです
な、なんと!
魔王め……許さん!
団長よ、勇者たちを聖剣の間へと案内せよ
はっ
勇者たちは騎士団長に連れられて聖剣の間へとやってきたぞ!
勇者殿よ、こちらが聖剣です
け、剣? 僕一度も剣なんて持ったことないよ
さすがの俺も真剣を見るのは始めてだぜ
その点はご安心を
聖剣には神の加護がかかっており、持てばたちまちどんな魔物もひと振りで倒せる、と伝説には記されております。
そうなんですか? でも、それなら団長さんが……
私もそうしたいのですが、あの剣は勇者殿にしか抜けず、力も勇者殿しか使うことができないのです
そうなのか
じゃあ早速抜いてみようぜ
ふんぬっ
抜けませんね
あ、あれ? 斉藤殿、頼むでござるよ
では失礼して……ふんっ!
あれ? ふんっ! ふんぬううううぅぅぅ!
その、二人で抜いてみては?
おお! それでござる!
山田殿、いくでござるよ!
これで抜けたらそれはそれで困りそうな……
剣を使うときは、常に二人で持たないといけないとかいうことになりそうでござるな……
せいっ
ふんっ
抜けませんね
どうしたのでしょうか?
本人に直接聞いてみましょうか
妖精テレパシー発動!
嫌です……嫌です……
一体どうしたというのですか
早く抜かれなさい
私が楽しくありませんよ
あのような邪な気持ちを持った者に使われるなど……死んでも嫌です……
そうか、死んでも嫌か
はい、わかってくれますか、見知らぬ妖精さんよ……
死んでも嫌ならここで死ぬがよい
妖精アーム発動! 妖精ぱんち!
ぶべらっ
ふんぬらぁ!
よいしょぉっ!
妖精さんが天使をのして主導権を奪ったことで聖剣が抜けたぞ!
勇者よ、聞こえますか
私は剣に宿る天使です
世界を救うのです……
こいつ……直接脳内に!
というわけですのでさっそく魔王のところへ行きましょう
え?
妖精マジック発動!
えっ……どこですかなここは!
なにやら禍々しい雰囲気が……
な、なんだお前らは!
いきなり現れおって!
うおおおおおおお幼女おおおおおおおおお
ぶひいいいいいいいいいいい
この魔王に向かってその態度!
今なら謝れば許してやろう
私は寛大な精神を持っている
魔王! 二人いるしやはりそうでござったか!
我々は勇者! お前をちょっと痛めつけてお持ち帰りして姫ももらう!
勇者だと!
ぐふふ、痛い目合いたくなかったら早く負けを認めた方がいいでござるよ
我々にはこの聖剣があるのですからな
そ、それは一千年前我を打ち破った勇者が持っていた聖剣……
くっ、だが我は諦めんぞ! 二度も負けてたまるものか!
一方その頃
ここは妖精さんのお家
ケロちゃーん
ご飯の時間だよー
今日は働いてくれたからいつもよりいいものだよ!
よーしいいこいいこ
あ、あの、ここはどこでしょうか?
何故私は首輪をされ繋がれているのでしょうか?
天使ちゃんにもご飯あげるからねー
いいこいいこー
妖精さんは飽きたので自宅に戻ってくつろいでいるのでした
そして聖剣がからっぽで、最早何の力もないことに気付いていない勇者たちは
なーに、聖剣があれば楽勝でござる!
いくでござるよ! 山田殿!
でゅふふ!
うおおおおおおお! ふたりは!
おおおおおおおおおお! プ○○○○!
負けてなるものかあああああ!
うおおおおおおおおおおおお
二人の勇者の勇気が世界を救うと信じて!
ご愛読ありがとうございました
※世界は魔王のものになりました