謎の影

ここに隠して……

執事

そこにどなたかいらっしゃるのですかな?

謎の影

!!

謎の影は逃げ出した。

執事

ふーむ……ほう、これは!

迷探偵サヨリ 第一話

ようかんの謎

サヨリ

私の名前はサヨリ・メイトンス
稀代の美少女名探偵!
今日はマダムオバチャーンの館にてパーティーがあるとのことで、向かっています

ガード

そこの者、止まりなさい

サヨリ

どうやら誰かが警備員に呼び止められているようですね

ガード

おい、お前だお前

ガードはサヨリの肩をがっしりと掴んできます。

サヨリ

なんですか?

ガード

招待状がなければ、いかなる者も通さない決まりになっている
諦めて帰るんだな

サヨリ

これは困りました
私はマダムオバチャーンに招待されていないのです
しかし今日、この館で事件が起こるにおいがプンプンする!
どうにかできないものか……

サヨリは辺りを歩き回りつつ、考えます。

サヨリ

仕方ありません、忍び込みましょう
探偵はどんな場所にも現れるものです

サヨリ・メイトンスは稀代の名探偵であるのと同時に潜入捜査の達人でもあるのだ!
王様のお城にだって忍び込めちゃうぞ!

サヨリ

さて、ここがパーティー会場ですね
事件はまだ起こっていないようです
少し様子を見ましょう

サヨリはパーティー会場を見渡し、そこにいる人を確認していきます。

ロベルト

マダムオバチャーン様、本日はお招きいただきありがとうございます

オバチャーン

ふふふ、楽しんでいってくださいね

マダムオバチャーンと会話するロベルト・ナントーカの姿。

オジチャーン

ふぉっふぉっふぉ、若い子はええのう

メイド

きゃっ!

マダムオバチャーンが見ていないのをいいことに、メイドにセクハラをするムッシュオジチャーン。

ミランダ

執事さんは今日もまた一段とかっこよく……

執事

ほほほ、お上手ですな

執事を狙うミランダ・カントカー。

サヨリ

結構いますね
覚えられるでしょうか
推理パートのときに忘れていると不味い……

メイド

わ、私、お料理持ってきます!

オジチャーン

おや……

オジチャーンのセクハラを我慢できなくなったメイドは、厨房に非難した。

そして事件は起こる……。

メイド

きゃーーーーーーー!

メイドの悲鳴、そしてガラスの割れ、人が倒れる音。

サヨリ

来ましたね! 事件ですよ!

オバチャーン

何事です?

ロベルト

なにやら悲鳴のようなものが聞こえたが……

執事

確認してき

サヨリ

確認しに行きましょう!
行きましょう!

ミランダ

この方は誰でしょうか……

サヨリの強引な押しにより、全員で厨房に確認に行く事に。

サヨリ

さて、ここが事件現場ですか
先ほどのメイドさんはどこでしょうか

メイド

ううぅ……

メイドは倒れ伏し、頭から血を流していました。

執事

これはいけません
早く医務室に運びませんと

メイド

ううっ……ようかん……

そう言うメイドの手には羊羹の空箱が。

オジチャーン

ようかんがどうしたというのだ?

メイド

私の羊羹……後で食べようと思って昨日隠した高級羊羹……ない、ない……

メイドはすぐさま医務室へと運ばれていった。

ロベルト

羊羹がいったいどういう……?

サヨリ

どうやらメイドさんが後で食べようと思っていた高級羊羹が、誰かに盗まれたようですね

サヨリ

これは事件ですよ!

ロベルト

なんというか、思いのほかしょぼいな

執事

そういえば昨晩、厨房で不審な影を見かけたような……

サヨリ

なるほど、犯人は昨晩この館に忍び込み、メイドの高級羊羹を狙ったわけですね

ミランダ

わざわざ忍び込んだわりに、やることはしょうもないわね

オバチャーン

ともかく、館に誰かが忍び込み盗みを働いたのは間違いないわけか

オジチャーン

わしの館で盗みを働くとは許せんのう

サヨリ

さて……私の推理が正しければ、犯人はこの中にいます!

ロベルト

な、なんだと?

ミランダ

私たちの中に、わざわざメイドの羊羹を盗む卑しい者がいると?

オジチャーン

そ、それで犯人はいったい誰なんじゃ

サヨリ

その犯人とは……あなたです!

サヨリが指を指した先にいたその人物、それは……。

執事

わ、私ですか?

サヨリ

ええ、執事さん、貴方が犯人です

サヨリ

貴方は昨晩不審な影を見た、と言いましたね?

執事

ええ、ですから昨晩誰かが忍び込んだのでは、と

サヨリ

その不審な影というのはメイドのことでしょう
先ほどのメイドは医務室に運ばれる前、「昨日隠した」と言っていました。

執事

そういえば、線が細く、女性のように見えましたな……

サヨリ

そして執事さん、貴方は不審な影が何をしていたのか気になった、当然ですね
その影がいた方へと向かうと、戸棚か何かがあり、貴方はそれを開けた

執事

うっ……

サヨリ

そしてそこに入っていたのが高級羊羹!
貴方は我慢できずに食べてしまった! そうでしょう、執事さん!

執事

く……、ち、違う! 私じゃない!

ロベルト

なんだ、ずいぶんとうろたえているな
あからさまに怪しいぞ

執事

く、ううううぅ……私です、私が食べました……しかし……

オジチャーン

お主、何故隠そうとしたのじゃ!

オバチャーン

まさか、我が家の執事がメイドの個人的な嗜好品を盗むような、卑しい者だったとは

サヨリ

さて、それでは私は失礼します

ミランダ

ま、待ってください!
あなたのお名前を!

サヨリ

私はサヨリ・メイトンス
稀代の美少女名探偵です!
ではさらば!

執事

違う! 私は一切れだけで!
あとは残しておいたのです! 信じてください!

そんな執事の叫び声を背に、サヨリ・メイトンスは去っていった。正門から出ると捕まるので、知り尽くした隠し通路を使って……。

サヨリ

執事さんは一切れしか食べていないと主張していました
私の推理によると、それは正しいです
では、残りはいったい誰が食べたのでしょうか?

サヨリ

数日前、マダムオバチャーンの館でパーティーがあると知った私は、侵入経路を調べつくしました
そして前日、リハーサルを兼ねて忍び込んだその先で見たもの……執事さんが羊羹をおいしそうに食べる姿でした

サヨリ

しばらく見ていると、執事さんは高級羊羹を戸棚に戻し、私に気付くことなく去っていった
さて、残りの羊羹を食べたのはいったい誰なのか……

サヨリ

私です!
私は執事さんがおいしそうに食べている姿を見て、高級羊羹の味を推理しました!
そしてその推理結果が正しいか確かめるため、食したのです!

サヨリ

羊羹は推理通りとてもおいしかった!
私の手が止まらなくなるほどのものでした!
あれは悪魔の食べ物、執事さんと私は耐性を持っていたため、助かったのです
メイドさんが食べていたら、ひとたまりもなかったことでしょう

サヨリ

私は一人の人間を助けたのです
それは誇れることではありませんか
私が高級羊羹を盗んだことも、これでちゃらになるはずです

サヨリ

そう、世界は優しさで出来ているのですから……

終わり

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