白い女。

 衝撃のダーツスキルを持つ女子、玻璃さん。

 水晶から飛び出てきた義理の妹、縫姫ちゃん。

ケンスケ

 玻璃さんを噂の白い女と結びつけるのは少し強引な気がするが、しかし縫姫ちゃんと白い女なら、かなりしっくりくる組み合わせではないだろうか

ケンスケ

 なんといっても水晶から飛び出してくるくらいのファンタスティック幼女である。その正体が幽霊だとか妖怪でも納得してしまうだろう

 ……ならば、あの時……トラックに轢かれそうになったときに聞こえた声は縫姫ちゃんのものだったのか……?

ケンスケ

 ……そんな気もするし、そうでもない気もする

 いずれにしても、学校から帰宅したら本人に確認してみよう。

 まずはそれからだろう。

 放課後である。
 

美香

 ケン君、帰ろー!

 席を立ったところで、美香に呼びかけられたので振り向く。

玻璃

 香田君、帰ろ

 玻璃さんが居た。

ケンスケ

 あれ……!? デジャヴ……!?

 僕は一瞬戸惑ったが、すぐに後ろから美香が現れる。

美香

 にゃははー。
 玻璃ちゃんの家、途中まで私たちと同じ方向だから、一緒に帰れるんだよー

ケンスケ

 そうなんだ。
 部活見学は昨日だけで終わったのか?

美香

 んー、私はやっぱりパソコン部かなー

ケンスケ

 家でも学校でも引きこもりなのかよ。
 運動系とか入らないのか?

美香

 適材適所ってあるじゃんねー。
 普段から運動しない人が運動部に入ってどうすんの

ケンスケ

 一理あるな

美香

 まぁ、ケン君の収まるべき場所っていうのは、たぶんこの世に無いんだろうけどね

ケンスケ

 僕にはどこにも適所が無いのか……

 社会不適合者扱いだった。

ケンスケ

 ……適所がどうとかはともかく、僕はやっぱり部活は入らないだろうなぁ

美香

 やっぱり、家事が大変?

ケンスケ

 まぁね。
 姉ちゃんも、やってはくれるけど、基本は僕だしね

玻璃

 ……?
 香田君の両親って、夜遅くまで働いてるの?

ケンスケ

 あぁいや……僕は姉ちゃんと二人暮らしなんだよ

 縫姫ちゃんのことは伏せておいた。
 
 当然、美香にも話していない。

 少なくとも、縫姫ちゃんの正体がハッキリするまでは隠しておくのがベストだろう。

玻璃

 ……そうなんだ

 玻璃さんは僕の家族構成について追及しようとはしなかった。

 まぁ、僕は聞かれてもあまり気にしない性質だが、やはり触れ辛い内容なのだろう。

玻璃

 私はひとり暮らし。
 家事は全部やってる。
 だから私も、帰宅部になると思う

ケンスケ

 うぅむ、玻璃さんが家事か……

 家事といえば、縫姫ちゃんの朝食は普通に美味しかった。

 当たり前のように作っていたが、もしかして家事全般をやってくれるのだろうか。

ケンスケ

 ……あれ?
 もしかして僕の家事比率が大きく減るってこと……!?

 そんなことを思っていると、美香が何やら玻璃さんを見つめているのに気が付く。

美香

 玻璃ちゃん、ひとり暮らしなの……!?

玻璃

 うん、そう

美香

 それなら、お泊まり会……したい放題……!?

玻璃

 大丈夫だけど……美香ちゃん、なんだかテンション高くない?

 いつも無表情の玻璃さんだが、若干興奮気味の美香に何だか気圧されているように見えた。

 男性向けゲームのやり過ぎなのか知らないが、美香は女性にも興味がある。
 ということを、玻璃さんはまだ知らないらしい。

ケンスケ

 百合っていいよね!

 ……いやいや、そんなことを考えている場合ではなかった。

 早く自宅に戻り、縫姫ちゃんの正体を突き止めねば。

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