まあ入れや、と言われたので入ったが、一歩踏み入れてから、俺はどうすればいいのかわからなくなって、銅像のようにそこに突っ立っていた。
今思えば、なんて楽なんだ学園生活。目の前のロジャーとか言う人はとても偉い人のようだし、下手に動けない。
ロジャーは、全身真っ赤なスーツを着ていた。今にも、戦闘に出掛けますと言えそうな格好だ。
黒髪はつやつやと輝き、茶色の目は爛々と輝いている。
まあ入れや、と言われたので入ったが、一歩踏み入れてから、俺はどうすればいいのかわからなくなって、銅像のようにそこに突っ立っていた。
今思えば、なんて楽なんだ学園生活。目の前のロジャーとか言う人はとても偉い人のようだし、下手に動けない。
ロジャーは、全身真っ赤なスーツを着ていた。今にも、戦闘に出掛けますと言えそうな格好だ。
黒髪はつやつやと輝き、茶色の目は爛々と輝いている。
突然呼んで悪かったな
突然呼ばれたのか、と思いつつ、いえ、と短い返事をする。
適当に座っていいぜ。あと、俺とお前は友達みたいな関係。
アイリーは様とかつけてたみたいだけど、そういうのいらねえからな。
敬語もいらね、堅苦しいったーらありゃしねえ
……わかった
お望み通り敬語をはずしたのだが、この対応に、なぜかロジャーが驚いている。立ち上がり、にやりと楽しそうに微笑んだ。
気に入った。本当にそうやって接してくれるの、ありがたいぜ
……それは何より、だ
ロジャーが歩み寄ってきて、拳を出してきた。これは、叩けと言うことだろうか。
自分の拳をこつんと当てると、無邪気に彼は、サイコーだと笑うのだった。
ロジャーの部屋のソファに腰掛け、なんの味かはよく分からないけれど、とにかく美味しいジュースをいただく。
ロジャーはサンザシのすがたは見えていないようで、隣でサンザシがいいなあいいなあとわめいている。
なあ、お前何て言われてここに来たの? 俺のおもり?
ストローでジュースを吸いながら、ロジャーが訊ねる。
早速困った質問だ。うーんと悩んだ末、ここは正直に言うことにした。
よくわかってない。君の客人として招かれた、それだけしか知らない。
正直、君の立場とかもよく知らない……おれ、遠くから来て、情報に疎いから
かかか、とロジャーは天をあおぎ、そういやロジャーって呼んでくれよと少し不満そうにいった。
ロジャー、と俺が復唱すると、満足そうに頷く。
簡単に言うと、俺はシーリウシー社のどら息子。シーリウシーは、まさか知らないなんてことはないよな?
知らねえ知らねえ!
皆様が着ている機械スーツを作っている大手の会社です
サンザシの瞬時のサポートにほっとしながら、スーツの、と俺がいうと、そうそうとロジャーは満足そうにうなずいた。
そんでさ、まあ今まで自由に奔放に、好きかってやってきたわけ。
でも、俺こう見えて成績優秀知識豊富で、すぐにでもあとを継げるわけよ。
まあそこらへんはさ、俺もけじめつけなきゃって思って頑張ってたし
ちゃらちゃらしているように見えるが、根は真面目な青年のようだ。
ふんふんと聞いていると、ロジャーはさらりと、とんでもないことを言ってきた。
んでさ、いざ継ごうと思ったらよ、親父がね、やれ結婚しろってうるさいわけ。
親父頭固いからさ、家庭内に支えがなくちゃって、まじで何百年前の人だっての、なあ
あ、そっち? このメカメカした状況で、メインテーマはバトルとかじゃなくて恋愛事?
……どしたの?
あ、いや、結婚だなんて、すごいなと思って
なになに、マキトは結婚したい人いないの
いない……
俺の返事が気に入ったのか、ロジャーはけらけらと笑っている。
俺もいない! 結婚だなんて、ってかんじなんだよな。
で、俺はとりあえず時間稼ぎのために、まずは友達がほしいよおって親にねだったわけ。
友達がいない訳じゃないけど、なんつーか、この工場の中の人は、俺のことまるで王子さまみたいに扱うんだよね、それが嫌で。
俺のオアシス、みたいな? 友人を求めていたわけよ。
そんで、お前が呼ばれたわけ。
田舎者かな、どんなんかな、って思ってたけど、俺はお前のこと気に入ったよ。
もしよかったら、ここに住んで、俺と一緒にいろいろしようぜ
ここに住んで! 長丁場になるのかもしれないなあと思いつつ、うん、と素直に頷く。
俺も、ロジャーのことが気に入った。分かりやすく単純明快そうで、一緒にいて楽しそうだ。
なかなか楽しいかたですねえ
分かりやすく単純明快そうなサンザシさんが、隣で足をふらふらと揺らしながら、ご機嫌にそう言う。
とりえあえず、聞こえないふり、悪いけど無視。
俺、なにも知らないんだ。常識もない。いろいろ、教えてほしい
先手を打つ俺。ロジャーは、親指をぐいと突き上げた。
それってサイコー。知らないことが多いって、おもしろいことだぜ
うーん、いい奴。つきあげられた親指は、スーツでごつごつしていて、かっこよさに拍車をかけているように思えた。
そこで、ふと思う。
なんでスーツ、着てるんだ?