くるくる回り続けていた俺は、何かに軽くぶつかって跳ね返った。
若干スピードが緩みながら、それでもふわふわくるくるしている。
くるくる回り続けていた俺は、何かに軽くぶつかって跳ね返った。
若干スピードが緩みながら、それでもふわふわくるくるしている。
無重力だ
辺りを見渡そうとも、くるくる回っていてよく分からない。
とりあえず、暗い空間、窓があった、そこに人も見えたし――だめだ、酔うぞ、これ。
と、ここで、二度目の衝撃。今度は先程のものよりもつよく、俺はうえ、と間抜けな声を出してしまう。
大丈夫ですか?
跳ね返って進みそうになったのを、ぐいと引っ張られ、やっとくるくるが停止する。
ぜいぜいと肩を上下させていると、あはは、と後ろから笑い声がした。女性の声だ、はじめてこの世界で聞いた声と同じ。
振り替えると、俺と同じような機械に身を包んだ女性が、にこやかに笑っていた。
重力かかりますよー
その言葉の後、三度目の衝撃。
内蔵からずっしりと重くなる感覚に、軽い吐き気を覚える。
突如無重力状態に放り出されて、すぐに重力状態になって、そりゃ、吐きたくもなるだろう。
運動不足ですね、ぜいぜいしています
……えっと
失礼ですが、お名前をうかがってもよろしいでしょうか。
ふむ。お名前はなんなのでしょうか!
サンザシさん、サンザシさん! あたりを見渡すと、サンザシさんが遠くから走ってきていた。
どうやらセイさんにふっとばされたのは、俺だけではなかったようだ。
マキトです! マキト・キイラ!
サンザシの絶叫。マキト・キイラが今度の名前のようだ。
マキト・キイラ……です
言うと、女性はまあ、と目を丸くした。
俺を離し、深々と頭を下げる。その動作は姫様にも似ていて、軽いデジャヴ感。また救世主とか言われたらどうしよう。
も、もうしわけございませんお客様!
本日いらっしゃるとは伺っていたのですが、到着時間が早まったことは存じ上げませんでした。
ご無礼を、お許しくださいませ!
あ、そんな、大丈夫です
俺もペコペコ。まったく、よく分からない。お客様?
マキト・キイラは、この世界には実在しない人物ですので、今回は人間関係を気にせずに行動できますよ
サンザシが、小さく言って汗をぬぐった。息を整えながら、なるほど、と答えるかわりに小さくうなずく。
すぐにご案内いたしますね。申し遅れました、私、アイリー・ミレと申します。何かございましたら、いつでもお申し付けくださいませ
あ、はい。どうぞよろしく
では、とアイリーは俺を先導し、がしゃがしゃと音を立てながら進んでいく。
うん、えっと、どこに行くのでしょうか。助けてサンザシさーん!
未来的ですねえ、あちこちにボタンがあって、あ、あっちにロボットもいますよ
隣をひょこひょこと歩くサンザシは、周りの景色に気をとられて、サポート役であることなどすっかり忘れてしまっているようだった。
でも、まあ、そういえば前回も、教えてくれることは少なかった。自分の立場を知るのは自分で、ということなのだろう。
サンザシの言う通り、随分と未来的な景色が広がっていた。あちこちで点滅する明かり、自動で動く機械、聞きなれない音。
すれ違う人の服も、ごつごつした機械だったり、ぴたっと身体にくっつくスーツだったり。
なかなかに面白い光景をきょろきょろと見ていると、ある扉の前でアイリーが立ち止まった。
この先が、ロジャー様のお部屋でございます。私はこちらでお待ちしておりますので、どうぞごゆっくり、おくつろぎください
アイリーが軽く会釈をしたあと、扉に手をかざすと、赤い光が扉中を駆け巡った。
魔法みたいだが、これは科学なのだろう。なんてきれいなんだ。
光が駆け巡ったあと、扉はどこかに消えてしまった。
驚いて目を丸くしていると、部屋の奥にいた男性が、俺を見てげらげらと笑った。
びびったか? いい顔してるぜ。まあ、入れや