〜楽しい純文学作品を見つけてみよう! Part3〜

じゃあ、今回は駆け足で行くぞー!

終わり!

早えよ! 駆け足おろか走ってもいねえじゃねえかよ!

テヘペ……

行くぞー!

ガン無視された⁉︎

第七十二回、阪田寛夫『土の器』、日野啓三『あの夕陽』はまとまっているが前者は癌に侵された母親、後者は離婚が原因で別れる男の姿を描いた作品。初心者向きでない!

早速ドロドロですね……

次もだ。林京子の『祭りの場』は長崎原爆の凄まじさを描いた作品だ。この後すぐに受賞する中上健次が『原爆ファシスト』って林京子のことを名指ししたが中上健次だって『部落ファシスト』じゃねーかよ!

まあまあ……

祭りの場は楽しく読むというよりは悲しく噛みしめるように読む。原爆を知りたければ勧める。それ以外は……

次は?

村上龍の『限りなく透明に近いブルー』……これはエロを赤裸々に描いた作品。村上龍特有の感性があるけど、傲慢さもある。今読めといえば胸糞悪いかもしれねえわ

へえ……有名なのに

柴田錬三郎が『なんだあのタイトルは。あんな日本語ねえ』とボロカスにけなしてるけどなwww

じゃあ、次は?

池田満寿夫の『エーゲ海に捧ぐ』、小説作法ぶち壊しで、ラノベとか漫画に近いかもしれないが、内容は妻のヒストリーを延々と聞くという心理戦を描いた話。面白いかとなれば別。同期の三田誠広『僕って何』……こちらは甘ちゃんで夢見がちな学生がセクト……学生闘争に嫌々巻き込まれるという作品。淡い恋、不思議な話、そしてネトウヨなんかの延長線上にいる連中。ある意味、ラノベ的。少し時代遅れを瞑れば、結構楽しいと思うけど

ほー。次は?

次は宮本輝『螢川』美しいけど、楽しさとは少し別。高城修三『榧の木祭り』は民俗学的で奇妙な祭りを描いた作品なのだが……榧木様と呼ばれる不思議な祭りが行われ、その祭りで選ばれると生贄として生き埋めされるって残忍なネタだったような気がする……

うわっ。楢山節考みたい

ふーむ……口減しがモチーフだから……恐怖が見たければいいかもしれないけど……

次は?

第七十九回、高橋揆一郎『伸予』は……中年女と中学生の恋、破滅を描くのだが……メロドラマっぽい味はあるけど、今の人にはなかなか厳しいんじゃねえのかなあ。恋狂いって奴で。同期の高橋三千綱の『九月の空』の方が推せる。こちらは淡白だが一種のラノベ的な香りを感じさせる青春小説だ

どのような……

まあ、一言で言えば剣道好きの高校生が剣道に打ち込みながらも恋や世相に悩んだり、喧嘩したりと……ラノベのミニチュアと見るべきかな

それは楽しそうですね

五月の傾斜、九月の空、二月の行方……まとめて読むとその真価があるんだけどねえ。無論、一編でも面白いんだけど……

次は?

青野聰の『愚者の夜』……これは脂のような不思議な作品で、ネチャネチャと蠢いている、のにちゃんと読ませる作品だな。日本人と外国人が交錯した恋をすると……しかし、官能的なシーンが多いから、変に読むのはNOよ。

官能www

まあ、純文学には官能ネタ多いがね。同期の重兼芳子の『やまあいの煙』は短い作品で火葬場に勤める男の屈折と虚勢と、そして死と性を考えるという作品だけど。しかし、お茶漬けの味ですな。お子様にはわからない

やはり、その辺りが純文学のネックなところですね……

うーむ……そして、次が森禮子『モッキングバードのいる町』……これは外国にいる日本人の望郷や混じり合えない孤独を不思議なタッチで描いたものだが……推すとなると……

次!

声がでかい! 尾辻克彦の『父が消えた』……ああ、これは推せる。父の死を絡めながら、後輩と父の墓場まで旅をするというエッセイ風の作品で。軽妙な会話が繰り広げられていく

尾辻克彦って赤瀬川原平だよね?

せやで。先年死んだ。この人は昭和文学全集にもあるけど、『肌ざわり』って短編と併せて読むと面白い。一種の歌詞を読んでいるみたいだね

へー…歌詞ねえ

次の吉行理恵『小さな貴婦人』は猫好きならば面白いかもしれない。私という夢遊的な女が、猫と遊びながらも、その猫たちの歩んできた道を淡々と描き、我が身も振り返ると……

吉行理恵ってもしや

そう。そのもしや、だ。吉行淳之介の妹だよ

ええ! じゃあ、兄妹で……

そういうことだ。次は加藤幸子の『夢の壁』……中国の引き上げの中で巻き起こる動乱を描くのだが……面白いかどうかは……まとまっているがね。ある人は左翼的と言っていたがすぐさま中国や韓国、さらに在日に持っていくのは愚かであり、それを政治的ビジョンであるなんて抜かすのは戯言もいいところであるよ

まあまあ……

同受賞は唐十郎『佐川君からの手紙』……これは佐川一政という食人事件を起こした男をうまく絡めた作品で芝居調であるよ。僕はお勧めするが、最近の小説と書き方が違うから、ダメな人はダメかもしれない

唐十郎って寺山修司らと並ぶ昭和演劇の大御所じゃん!

せやで。この昭和の終わりは芸術的に有名な人がとった。赤瀬川原平にしろ、唐十郎にしろ……次の笠原淳『杢二の世界』、高樹のぶ子『光抱く友よ』……ふーむ。まとまっている、としか言いようがない。これは純文学的でねえ。好きな人は好きかもしれぬが悪く言えば地味なんだよな

地味も欠点ですね……

次の木崎さと子『青桐』は乳癌を患って死んだ叔母を私が回想をする話だけど、深刻だね……

ふむ……

悪く言うとこの時期の芥川賞及び純文学界は結構不作でね。吉行淳之介とかダブル村上なんか活躍していたとはいえども、林真理子、山口洋子、神吉拓郎、村松友視、青島幸男、向田邦子、志茂田景樹、阿刀田高なんか出した直木賞とは比べものにならぬよ

やはり純文学の運命ですねえ……

次の米谷ふみ子の『過越しの祭』は……これもアメリカに行って結婚した女の苦労を描いた私小説なのだが……ドロドロしているなあ。少し飛んで九十七回受賞者、村田喜代子『鍋の中』は田舎にやってきた親戚の、四人の子供たちの仲とすれ違いを描いたユーモアっぽい作品だけど、楽しさを取るとなると……しかし、このごろは女性で芥川賞が持ったというのは面白いかもね

いつの世も話題性がなければですからね……

ふーむ。その次の池澤夏樹の『スティルライフ』……これは推しましょう

スティルライフ?

単に引くと静物って意味が出るが、ここではstill ではなく、stealの方だと思うな

シュッシュッシュ……

煙出てますぜ!

しばらくお待ちください

それで?

あの…………スティル……即ち、盗むってことだろう。窃盗生活というべきか

なるほど、窃盗生活ですか

普通の言葉になると戻るのな……

それで? 窃盗生活って何よ?

まあ、一言で言えば僕と会社の金を横領した同僚が不思議な同居をして、その横領した金の穴埋めをしようと株やらなんやらと共謀して奔走するという……明るく清潔なユーモアがある作品だな

へえ。それは面白そう

まあー、池澤夏樹は人気あるし、現役だから後になりそうだけど……池澤春菜のオヤジさんで福永武彦の息子だよ

なーるほど。いつもお世話になっております

こらこらこら! 中の人出すな!

池澤春菜大先輩ですもんねえ

まあ、無理もないが……そして同時受賞した三浦清宏の『長男の出家』……これも明るく楽しいな。

タイトルから面白そうですね

一言で言えば、若い長男が志を得て、早くに出家しちゃうという奇抜なネタで。そのドタバタに巻き込まれながらも、愛情や齟齬を持って生きる親や周りの人を淡々と描いた作品で……なかなか捨てがたい味がある

へえ。坊さんになるなんて珍しいよね

ちなみ、この三浦清宏は庄司薫の作品を攻撃したという逸話がある

へー

次が新井満……この人も現役だからなあ。『尋ね人の時間』……感性はなかなかだけど面白さとなるとねえ

新井満は小説より『千の風になって』でしょう? やはり

わたしのぉぉぉお墓のぉぉぉ前でぇぇぇぇぇ

あの……

ななっなかなかなかなか泣かないでででででででで↑↑ Hey you!

ダブステップか馬鹿野郎!

ラッスンゴレ……

バズーカもいらないから。まあ、新井満は……他にもいい作品あるし……

それで、第百回、これで一区切り(芥川賞全集も一度ここで終わっている)出来るかな……李良枝の『由煕』は僕は買わない。これが在日の人とか言う意味でなく、面白さからはかけ離れているからね

ユヒなんて読めないよね

うむ。日本生まれの韓国人が、韓国に行くがその韓国でも様々な歪みがあって両国のアイデンティティーに悩む一人の女の姿を描くのだが……暗いネタやね

まあ、国際問題は……

南木佳士の『ダイヤモンドダスト』は、面白さから言えば少し違うかもしれないが、三浦哲郎のような息をつきたい、綺麗な作品を読みたいと思う時にはいいかもしれない。本当に美しい作品で選考委員の絶賛を得た。一言で言えば、医師と末期癌の外国人の交友を汚く、陰気になりすぎず描いた爽やかでありながら深いコクのある作品だ。南木佳士はうまいのに表舞台にあまり出ないからなあ……

と、まあ、こんなところでしょうか

この時、候補作になった中で一番面白いのは清水邦夫の『月潟鎌を買いに行く旅』って小説。これは淡々としながらも見事な味と、爽やかな感動があるんだけど……入手難がネックなんだよなあ……まあ、後50回あるが、殆どが現役だからなあ。面白い奴だけあげとく。辻原登『村の名前』、多和田葉子『犬婿入り』、奥泉光『石の来歴』、又吉栄喜『豚の報い』、辻仁成『海峡の光』……後は出回ってるからお任せする

テキトーやな

もうヤケクソやねん! じゃあ、次は文学全集攫って、さっさと書評にうつるぞ!

へーい

原稿忙しいです(メタ発言)

純文学のミカタ!! 〜楽しい純文学作品を見つけてみよう!! Part3〜

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