■前回までのあらすじ■
・勇者は死んだ。
■前回までのあらすじ■
・勇者は死んだ。
聞こえますか、勇者よ……
なんだ……
どこからか、声が、聞こえる。
勇者よ……私の声が聞こえますか
どこからだろう。
暖かい声だ。
私の頭に直接、響いているように聞こえる。
聞こえますか……勇者ユリウス……
声は続いた。
勇者よ……聞こえていますか……勇者ユリウス……聞こえますか、私の声が……
まだ続く。
勇者よ……
聞こえてるなら返事してちょうだい
え、あ、はい。聞こえます
あ、よかった。ちゃんと聞こえてるのね
はい
私は女神メーテルシュロープ……
女神……様……?
貴方にもう一度、力を授けましょう……
女神様が――私に向かって両手を伸ばした。
その両手に、何か、画用紙を持っている。
画用紙に書かれている文字を、女神様が読み上げる。
期間限定! 選べる女神サポート3コース!
1、復活サポート
※プレミアム会員限定特典。
2、コンティニュー
※最後にセーブした地点まで戻ります。
3、冒険を諦める
※死にます。
……
あの、これは
はい、選んでくださいね
えっと……状況が呑み込めないのですが
えー?
まず、今アナタの頭の中に話しかけてます。
私が女神様です。ここまでは良い?
はい
美しい女性が見えるでしょ?
脳内に直接、映像を投影してます。
それが私、この世界を見守る女神様です
……
幻覚だろうか。
私は死にかけている。
そのせいで、おかしな幻を見ているのかも知れない。
でも人生で最後に見る幻がこんな美女だったらゴミクズみたいな僕の人生でも終わり方は幸せだなあ、なんて勇者ユリウスは思うのだった。
あの、人の脳内を捏造して勝手に書くのやめてくれませんか
キミが幻覚とか言うからでしょ。違うわよ。本物の女神様。
その聖剣にも力をあげてるのよ。
だからあんなビームがばんばん撃てるわけ。
わかった?
はあ……それで、何の用でしょうか
何の用じゃないでしょ。
なんでいきなり死んでるのよ。
まだ何もしてないのに
すいません
まあ良いけど。
おかげで私も出番あるんだし。
お母さんから聞かなかった?
勇者の一族は神様と契約してるから、冒険中に死んだ時はサポートを受けられるのよ
サ……サポートですか
うん。だから選んでね。
オススメはやっぱり1かなあ。すぐ復活できるわよ。リスポーン地点はダンジョンの入り口だから詰まることもないしね。
2は無料サービスだけど、キミはセーブしてないから第一話からやり直しになるけど
第一話……?
3は最終手段ね。死ぬから。どうする?
えーっと……ちょっと待ってください
どんな敵も一撃で倒せる聖剣ですよね。
致命傷も癒す指輪があって。
しかも、死んでも復活できる。
……あの、これ本当に私じゃなくて誰でも魔王倒せるのでは
何言ってるの? キミじゃなきゃダメなのよ
ほ、本当ですか?
だって、勇者はキミなんだから。
魔王ってのはね、勇者が倒すものなの。これだけ手厚いサポートがあれば、勇者って冠が付いてれば誰でも魔王を倒せるわ。
……
どうしたの?
なんだか急に私の使命がバカバカしく思えて……
じゃあ、3番選んで死ぬ?
それも困りますが……
なら、1番しかないでしょ。ちなみにプレミアムコースは月額5000Gだからね
え!?
お金持ってる?
いや……50Gしか
まあ、最初の一ヶ月は無料サービスでいいわ。
ただし次からはダメよ。
キッチリ払ってもらうから
あの、払えなかったらどうすれば……
払えないんだったらキミの家族のところにも押しかけるからね
いや、あの、それは、困ります
心配しないで。キチンと払えば良いだけでしょ。おっけーね。はい、生き返らせまーす
……
…………
………………
眩しい……洞窟の外だ
本当に生き返ったのか、私は……
先輩、大手柄じゃないですか!
まあねえー。ラッキーよ、ホントに。
まさか勇者が自滅してくれるなんて思わなかったからねえ
アレは……マニエラさんとグリフォンだ。
そうか、彼女たちは無事だったのか。
とはいえ、喜んでいる場合でもない。
私と彼女たちは敵同士なのだから。
……
なんだかやる気が出ないけど。
勇者としての自覚を持って……
よし
私は何度か深呼吸した。
勇者ユリウスはここにいるぞ!
大声で叫ぶ。
マニエラさんとグリフォンがサッと振り向いた。
崩落した洞窟の上に私は立っている。
二人が驚愕の目で見てくる。
え、なんで! 巻き込まれたはずじゃあ!
さがってて、マニエラちゃん。
私がやるわ……
シャアアアアッ!
グリフォンが飛び上がった。
たとえ……たとえ私の進む道が……!
私は聖剣を抜いた。
眩しい光を刀身が放っている。
決意を新たにしろ。
覚悟を決めたはずだ。
迷っている暇など、私にはない!
私の進むこの道が、過剰に保護された平坦な道だろうとも!
どんなに退屈で、簡単で、拍子抜けする日々が待ち受けていたとしても!
魔王を倒すまで、私の意思は死なないッ!
聖剣から放たれた光が、グリフォンの体を貫いた。
ギヤアアアアアアアッ!
グリフォンは断末魔の叫びをあげ――
聖剣の光に包まれて消えた。
……
グリフォン先輩が……
私は聖剣の先端を、マニエラさんに向けた。
魔法使いマニエラ!
戦うというのなら、今度は容赦しないぞ。
命が惜しくなければ掛かって来い!
……
フフ
やればできるじゃない! それよ、それ! その言い回し、勇者っぽい!
あ、どうも
だが……
少しはできるようだな、勇者ユリウス!
この場は見逃してやろう……次に会う時が、貴様の最後だと思え!
マニエラさんは杖を振り上げた。
光があたりに溢れた。
クッ
光が収まると、マニエラさんの姿は消えていた。
たぶん、ワープとかではない。
足跡が森の奥に続いているから。
なんかがさがさ音も聞こえるし。
……追いかけてったら怒るんだろうなあ
こうして。
洞窟に住み着いたグリフォンを退治した。
私の冒険は続く。麓の村を離れ、城下町へ。
勇者ユリウスの冒険は、まだ始まったばかりだ。
……
…………
………………
5000G、どうやって稼ごう