エルフは人生の長い時間を思い思いに使う。
世の真理を掴もうと、探求を続ける者。
木を花を育て、たゆたう川の流れのように日々を過ごす者。
旅に出、様々な話を見聞きし、世界に伝え聞かせていく者。
エルフは人生の長い時間を思い思いに使う。
世の真理を掴もうと、探求を続ける者。
木を花を育て、たゆたう川の流れのように日々を過ごす者。
旅に出、様々な話を見聞きし、世界に伝え聞かせていく者。
話をしましょう
このエルフは、伝え聞かせていく者だった。
エルフの語りは、伝説そのもの。
他種族にとって、旅のエルフはしばしば大切な客人であった。
夜になれば松明やたき火を囲み、古今東西の話を聞く。
嘘もあるだろう。
本当もあるだろう。
ただ、それはエルフにしか分からない。
勇猛果敢な戦士の話に陶酔し、
悲恋の王女の話に涙する。
"エルフの話は、その場限り"
褒めてかけなしてか、そんな言葉も併せて語り継がれていた。
『二矢の鳥』
空を飛ぶ、仲の良い二匹の鳥がいました。
聡明な鳥たちは想像を絶する長い時を生きており、ある種族の言葉を理解し、その文明が進んでいくのを見つめていました。
植物を主食として暮らしていたその種族の生活は、ある時破綻を迎えます。
山の向こうからやってきた毒は、貴重な食べられる植物を駆逐してしまいました。
種族は動物を取りに向かいます。しかしうまくいきません。武器を知らないのです。
鳥は、自らの鋭いくちばしで動物を突いてみせました。
そして、植物のつるをくちばしではって見せ、それを使えば物が早く飛ぶのを教え、
種族は弓矢を覚えました。
動物を多く獲っていく内、種族の弓の名手が大きな羽を拾いました。
それを矢の後ろにつけると、弓矢の軌道が安定することに気づきます。
「この羽を持つ鳥はどこにいる、これがもっとあれば、もっと沢山立派な獲物をしとめてやろう」
名手の言葉に種族の皆が探し出しました。
そして、高い木に寄り添い合うようにとまっている、その羽をもつ聡明な鳥たちを見つけたのです。
名手は一つの矢でまず、一匹を。
ああ、聡明でなければ本能で逃げられたであろうに。
驚き、悲しみ、混乱してしまったもう一匹の鳥も、間をおかず矢が射抜きました。
……地面に折り重なった鳥たちを見た神様は
その賢く悲しい、仲の良い鳥たちを光で包み
一羽の大きな鳥にして新しい命を授けました。
もう聡明ではないように。他の種族や、動物を思いやらず、ただ自然の中で強く、勝ち抜いて生きれるように。
もと二羽であった鳥は、大きく鳴いて遥か遠い空へ飛び去っていきました……
……
二矢で射ぬかれた鳥は、一つになるべきなの
……で?
この焼き鳥一本買ったらもう一本おまけして
帰れ
今晩は焼き鳥が無性に食べたくなっただけのーー
そのエルフは名を黒井と名乗っていた。