〜楽しい純文学作品を見つけてみよう! Part1〜
〜楽しい純文学作品を見つけてみよう! Part1〜
今回は楽しい純文学作品を見つけてみようって……
なんか難しそうですね……
そうかね? 言うなればオススメを探してみる。それだけだよ
テキトーだな
そりゃ真面目に論じ始めたらキリがねえからな。今回はダブル村上以前の純文学作品を探すというね。
ダブル村上?
言ったろう。バブル前後に現れた二人の人気作家。村上春樹と……
ああ、フルポンの村上
ちゃう! どこのユーチューバーや! 村上龍だろ!
へぇー
へぇーって無関心だな……まあいいや。この村上龍以降はある程度……そりゃ消えた人もたくさんいるけど……本も出ているし現役作家も多いから、今回はあまり触れないことにする
テキトーですね?
てかね。その辺り、ガチで論じ始めたらキリがないし、そもそも僕はそのあたり興味ないというか。大体、今生きていて、人気ある人は新刊出しているから、芋づる式で一作読んで面白かったら、新たなものを発掘したり、新刊読んだりって……そういう形でいい思うけどね
はあ……即ち、いい作品だけど時代の波で埋もれてしまったというものを紹介するわけですか?
まあ、そうなるわな。まあ、現役作家で面白いのは多和田葉子、奥泉光、吉本ばななね。まあこの人たちは中間小説や大衆小説らしいところもあるから、何とも言えないんだけど……後は本道をいく南木佳士、津島佑子なんかね。南木佳士は決してペースは速くないが一つ一つが磨かれた水晶のように、人生の機微とペーソスと生死感を絡めた見事な小説が特徴であるよ
南木佳士さんね……
まあ、でも、いずれは紹介するにして、今回は先人たちの……ダブル村上以前の人々をあげてみよう。じゃ、フミよ。アレ持ってきてくれ
はーい!
ガラガラガラ…………
な、なんですか? こ、これは!
へーい。こいつは芥川賞全集と
小学館の日本文学全集、だよ!
は、はあ……しかし、重そうですね……
重いよ
なら、下ろせやwww
そ、それでその本がどうかなさったのでしょうか?
ふふふ……こいつは重いが読むのには最適な入門書なのだよ
へえ?
まず、第一にブックオフやら古本屋、アマゾンで流通をしているというのが大きい
それにアマゾンだと一部、一円扱いだよ!
そうなんだよなあ。安くて可哀想だけど……こんないい本をねえ……
それに第二はいい作品が多いことですよパイセン!
いい作品?
ああ。有名作家の有名作品が満遍なく出ている。だからおすすめなんだね。そして、芥川賞全集の方は……まあ有名だから持ってきたんだけど、これもまた貴重資料が多かったり、選評がユーモアたっぷりで面白いよ
そうですか……
よしっ。俺は決めたぞ
何を?
第一回に紹介する本
おっ!
正宗白鳥の『今年の秋』これにしよう!
へー。ダンディー、正宗白鳥から突っ込むのか。もっと有名どころからいくと思った。
ここはマイナーでもいい作品を紹介するんだ。太宰とか夏目漱石とか好きなら漫画ででも見てやがれえ!
まあまあ……それで面白い文学とは?
せやなあ。芥川賞全集から行くとしますか
了解です。フミ、本を取ってください
はーい
…………えーと、だな。初期の芥川賞で楽しいのは……そう。これこれ。芥川賞全集、第一巻にある鶴田知也の『コシャマイン記』
コシャマイン? 何やらコシャマインっていう響きはアイヌの人々のように感じられますが……
せやで。コシャマインってアイヌの長が和人に対抗して、最後は騙し討ちにあうまでを描く残酷譚だ
へえ……
まんま、ユーカラってアイヌの人々の朗詠を聞いているような叙情的な作品だ。美しい作品だし、短いから読みやすい
ああ、短いといいですね
そして、次に地中海。富澤有為男の作品だな
……聞いたことないですねえ
まあ、この人はな。この後、パッとしなかったから。この人の息子が有名な自衛隊の幹部だったはず
田母神……
違う! まあ、この小説は明るい風景画のような作品でな。地中海を舞台に繰り広がられる男たちの群像劇だ
へえ
まあ、少し臭い感じがあるが嫌味なところがなくてね。いい作品だ。でも、これらの作品の紹介は後々だろうなあ。主要な作家じゃないから
気になる人は買うなり、借りるなりしてね!
ステマすな! ……それでその間に無頼的な石川淳がいるけど観念小説だから楽しくない。で、第六回に尾崎一雄の『暢気眼鏡』という作品がある
なんかほのぼのした名前だね
本当にほのぼのしている。本当に。中身も戦前とは思えないほどほのぼのとしていて、私、という貧乏な作家が見た日々の風景を淡々として描いているんだ
元祖日常系的な?
まあ、せやな。どこから読んでも分かるってのが特徴。一気にもぶつ切りにもよめると。この作品も貧乏がモチーフなのに明るくて落語のようだね。あっけらかんとしていて
へえー
短編集だよね。九本並べられていて。まあ、せかせか読むよりゆったり読むGJ部みたいな小説やな
なるほど……
そして、次の回に受賞した火野葦平の『糞尿譚』。これは見た目通り、汚ねえんだけどドタバタで面白い
糞尿www
貴方様、はしたないですよ
だって仕方ないじゃん……
どういうネタ?
一言で言えば没落地主が汚穢屋をはじめようとするんだけど、業者やヤクザに騙されててんてこまいにされ、最後、大真面目にう◯こおし◯こを撒き散らす小説でwww
バシッ!
はしたないです!
な、なんで俺が叩かれなきゃいけないねん!
次に参りましょう
ガン無視か! ちなみにこの火野葦平と同じ会で直木賞受賞した井伏鱒二のジョン万次郎漂流記は強く勧める。大衆文学的だが、不思議な純文学の味がある。
次は〜?
次の中山義秀の『厚物咲』はよくまとまっているが、陰湿だしなあ。さらにその次の史上初女性受賞者の中里恒子の『乗合馬車』も時代遅れな感じはある
ふむ……やはり戦前だからですか?
まあ、それも理由の一つだな。で、その次、第十回の芥川賞に輝いた半田義之の『鶏騒動』。これはドタバタコメディで因業ババアとロシア人が不思議な縁で仲良くなるという純文学には珍しい明るさを持った作品だね
鶏……(ジュル……)
なんか不穏な音が……まあ、無視して……これは勧める。軽妙なドタバタコメディで因業ババアとロシア人が不思議な縁で仲良くなるという筋でね。純文学には珍しい明るさを持った作品だ。
なんか、鶏ってのがアメリカっぽい
ぽいぽいー
某これくしょんの真似はやめるんだ。まあ、これはユーモア小説的にすっと読めるだろうね。その次の寒川光太郎の『密猟者』は一種の冒険小説だけど……面白いが、やや重いな。好きな人には読めるが、女の子なんかはこの重さはなかなか……
その次は?
第十二回、桜田常久の『平賀源内』これは面白い。少しプロレタリアっぽいが気にならないでスラスラ読める。言うなればifの小説だね
if?
威風堂々……
あの……まあいいや。これは、稀代の才人とうたわれながらも錯乱して獄死した平賀源内がもし生き延びていたら、っていう小説なんだ
へえ! ラノベみたい
まあ、大きな事件が起こるわけでもないが、この発想の豊かさは買うね。面白いよ
これは期待ですね
次……
ふむ。次の受賞作、多田裕計の『長江デルタ』は時代遅れ……芝木好子の『青果の市』は面白いけど、やはりこの辺りから戦争の匂いが強くなるな
やはりそうですか…………
資料的には貴重だが。そのあとに受賞した、倉光俊夫の『連絡員』、石塚喜久三の『纏足の頃』、東野辺薫の『和紙』、八木義徳の『劉広福』、小尾十三『登攀』(とうはん)、清水基吉『雁立』まで……なんか戦争が絡むんだよなあ
時局上仕方ありませんかね
まあな。でも面白いのは、この作品の多くは軍部や当時の皇国的な輩でなくて、意外に虐げられてきた中国人や朝鮮人(纏足の頃、劉広福、登攀)などが同情的に描かれているのが面白いというか、視点として新鮮さがある
なんか良心的なものを感じますね……
まあ、一応戦前まで。毎日更新だから今日はこの辺で切り上げようかね
メタ発言www
次は戦後の芥川賞作品のおすすめ!