純文学を読むための理解
今回から本題です

ううう、胃が痛い

ダンディー、老けすぎだろ

お前らが! ストレス掛けさせるからだろう!

ピッー♪

露骨に目をそらすなや! 口笛吹かれてこちとら癪にさわるわ!

……で、今回は純文学を読むための理解と

やっとミカタらしくなりましたね

……なんか嫌味っぽく聞こえるわ

だって嫌味だし

少しはオブラートに包んでくれよ!

まあまあ。で、純文学を理解するにはどうすればよろしいのでしょうか?

あ、ああ。純文学を理解するためにはな。ある程度の知識が必要なんだわ

そりゃ歴史小説なんかもそうでしょ?

まあ、せやけど。前回までぐちぐちやっちまったから……今回は四つの主題を持って論じていきたいと思う

論じていきたいって……ロンドンブーツみてえなツラして

リョウ……アツシ……

お前ら! ゲホンゲホン……まあ、前回の文学史はもう語るのだるいから、だいたいわかったろ?

フミが石原慎太郎ディスってた記憶しかありません……

まあ……まあ……だいたいの流れがわかればいいから

ああいうの蛇足と言うのだと思うんだ。無駄な文学史

うっせ!

で、話戻すけど、その四つの主題って何?

……そうだなあ。分かりやすく言うと、純文学の種類を、ダンディー大先生が独断で四つに分類したのさ

大先生って……あんた、私たちの中の人より歳下じゃん

フミ、お前はどうしてすぐそうやってメタ発言をしたがるのだ?

てへぺろ

…………

それでな。まあ、四つに分類したわけだ。まあ、この分類は独断であるし、また不明確なところがあるから、のこれは注意してほしいね

貴方様、4つといわず、30個くらいに項目増やしたらどうですか?

そんなの誰が見るよ……

一層の事、85,624個くらいにわけたら?

あのなあ! 誰が見るのよ!

で、その四つ教えてくださいまし

①大衆的純文学
②思想的純文学
③歴史的純文学
④体験的純文学

この四つであるね

んんん? 大衆的?

大衆的とは……なんでしょうか?

せやな。まず、①から説明していこうか

お願いします

①は簡単だ。読みやすい純文学って事だね

は?

読みやすい純文学

……純文学って読みづらいもんじゃないの?

そりゃ大間違いだ。純文学ってのは本来は単なる小説だぞ。前回までの流れの中でいつの間にか純文学ができた、これだけだ。だから大衆小説と呼ばれるのにも難しい、理解不能のもあるし、純文学も逆があって然りだ

……例えばどういうの?

そうだなあ。さらりと読めるとか、また物語性が強いとか、そういうのになるなあ。有名どころをあげると井上靖なんかそうじゃないの? 後、田辺聖子もそうだし、今の連中ならば村上龍、奥泉光、円城塔、山田詠美とか……

どこまでがそうなるの?

やはり主観になるけどね。ストーリーとして起承転結が成り立っている上に、あらすじが説明ができて、というのがこの①の条件だろう

戦争や時代小説なんかもここに入る?

難しいなあ。それは、例えばその人が、戦争というメタファーを用いて、分かりやすいものを描こうとするならばこれに当てはまるだろうけど、戦争用語とか戦争経験を持っていて……というのならば、別でしょうね

プシュー

ああ! パイセンが壊れかけてる!

冷やせ! 冷やせ!

〜しばらくお待ちください〜

すみません……

まあ、難しいかもしれないが我慢してくれ

じゃあ、①は人次第ってところもあるってこと?

まあ、言い切って仕舞えばそうだな。僕がどんなに熱弁しても、これは違うってくるかもしれない。けど、それは感性の違いだからなあ。何回も言うが、僕のあげる本の区分は、あくまでも目安で独断だからね。鵜呑みしちゃダメよ

了解。でも面白そうな小説って面白そうだね

日本語プリーズ……

それでは②の思想的文学というのは?

タカネさん、あんた最近パンクしたんやから無理するなや……まあ、これは簡単だな。一言で言えば思想のある文学ってわけだ

例えばどんな?

せやなあ。有名どころは……プロレタリア……あとは何回も言うが第一次戦後派、第二次戦後派はこの傾向が強いな。

といいますと?

プロレタリアみたいな共産主義、社会主義的な理想郷を築くだとか、堀田善衛やら左派の……例えば良心が絶対的権力を前に挫折するさまとか……作品、まあ、大江健三郎みたいに民主主義の上での作品、海外を見渡せば、カフカとかサルトルの実存主義に基づく作品なんかもこれに当てはまるかも。最もあちらには純文学なんて概念はないか、あっても薄いと考えるけどね……

三島由紀夫の憂國とかそうだよね?

まあ、せやな

百田尚樹とか?

……あーいうのは美談の建設で思想的な文学でもない。理想と己の妄想を吐いてるだけ。あんなのが思想ならば唾棄すべきだわ。百田尚樹をはじめとした最近作家どもは甘い蜜を吸ってきて、戦争を知らねえくせにろくな作品書きやしない。凄みや悲しみ、怒りが存在しないで単なる滅私奉公、自己犠牲の美学だよアレは

ここでは載せませんか?

過去の話は載せるけどね。でも百田尚樹とかは絶対に載せない。価値観がまず合わないし、あれだけ流行ったならば俺が論ずる価値もないだろう……ま、純文学のミカタやから。思想のミカタではないよ

なるほど……

それで③は?

歴史的か。これは見てわかるだろう?

分からない!

早えよ! 即答するなや!

テヘペロ

あの

ラッスンゴレライ

ネタいれりゃいいってもんじゃねえぞ!

それで……

……コホンッ。それでだ。歴史的というのは簡単に言えば時代に即していたり、その当時の世相が反映されている文学の事を指す、というべきかね

世相……ですか?

ああ。例えば、阿川弘之『春の城』のように戦争を淡々と描いたり、他にも江戸時代の風俗や残酷な因習ーー有名どころは田宮虎彦とかーーなんか、時代的だろうね

はあ。一言で言えば、時代の流れに飲み込まれたり、その流れを描こうとするのが時代的、というわけですか?

まあ、そういうわけだが、ここには④も含めると、明確な線引きは難しいと思うなあ。曖昧になるから……

じゃあ、④は?

そりゃ簡単だ。言うなれば私小説。体験を赤裸々に描くという事だよ

変態文学の布団とか?

あのなあ! ……まあ、しかし、間違いではない。あれも赤裸々に書いてるいわけだからな。体験を。

でしょ?

それで、③と④の接点というのは?

ああ。それはな。体験と歴史っていうのは紙一重ってことなんだ。裏と表じゃないけれども、本当に紙一重で成り立っているということだな

…………?

少し難しかったかな。じゃあ、わかりやすく言おう。田宮虎彦の『霧の中』や森鴎外の『高瀬舟』や『阿部一族』などは体験的でなく、歴史的だ。なぜだかわかる?

……それは、田宮虎彦も森鴎外も江戸時代などの因習を特に経験していないのと、創造などで描いているからではないでしょうか?

当たり。鋭いな

やった!

まあ、大雑把に言うとそういうことだ。田宮虎彦や森鴎外は因習や残酷な歴史を書くが、それはあくまで空想であり、また資料に基づいたものである。と。

それに対して、体験的ってのは……

……そう。ここが問題なんだ

体験的ってのはな。歴史的にもなり得るわけなんだな

???

ふむ。そうだなあ。例えば……じゃあ、直木賞作品だから、資格があるかは知らないが、野坂昭如の『火垂るの墓』を例に取ろう

節子! それはあかん!

誰が節子やねん!

貴方様。どろっぷ食べたいです

あのなあ!

……それで、火垂るの墓はご存知の通り、清太と節子が空襲で親を喪い、さらに疎開先で邪険にされ続けた二人は洞穴で生活するようになる。しかし、節子は食糧難に耐え切れず、死んでしまい、清太も後を追うように餓死する……という筋だな

うるっ

……グスッ

泣くの早い! それでな。これは野坂昭如の自伝的要素が入った小説であるのは言うまでもない。野坂昭如は十五歳の折、神戸の大空襲で父親を喪って、妹を背負って逃げ、そして妹を餓死させている……まあ、ここらは『火垂るの墓』の折にでも、詳しく説明するが、この文学は野坂昭如の体験的作品でありながら、歴史的であるというわけだな

…………戦争と空襲などが歴史として刻まれていると?

ご名答。この作品は戦時中の動乱を赤裸々に描くことで体験的ではありながら、歴史的な一つの史料としてなり得るわけになっているんだな

はあ…………それで紙一重……と

ふむ。まだ例をあげればたくさんある。ハンセン病に苦しみながら作品を描き続けた北条民雄、原爆を経験した林京子や原民喜、抑留を経験した長谷川四郎、奇病に苦しんだ直井潔…………不思議なことにこの人たちの作品は体験的であるはずのに、歴史的にもなってしまうんだな

なるほど……

まあ、あくまでも主観だからね。ここの線引きは本当に難しい。こればかりはあくまでも一意見として、この話を円滑にするための説明だと思ってね

はーい。

じゃあ、ある程度、説明したから、次は楽しく読めそうな純文学作品を探ることにしようか

了解!

やっと本題に入れてうれしいです(拍手)

純文学のミカタ!! ~第七話。純文学を読むための理解~

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