私の名前は山田マヤ。在宅フリーランス業の24歳。

趣味は漫画を描くこと……と言っても本格的なものではない。素人レベルの作品を個人サイトや投稿サイトにアップしている程度だ。
もちろんプロデビュー志望でもない。プロになりたいならとっくに持ち込みやプロになるための勉強だってしている。
趣味は趣味のままが一番。だからマイペースに描いてはネットにアップを繰り返していた。

私の漫画は読者がほとんどいない、どマイナー作品だった。感想だって滅多に届かない。
ところがある日のこと。

「あれ?珍しいな。メールが届いてる」

そこにはこのような内容が綴られていた。

『山田マヤ様、はじめまして。突然のメール失礼いたします。山田様の作品読ませていただきました。とても面白いですね。
実は今度、弊社の新サービスとして漫画サイトをオープンしようと考えています。そこでプロアマ問わず漫画家さんを探しているのですが、弊社で連載してみませんか?』

「れ、連載!?」

よりによって全く読者がいない、その上絵だって素人レベルの私が連載など、嘘に決まっている。
いや、もしかすると新手の詐欺かもしれない。
私はメールの続きを読んだ。

『もし興味がございましたら、ご連絡ください。宜しくお願いいたします。株式会社●●~』

「うーん、会社名もしっかり書いてある。詐欺ではなさそうだけど……」

そこにはきちんと会社名も記載されていた。検索すると、その会社の情報も出てくる。
適当に作り上げた架空の会社でもなさそうだ。

「連載か……。そもそも私プロ志望じゃないし、連載なんて大変な仕事できそうにないけど……。でもちょっとやってみたい気もあるかな」

この時私はより収入を増やすために、在宅ワークの副業を探していたのだ。
漫画家なら在宅でもできる。
プロになりたいわけではなかったが、連載をすれば原稿料が頂けるだろう。
正直、収入に繋がるなら、と少し気持ちが揺らいでた。

「とりあえず返事してみよう。怪しかったら断ればいいし」

私は早速メールに返信した。

『ご連絡ありがとうございます。連載の件ですが、素人ながら興味があるため詳しくお話したく存じます。何卒宜しくお願いいたします。』

「と、これでいいかな。送信っと」

しかしこれが、私の身に起こるとんでもない体験の幕開けだったのである……。

01.弊社で連載してみませんか?

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