さて、今回の被害者...ていかターゲットは武器商人だ。一応有名な武器商人で、殺し屋たちからの信頼も厚い。だが、信頼している人間が一番裏切るのだ。武器に罠などを仕込まれ、同胞たちが何人も命を落とした。仇というのもあるが、何より任務だから犠牲になってもらわなくてはならない。
「さて、と」
あたりを見渡すと、情報通りの服装の人物がいた。その人物を見て私は目を丸くした。
「え....?」
背が低い。私よりは高いが、大人ではなく学生なのか?腕も足を肩幅も成人男性より細い。子供を殺すのは気が引けるな....
「でも...しょうがない、よね?」
覚悟を決めて任務実行だ。相手の情報が少ないため、何をしてくるかわからない。客として近づいて油断したところを仕留めよう。
「あ、あの、ここらへんに有名な武器商人がいると聞いてきたのですが...なにかご存知ではありませんか?」
武器商人はクルッとこちらに顔を向け、フードの中の顔が見える状態になった。
「その武器商人、たぶん僕ですね!」
「っ!?」
思わず私は声を上げてしまった。それもしょうがない。そのフードの中の顔が、今日転校してくると本部から情報が降りていた、高見 星夜だったのだ。
「...どうしました?」
どことなく狂気じみたその声が、自分の耳の奥まで響く。
「い、いえ、急用を思い出してしまって....びっくりしただけです。」
即座に頭をフル回転させて一番辻褄の合う言い訳を考える。
「なので、武器はまたあとででいいですか?」
自分の頬が赤く染まっていたのは、気づいていた。
「は、はぁ....まあ、いいですけど....」
はぁ。なんとかなったようだ。幸い、私の顔は見えていないはずだ。見えていたとしても万が一に備え、変装していたので大丈夫だろう。
さて、面倒なことになった。転校生が来ないとなれば、少々騒ぎが起こるだろう。普通に学校生活を満喫させ、自殺に見せかけて殺そう。それが一番わかりづらく、今考えるのかで最善の策だろう。
「では、失礼しますね。」
そうとなればはやく学校に行かなくては。遅刻はだめだ。
「チッ」
私のめんどくさいと思った舌打ちと一緒に、後ろの方からも舌打ちの音が聞こえてきたのは、気のせいであって欲しいと願っている。