水が美味しいと感じたのは何年ぶりだろうか。
 冒険に出発してからいくつか街や村を巡ったが、どの地域も汚染された川や湖ばかりだったから、普通に水がゴクゴク飲めることに少し感動している。
 どうやらここ『ヲータル』は安心安全な水が名物で、近隣諸国にも輸出して経済が回っているらしい。

「おーいレンダ! やべえよここの酒まじうめえ!」

 後ろから野太い声で俺に話しかけてくるのは、親友のイッパ。
 背が2メートルもあり、全身重量級装備でスキンヘッドに髭だからすぐに分かる。
 10歳の頃……つまり10年前だった。
 俺達はお互いに魔王討伐を誓い冒険に出たんだが、なかなか上手くいかないことも多くあってか、最近は行く街々で飲んだくれてるおじさんになってしまったらしい。

「さすがは水の街だぜ! 何本か買っていきたいんだが……いいか!?」
「なあイッパ、毎度念のために聞くけどいいか」
「どうした相棒」
「お前、魔王退治、忘れてねえよな」

 イッパの幸せそうな真っ赤に火照った顔は、段々薄青く冷めていった」
 まあ、これがいつもの会話・流れなのだが。
 




「おい、アレは何だ!?」

 近くを歩いている男性が空に向かって指差した。
 そして、その大声に釣られて周りの視線も空高くに注目した。
 
「レンダ、あれ見えてるか……?」

 空の中心が黒く染まり、辺りには黒く染まる雲が散乱している。
 まるでこの世の終わりを知らせるような、そんな禍々しい雰囲気を醸し出していた。

「レンダ、もしかして魔王様襲来か!?」
「馬鹿言うな、だったら事前に魔王の魔力をもっと早く勇者が気付いて、すぐに対処するはずだろ!」
「じゃああいつは何者なんだよ」

 イッパの指さす方角に、たしかにそれはいた。
 銀色の長い髪に、顔には不気味な仮面をつけて、全身も銀色の服に覆われていた。
 しかも服がキラキラしている、宴会か何かに使う衣装に見えるほどに。

「諸君、我の声が聞こえているか!?」

 宙に浮かぶ謎の存在は言葉を発した。
 おそらく性別は男。
 俺たちは黙ってしばらくその者の演説に耳を傾けることにした。

「我はこの世界を管理する者、つまり神である!!!」

 周りはざわついた。
 当然自分自身も困惑している。
 何、神?
 そんなものが本当にいるのか……?

「諸君の大半は信じていないようだね、でもね安心してほしい……




……この民衆の約半分の人間は、今に思い出すことだからね!」




――――ストレンジ・オーパレーション―――――




 自身を神と呼ぶ男が叫んだ瞬間、辺りを謎の光が包んだ。
 殺されるのか……このまま。
 俺は死を覚悟した。

「安心したまえ諸君、死ぬことはないよ、ひっひっひ、でもちょっと今後の生活に影響あるかもね」
「お前は何がしたいんだ!」

 視界を奪われる中、俺は神に無心で質問していた。

「ひっひっひ、そりゃ我も魔王が倒したいに決まっているじゃないか、そうすればこの世界には平和がもたらされるのだから」

 神はそう言うと、去り際に一言言い残した。

「でもね君たちが悪いんだよ? みんな期待外れなんだから、だから我が直々に教えにきてあげたのだよ」





 光も消え、空も元の青さに戻っていた。
 相当な印象だったからか、周りの人間はほとんど疲弊して膝から崩れ落ちてしまっている者が多かった。
 
「大丈夫か、イッパ!」

 俺はいち早くイッパの元に寄り添って、安否の確認をした。

「レンダくん……」
「大丈夫かイッパ、どこか痛むのか?」
「ううん、大丈夫なの……」

 勘違いならいいが、少しイッパの話し方が変わっている気がした。

「レンダくん、ありがと」
「お、おお……、どうしたその話し方」

 イッパをうつむいて何かを考えこんだ。
 やはりどこか痛むのだろうか。

「レンダくん、私……」
「わ、わたし……?」




 その後、親友から衝撃の事実聞くことになるか、それはまた次回。

まじかよ! お前女だったの!?

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