2月4日日曜日。
クマオが車を点検に出すため、ディーラーに行くと言っていた日。
当然私も行くと思っていた。
「りこは来なくていいよ。待ってるだけだし」。
クマオはちょっと困った様子でそう言った。「わかった。行かない」。
一つ一つのことが、前とは変わっていく。
ところが、当日お昼をまわった頃、「ディーラー行くよ。出れる?」
今から思えばこうだ。クマオは私と過ごさなければならない日曜に、車をディーラーに
持っていくという大義名分で、女といっしょにいくつもりだったのが、女との時間が合わず、結局私を誘ったのだ。
点検が済み、立ち寄った喫茶店。
「りこちゃん、パンケーキ食べなよ」。
クマオは久々に穏やかな表情で優しかった。
それまでの疑念や不安が薄らぎそうになったその時、クマオはこう言った。
「僕たち、男女の関係じゃなくなって長いけれど、それでも恋人同士と言えるのかな」。
心臓がゆっくり深くドキンとした。それまでこんな話をしたことがなかった。
このタイミングでこの話題。
私は言った。「他に好きな人ができたってこと?」
「いいや。そんなことはないよ。僕はりこにはずっと元気でいてほしい。」
孫がおばあちゃんに言うようなことを言うクマオ。
もう一度尋ねた。「もう終わりにしたいってこと?」
「違うよ」。その時確かにクマオはそう言った。二度も。