「実は、好きな人がいる。」

90年代のトレンディドラマで、最終回の逆転ハッピー結末への伏線としてよく聞く台詞を、まさか21世紀にオシャレなお店で聞くことになるとは…

とはいえ、婚約破棄をするには、とってもありがちな理由ですよね。
どこぞの若くてかわいい女が、私の彼の心を射止めたのか。私に何が足りなかったのか。

私よりも先に口を開いたのは、彼のお母さん。

「は?」

「〇〇(彼氏の名前)、二股していたの?」

私はこの時、思いのほか冷静でした。

勿論、結婚間近の彼女を振るくらいだから、

「好きな人」
=彼女より素敵だと思っていて、なおかつ既に付き合っている等極めて当選確率が高い状態の人

と考えるのが普通ですよね。

ただ、私の知っている彼は、そういう人ではなかったので、「好きな人」というのは、本当に今目の前にいる彼女よりも好きな人、なのだろう。
と、思っていました。

結果として、私の予想は当たっていました。

「前から自分の気持ちには気付いていたのに、世間体を考えてさぼとの結婚の準備を進めてしまっていた。母さんもさぼのことを気に入っていたから、俺のけじめとして、一緒に聞いてほしかった。ただ、二股はしていない。俺が彼女のことを好きなだけで、付き合える保証もない。本当にごめんなさい。」

というようなことを言っていたと思います。

これを信じる女はバカだと思うでしょう。

ただ、お母様も、私も、彼の言葉を信じました。

信じた、というより、信じざるを得ないほど、納得する答え合わせがこの後待ち受けていたからです…

28歳でくらった破断案件③

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