彼を受け入れようと思った矢先、ヒナタくんは時間を確認する。
「やばっ……時間過ぎてる!」
予約時間の120分があっという間に過ぎてしまった。もう帰りの支度をしなければいけない。
「一応、延長もできるけど……?」
「ごめん、この後は用事があるんだ」
この後は好きなアニメのコラボカフェの予約を入れていたのだった。
「そっか……」と、ヒナタくんは残念そうな顔をする。
あの押し問答がなければ最後までできたかもしれないのにーー。
誘われて拒否をしたくせに途中でやめられて、私はもどかしくなってしまった。
「夜なら空いてるよ。また予約入れてもいい?」
「え、本当に? 夜も会ってくれるの? 嬉しい!」
ヒナタくんは笑顔になって、お店に予約の連絡を入れる。
急いで着替えを済ませて一緒にホテルを出た。
「じゃあ、またあとでね。ゆうちゃん」
追加予約を入れたのは間違いなく下心があってのことだ。
自分が働いていた時は本番を迫られると嫌で仕方なかったくせにいざ自分がお客側になるとそれを期待してしまうなんて、複雑な気持ちだった。
(でも、あっちから誘ってきたし……私は最初は拒否してたもんね)
コラボカフェの間もヒナタくんのことばかりがチラついて仕方なかった。
予約時間に合わせて私はホテルに入ると、ヒナタくんが部屋にやってくる。
「ゆうちゃん、本当にありがとう! また会えてめちゃくちゃ嬉しい」
ヒナタくんは昼間に会ったときよりも人懐っこい笑顔を見せてくれるようになった。
一緒にシャワーを浴びている間も笑顔が耐えない。
ふと、私はまたデリヘル時代のことを思い出す。
そこまで人気がなかった私にも一応、リピーターはいた。
昼にも予約を入れて夜にもおかわりで予約をされた時は店長にもすごく褒められたし、私も嬉しかった。
ヒナタくんは新人ランキングでは一位ではあるものの、お店全体では10位くらいの順位だった。
お店のレベルが高いこともあるが、そこまで売れているわけではないと思う。
だからこそ、こんなにもすぐに本指名が返せたことは彼にとって嬉しいことのはずだ。
あの時の自分とヒナタくんが重なってみえて、なんだか愛しく思えた。
ベッドに移動してから全身を愛撫されると、ヒナタくんに心を許しているせいか昼間の時よりも感じていた。
「ゆうちゃん、昼間の続きしていい?」
「うん……いいよ」