思い出した…あの日ー私が天使になると決まった日ー私は“悔しい”と思った。
数百年前、四度目の死を迎えて私はこの列車に乗った。本当は五度目の人生を生きようと思ってた…でもやめた。
最後の人生は神への生贄として死んだ。私は緑と青の混じった綺麗な瞳を持っていて、ひどく媚を売られながら生きていた。
ある日のこと、プレゼントとしてもらった珍しい植物に水をあげていた時だった。両親がすごく小さな声で話していて少し気になり耳を傾けてしまった。
両親は私たち姉妹、つまり私だけじゃなくて妹まで生贄にしようとしていた。
妹もまた美しい瞳と髪を持っていた。活発で何にでも興味を示す子だった。自分が媚を売られていることによって生贄になると悟り、生きる気力をなくした私に見たことないものや景色を見せてくれて、私にとってかけがえのない存在だった。
「お姉ちゃん」
「ん?どうした」
「私ね、大きくなったら見てみたいものがあるの」
妹はオーロラが見たいと言っていた。寒い地域の夜、空を見上げると緑や赤や白などの光が見えると旅人から聞いたのだと彼女は言っていた。
「じゃあ…お姉ちゃんが見せてあげよう」
「ほんと!?嬉しいなぁ…お姉ちゃんの瞳とどっちが綺麗かな…」なんてそんな話を幼い頃にしたのを思い出した。今までの恩返しと言ってはなんだが、絶対に見せてやりたかった。
……絶対に生贄なんかにさせるものか、と誓った。
そのためには私が18になるまでに村の外へ行かなければいけない。でも生贄である私たちが村を出るなど、許されぬ行為…だから私は作戦を立てた。
まず、齢17になった私は見違えるように穏やかに振る舞うようにした。生贄になることに何も抵抗のない穏やかな子を演じ続けた。プレゼントや村人の会話に笑顔で、実に穏やかな姿勢で対応した。そして、誕生日の4ヶ月前から定期的に近くの森へ出掛けるようにした。もちろん最初のうちは両親も村人も必死に止めてきたが何回も行って帰るを繰り返すと何も言われなくなった。
弁当を持って森へ行っていたから、周りはピクニックにでも行っているのだろうと思っていたようだが、実際は村から出るルートを確保するために一日中森を練り歩いて細い道を作っていた。
そしていよいよ誕生日の3日前…ついに作戦を決行する時が来たー
(中編へ続く)