図書館の掃除をしていた時だ。
黒い無地の本でどこにもタイトルはおろか、著者さえ書かれていない本を見つけた。
中身を開いても全て白紙のページだった。
「先生、この黒い本に何も書かれてないんですけど」
先生に黒い本を渡すと先生はこの本について話し始めた。
「この本はその人の人生の本なんだよ」
「人生の本?」
「そう、人生の本。この本に自分の血を垂らすとこれまで自分に起きた出来事が記載されるんだ。」
「先生、その本使ってみても良いですか?」
先生は多少ニヤけ顔で僕に黒い本とどこから持ってきたか分からない小型ナイフを渡した。
「良いよ、使ってみなさい」
小型ナイフで自分の指を切り、血を数滴垂らすと、赤い文字でこれまでの自分の出来事が浮き出てきた。
数ページめくると『黒い本を開く』で終わっていた。
そこから先はさっきと同様、白紙のページで終わっていた。
「君は何ページだったかい?」
先生はそう尋ねてきた。
僕はページを数えると7ページだった。
「7ページでした」
「そうか……」
先生はどこか悲しい声でそう言った。
先生は僕から本を取り上げると絆創膏を取り出した。
「指の怪我はこれでも貼っておきなさい」
そして先生はいつもの定位置に戻った。