姉の、職場の先輩だという、山中という男性は、徹よりも大柄な男だった。
その男性の、徹よりも大きな手に乗せられた姉の小さな手を脳裏に浮かべながら、徹は自室のベッドに突っ伏した。
今日、一緒に食事をしただけだが、あの山中という奴は、良い奴だと判断できる。生意気な感情のまま、徹は小さく首を横に振った。結婚は、徹が大学を卒業するか父が日本に腰を据える気になった頃まで待つと、姉も、山中という男性も言っていた。その気遣いすら、徹を苛立たせるには十分だった。
だが。姉は、姉。いつかは、……別れなければならない。
気怠げに、携帯端末を手に取る。この間の合コン以来、千夏という名の細い手をした女子と、小さくメッセージのやりとりをしている。カクテルを好む千夏が行きたがっていた、入るのに躊躇するバーという店に、溜めっぱなしのバイト代を使って誘ってみようか。そう思いながら携帯端末を操る徹の手に重なった、姉の小さな手の幻覚に、徹は携帯端末を放り投げた。