落ち葉の季節になると、私も青田と庭の掃除を手伝う。



だだっ広い庭の落ち葉を箒でかき集めるのは大変だ。



「お嬢、僕は裏門辺りから始めるから、お嬢は正門辺りをお願いしていいかな?」



「はーい」



何故、私が大人しく庭の掃除を手伝っているかって?



ふふ。



もちろん、この後焚き火で焼き芋を作るからですよ。

青田の畑で採れたサツマイモはハチミツが入っているかのごとく、とても甘くて柔らかくてホクホクなのです。



うー。

早く食べたいなー。





「あら。

 あなたはここのお手伝いさん?

 『すずね』はこの屋敷にいるんでしょう?

 今すぐ『すずね』をここに呼んできてちょうだい」



いつの間にか門の前に日傘をさしたご婦人が立っていた。

派手なワンピースに真っ赤な口紅とハイヒール。

サングラスを掛けて、ガムをクチャクチャと噛んでいる。





『つくね?』





はて?



今日の晩ご飯は『つくね』だったっけ?





「すみません。

 つくねがあるかどうか、家主に確認してまいります」





私は急いで黒川のいるキッチンへ向かった。


「黒川、今日の晩ご飯は『つくね』でしたっけ?」





「お前、嗅覚だけは一人前だな。

 だが惜しい。

 今日のメニューは『おろしハンバーグ』だ」





「わーい。

 ハンバーグだ!

 黒川、私は庭掃除で体力を著しく消耗しているのです。

 ハンバーグの大きさを、普段の1.5倍に……。

 ……あ、いけない。

 今日は『つくね』ではなく『おろしハンバーグ』だと、あのご婦人に伝えて来なくては」



「何だ?

 相変わらず忙しい奴だな」





正門に戻ると、ご婦人は少しイライラした素振りで待っていた。



「あのー。

 今日『つくね』は、やっていないんですよ。

 家主にリクエストしておきますから、また別の機会に……」



「はあ?

 アナタ何言っているの?

 早く『すずね』を出してちょうだい」



「お嬢、門の辺りの掃除は終わった?」



ご婦人が語気を強めたその時、青田がやって来た。


「あら。

 アナタもここの屋敷の方かしら?

 この屋敷に『すずね』がいるはずなのだけど、会わせてくれないかしら?」



「この屋敷に『すずね』という者はいませんよ。

 どうぞお引き取りください」



青田がいつになく険しい声で言った。



「まあ。

 アナタも話が通じないのかしら?

 いいわ。また来るから」



そう言うと、ご婦人はフンと鼻を鳴らして帰っていった。

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